2011年1月18日火曜日

イベント紹介:「当たり前に生きたい、ムラでも、マチでも─TPPに反対する人々の運動」 2.26「TPPでは生きられない!座談会」のお知らせ

 

 イベント案内転載します。

「当たり前に生きたい、ムラでも、マチでも─TPPに反対する人々の運動」
   2.26「TPPでは生きられない!座談会」のお知らせ

  TPP(環太平洋経済連携協定)というのをご存知ですか。まだ正体のよくわか
らないこの妖怪がわたしたちに襲いかかろうとしています。
  もともとは2006年に発効したニュージーランド、チリなど4カ国の小さなFTA
(自由貿易協定)だったものが、新たにアメリカ、オーストラリアなど数カ国が
参加を表明したため「バスに乗り遅れるな」とばかり菅首相が飛びつき、財界や
大手マスコミが政府の尻を叩き、その賛否を巡っていまや大論争となっています。

 それぞれの家庭にそれぞれの事情や都合があるように国や地域にとってもそれ
は同じです。相手の立場に配慮して協議をすすめるのが貿易交渉ですが、TPP
は例外なき自由化を強引に進めようとするものです。菅首相はこれに参加するこ
とを、明治維新、敗戦に次ぐ「第三の開国」と述べました。

 これが実行されたら、コメをはじめとして畑作物、乳製品から沖縄のサトウキビ
までほとんどが輸入物に置き換わり、食料自給率は14%まで低下すると農水省は
試算しています。これは地域の崩壊を意味し、人が暮らし続けることができるバ
ランスのとれた社会としての「日本」の終わりを意味します。

 マスコミの一部は「牛丼が200円になる」とはしゃいでいますが、労働力も自由
化され、際限のない賃金水準まで下がりつづけ、安い牛丼すら食えなくなること
を覚悟しておくべきでしょう。ワーキングプア、非正規社員はふえつづけ、農村
からの離村者なども含め、都市に失業者があふれることにもなりかねません。

 いったい、誰のための自由化でしょうか。私たち農民はもとより、多くの人たち
にとって、なんのメリットもありません。どうか、みなさん。この愚挙、この暴
挙を阻止するために、私たちと共に立ち上がってください。
 2月26日に全国の百姓が東京に集まり声を挙げます。多くのみなさんの参加を呼
びかけます。

【日 時】 2011年2月26日(土)13時~17時
 
【会 場】 東京都千代田区神田駿河台「明治大学リバティータワー2階1021教室」
最寄り駅:JR中央線・総武線、東京メトロ丸ノ内線「御茶ノ水駅」下車徒歩3分
  (地図)http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html
  
【参加費】 500円(予定)

【内 容】
参加者が3分間スピーチで語る。農民だけでなく、TPPやグローバリゼーション
の影響を受ける人たちにも参加してもらい、様々な視点から発言してもらう。また、
グローバリゼーションとたたかう韓国農民をゲストとして招く。

座談会の後、街頭行動を行う。18時~19時(キャンドルデモなどを予定)

【問合せ先】 事務局の市村まで(フォーラム平和・人権・環境 事務局内)
Tel:03(5289)8222   Fax:03(5289)8223
メール:ichimura@gensuikin.org

詳しくはこちらのサイトを http://www.geocities.jp/yaoyahyakusho/muramachi/home.html

2011年1月13日木曜日

カンボジアにおける農民排除

farmlandgrab.orgのサイトに紹介されている記事から、いくつかを紹介します。またカンボジアに関する日本語での記事も4),5)で紹介しています。 

青西

1)カンボジアは売りに出されているのか?
  Has Cambodia become a country for sale?  BBC (2011/1/13)
  http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-pacific-12152759
「タイの投資家がサトウキビ・プランテーションを開発したときに、私たちは補償もないままに土地から追われたのです。」
 カンボジアの新しい土地コンセッションは、その立地を生かして経済開発をもくろむものであり、2005年以降、すでに国土の15%が民間企業の手に渡った。その3分の1は外国企業であり、リースに際して、企業は農地の開発と雇用創出を約束している。

 しかし不公正で暴力的な農地収奪が進んでいる。家を銃撃して追い出すこともある。軍がプランテーション主のために排除に関与することもある。
 妊娠中であったホ・マイさんは関係当局に抗議をしたものの、逮捕され、刑務所で出産。当局は、ホさんが違法に耕作をしていたのだと告発。ホさんは農地は自分のものだと主張するが、法的な文書は有していない。
 これはカンボジアではごく普通のことであり、ポルポト政権下で私的土地所有は禁止され、土地証書は焼かれてしまい、さらに多くの人が内戦で逃げざるをえなかったのである。

 政府は、貧しい農民に対する土地証書の発行プログラムを進めているという。それは土地土地引きをより確かなものにすることができるからである。そして政府は2百万近くの土地証書を発行したという。
 
 しかし不正もはびこっている。地方の役人のところに行き、賄賂を払えばいいだけだという。また土地排除のために警察や軍を動かすこともあるという。
「無理矢理追い出されるのと法律によって追い出されるのとどちらを取るか、選ばせるだけなのだ」

2)韓国企業による土地囲い込みに抵抗(2011/1/07)
  Land clearance by Korean firm blocked
http://www.phnompenhpost.com/index.php/2011010745949/National-news/land-clearance-by-korean-firm-blocked.html
 村人が育ててきたカシューナッツ園を伐採し、土地を囲い込もうとする韓国のゴム企業に対して、800人の村人が抵抗。抵抗運動は平和的に行われているという。
「私たちのカシューナッツが切り倒されたら、どうやって生きていけるのか」
 韓国系のBNA社は2009年9月にカンボジア政府から70年間にわたる7500haの土地コンセッションを受け、ゴムとキャッサバ生産を計画している。
 会社側は「土地は政府から受け取ったものであり、如何なる補償を提供するつもりもない」という。
 農民は「企業が7500haの土地を握り込んだら、私たちはどこで生活し、どこを耕していけばいいのだ」と抗議の声を上げている。

3)農地収奪に抵抗するコミュニティ
Cambodia: Communities fight back against land grabbing(201009/13)IRIN
 http://www.irinnews.org/report.aspx?ReportId=90453

以下 日本語記事です。リンクのみ紹介

4)【ルポ・カンボジア】ゴムに追われる農民(2010/10/20)   大野和興

  http://www.the-journal.jp/contents/ono/2010/11/post_13.html

5)カンボジアで進む外国企業のプランテーション化(2009/11/10)

日本国際ボランティアセンター(JVC)のカンボジア事務所代表としてカンボジアの農村で活動する山崎勝さんに聞いた。(聞き手:大野和興)

 http://opinion.infoseek.co.jp/article/642

2011年1月12日水曜日

海外農業投資指針の運用について

農林水産省と外務省への質問状

2010年11月24日に下記の文面の質問状を外務大臣、農林水産大臣および外務省、農林水産省の担当部局に送付した。
その後12月27日に外務省の担当者より、電話にて外務省からの回答を聞くことができたが、農林水産省からは返答はない。
外務省としては、海外の農業投資を重要と考え 情報収集を進め、行動原則と整合性を確認していくとのことであった。
しかし情報を収集するのは、これからであり、海外での農業投資に先立って情報を収集し、整合性を確認するというのとは大きく異なっている。
つまり、行動原則との整合性の確認は適切には行い得ていないと理解できる。

また1)の事例においては、食料生産のための農業投資ではないということで、行動原則との整合性を確認する対象ではないという見解であった。つまり、食料生産や地域住民の自給基盤に大きな影響を与えることが想定されるバイオ燃料生産等の投資に関しては、抜け落ちていくということになる。

更に3)の事例における現地新聞で報道されたケースに関しては、新聞報道以上の情報を有しているということはないようであり、投資に先んじて情報を得る仕組みは存在していないと理解できるであろう。

また2)の事例においても、1月12日までの時点において、外務省、農林水産省ともWEB上で公開している情報は存在せず、透明性の確保、情報公開について全く不十分であろう。

このように海外投資指針を策定しても、海外農業投資を適切に監視していくことが非常に困難であることは明白であり、また市民社会が適切に情報にアクセスすることもできない。このような状況の中で、適切な海外農業投資が実施できるという保証は存在していない。

市民社会による適切な情報収集とそれに基づく企業、行政への働きかけが不可欠であろう。

青西

以下質問状


                               2010年11月24日
外務大臣    前原誠司殿
農林水産大臣  鹿野道彦殿

外務省   経済安全保障課
農林水産省 食料安全保障課
農林水産省 国際協力課

                                    質問書

 日本国政府は2009年(平成21年)8月20日に外務省及び農林水産省の共催によって第5回「食料安全保障のための海外投資促進に関する会議」を開催し、「食料安全保障のための海外投資促進に関する指針」を取りまとめました。

 この中で、日本国の海外農業投資においては、「被投資国における農業の持続的可能性を確保」することが重要であることを認め、政府及び関係機関は、「本指針に基づいて海外農業投資の促進策を講ずるに当たり、以下の行動原則との整合性を確認する」ことを定めております。
 つきましては、この「指針」に関連して、次の事例において、行動原則の①~⑥に沿って、日本政府がどのような情報を収集され、どのように整合性を確認されたのか、また収集された情報及びその検討結果についてどのように開示されているのかを公表いただきたく、お願い申し上げます。

事例1)フィリピンにおけるバイオエタノール製造・発電事業について
「伊藤忠商事株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:岡藤正広、以下「伊藤忠商事」)および日揮株式会社(横浜本社:横浜市西区、代表取締役会長兼 CEO:竹内敬介、以下「日揮」)は、フィリピン事業パートナーと共同で、フィリピン最大級のバイオエタノール製造、および電力供給事業に参画いたします。事業の概要は以下の通りです。」
(以上下記サイトより転載)
  http://www.itochu.co.jp/ja/news/2010/100408.html

事例2)双日、アルゼンチンで大豆など農業事業を開始
~農業経営ノウハウを蓄積し、ブラジルなどへ拡大。食料資源の安定供給に貢献~
双日株式会社は、南米アルゼンチンにおいて大豆などの農業生産を行う事業会社 双日ブエナスティエラス・デル・スール社(Sojitz Buenas Tierras del Sur S.A.、以下BT社)を双日グループの100%出資で設立し、アルゼンチンの大手農業事業運営会社であるカセナベ社(Cazenave y Asociados S.A.、本社:ブエノスアイレス市)と協力し、2010年穀物年度から大豆等の穀物の生産・販売する農業事業を開始します。日本の 大手商社が海外で直接事業法人を設立し、農業事業を行うことは今回が初めてです。
(下記サイトより転載)
http://www.sojitz.com/jp/news/releases/20101117.html

事例3)2010年11月9日付けで掲載されたフィリピンにおける投資計画
Japan firms eye farm investments(Bussines World 2010/11/9)
A NUMBER of Japanese firms plan to invest in a plantation in the Philippines, with the produce to be exported to Japan, the chief of the Agriculture department said yesterday.
"Some Japanese firms are interested in investing in a crop that will be used for their consumption," Agriculture Secretary Proceso J. Alcala told reporters.
Mr. Alcala said the department is currently in advanced talks with the interested Japanese firms.
He declined to name the firms nor the crop and investment involved, saying only that the companies do not want any genetically modified variety of the crop.
http://www.bworld.com.ph/main/content.php?id=20928


  日本国政府はこの「指針」以外にも、世界銀行などとともに「責任ある農業投資のための行動原則」の策定にも取り組んでいます。この中でも「指針」と同様に、土地と資源に対する権利の尊重、食料安全保障、透明性の確保や、協議と参加、社会的持続性、環境持続性などが取り上げられています。
 このような「指針」や「行動原則」が実効性を持つためには、企業に対してだけではなく、市民社会に幅広く情報が共有されることが不可欠だと考えます。

 つきましては、上記の3つの事例に関して、「指針」の適用及び「行動原則」の試験的・自発的適用の例として、積極的な情報開示をお願いするものであります。


青西靖夫  (開発と権利のための行動センター 代表)
松平尚也 (AMネット 代表理事)



食料安全保障のための海外投資促進に関する指針 より一部抜粋
http://www.mofa.go.jp/ICSFiles/afieldfile/2009/08/20/G0858_J.pdf

4 我が国の行動原則及びこれに関する国際的取組等
(1)行動原則
海外農業投資は、被投資国における農業の持続可能性を確保しつつ、投資側・被投資側の双方が裨益する形で実施することが重要である。この観点から、政府及び関係機関は、本指針に基づいて海外農業投資の促進策を講ずるに当たり、以下の行動原則との整合性を確認する。同時に、被投資国側にも投資環境の整備(収用の原則禁止や輸出規制の抑制等)や投資関連情報の提供などを求めていく。
① 被投資国の農業の持続可能性の確保
(例:投資側は、被投資国において、持続可能な農業生産を行う。)
② 透明性の確保
(例:投資側は、投資内容について、契約締結時等において、プレスリリース等により、開示する。)
③ 被投資国における法令の遵守
(例:投資側は、土地取引、契約等被投資国における投資活動において、被投資国の法令を遵守する。)
④ 被投資国の農業者や地域住民への適正な配慮
(例:(イ)投資側は、投資対象の農地の農民及び所有者に対し、その農地の取得及びリースに関し、適切な対価を提供する。(ロ)投資側は、現地における雇用について、適切な労働条件の下、農民等従業員の雇用を行う。)
⑤ 被投資国の環境への適切な配慮
(例:投資側は、投資に当たって、土壌荒廃、水源の枯渇等、被投資国の環境に著しい悪影響を与えてはならない。)
⑥ 被投資国における食料事情への配慮
(例:(イ)投資側は、被投資国における食料事情に悪影響を与えないように配慮する。(ロ)投資側は、被投資国の主食作物を栽培している農地を他の作物に転換することにより主食作物の生産量を著しく減少させるような投資は行ってはならない。)

マリ:投資家によって追われる農民たち

アフリカで進む農地収奪についてアフリカ日本協議会の斉藤さん提供の情報です。

African Farmers Displaced as Investors Move In(2010/12/21)
http://www.nytimes.com/2010/12/22/world/africa/22mali.html?_r=1&scp=1&sq=African%20Farmers%20Displaced&st=cse








(Wikepediaより) 

「日々かろうじて生計をたて、やせた土地を何世代にもわたって耕し続けてきた農民は、自分たちの土地がリビアのカダフィ大佐の土地になり、自分たちが土地から出て行かなくてはならないという驚くべきニュースを聞かされた。」
このニュースは、アフリカを始め、開発途上国で進む、地球的な規模のランド・ラッシュ、農地争奪の一つの例を紹介したものである。アフリカ諸国では政府が土地の所有権を有しているケースが多く、その土地を(耕作し、何世代にもわたって生活してきた人々がいるにも関わらず)その土地を外国政府や投資家に貸し付けてしまうという問題が起きている。
国連や世界銀行は土地取引と生産が公正に行われれば、増加する世界人口を養うことに寄与するというが、一方、新しい植民地主義であり、農村を破壊し、膨大な土地なし農民が発生するという懸念もある。
(この辺の議論は世界銀行の報告書やGRAIN、食料の権利に関する国連特別報告者などによるものであり、別途記事を紹介する)

この記事によると
マリに対しては、中国、南アフリカがサトウキビ、リビヤとサウジ・アラビアが米、またカナダ、ベルギー、フランス、韓国、インド、オランダなどが投資を進めているか、あるいは関心を持っているという。
マリでは約60万エーカー(24万ヘクタール)を対象にした60の契約が結ばれているというが、実際には60万ヘクタールにのぼるという説もあるという。記事ではこの大半は国内投資家による国内市場向けの食料生産だというが、リビアに対する10万ヘクタールのリースのようなケースも存在している。しかしこの契約ではリビアはその土地を開発するという条件で、50年間にわたり土地を無償で利用できるという。
このリビヤとのプロジェクトでは2万人が影響を受けるといい、既に抗議行動も起き、軍によって逮捕されたものもいるという。しかし農民は土地を守るために死ぬ覚悟だという。
「人々は権利を守るために立ち上がらなければ、すべて失ってしまう」

マリの国連開発計画事務所で働くエコノミストは、農業社会であるマリにおいて、農民から土地を奪ったら、他に生活を支える手段はなく、首都に職を持たず、土地から流れてきた住民がふくれあがり、政治的な問題となることは明らかだと分析しているという。

「私たちの家を破壊し、土地を取り上げる前に、私たちが生活し、耕していける新しい土地を示してみろ」という抗議の声がある。
(記事の整理、部分訳は開発と権利のための行動センター 青西)

関連スライドショーはこちら
http://www.nytimes.com/slideshow/2010/12/21/world/africa/20101221_MALI.html

その他関連情報
マリ 外国資本の農地開発で小農民が水飢饉? 食料不安が煽る持続不能な食料増産(農業情報研究所 09/3/17)
 http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/agrifood/overseainvest/09041701.htm

記事紹介:豆から見える世界

当ブログの立ち上げメンバーの一人でもある松平尚也さんの記事を紹介します。

日本の豆、豆腐の自給率は?
和菓子の豆はどこから来るのか?
豆はどういう形で胃袋に入っているのか?
なぜ大豆油消費が増えたのか?

https://docs.google.com/viewer?a=v&pid=explorer&chrome=true&srcid=0B52cEjg1HlzCZWYxZDViMDAtOTNhNS00NDVjLTg2ZDItNjZhZDczNmIxZWIw&hl=en

2010年12月30日木曜日

2010 日本の海外農業投資

把握できている情報を掲載します。
1) 双日株式会社 
   双日、アルゼンチンで大豆など農業事業を開始(2010/11/17)
~農業経営ノウハウを蓄積し、ブラジルなどへ拡大。食料資源の安定供給に貢献~
http://www.sojitz.com/jp/news/releases/20101117.html

アルゼンチン共和国/農業事業会社設立に対する海外投資保険について
http://www.nexi.go.jp/topics-p/index_frame_direct6.html

2) 豊田通商
南米に強みを持つ穀物メジャーと包括提携を締結(2010/11/19)
~ 食料資源確保のため供給ソースの多角化へ ~
http://www.toyota-tsusho.com/press/2010/11/20101119-3580.html

3)伊藤忠商事(2010/04/08)
フィリピンにおけるバイオエタノール製造・発電事業について
http://www.itochu.co.jp/ja/news/2010/100408.html

2010年10月13日水曜日

なぜ我々は「責任ある農業投資原則」に反対するか

なぜ我々は「責任ある農業投資原則」に反対するか

                                  農地改革のための世界キャンペーン
                                  土地調査アクション・ネットワーク
FIAN International 、Focus on the Global South 、La Via Campesina、Social Network for Justice and Human Rights (REDE SOCIAL)

Why We Oppose the Principles for Responsible Agricultural Investment (RAI)
http://viacampesina.org/en/index.php?option=com_content&view=article&id=953:why-we-oppose-the-principles-for-responsible-agricultural-investment-rai-&catid=23:agrarian-reform&Itemid=36
http://www.fian.org/resources/documents/others/why-we-oppose-the-principles-for-responsible-agricultural-investment/pdf


 近年、新しい開発が生まれつつある、それは"地球規模での農地争奪”として知られている。この新しい開発に伴い、農地に対する大規模な投資が人権や社会的つながり、持続的な食料供給、世帯における食料確保、そして環境に対して悪影響を引き起こすことが明らかになりつつある。こうした投資の悪影響を緩和するためと言って、世界銀行と国際食糧政策研究所を筆頭として、様々な国際的な機関や諸政府は、こうした投資に対するガイドライン、行動規範、あるいは原則を提起している。2010年1月以来進められている世界銀行や国際農業開発基金(IFAD)、UNCTAD、FAOなどによる「人権と生計、資源の尊重のための責任ある農業投資原則(RAI)」は、こうした試みの最も進んだものとなっている。
 La Via Campesina, FIAN International, the Land Research and Action Network, GRAIN などによる2010年4月の共同声明文において、我々は強くRAIを拒否する姿勢を示した。なぜなら農民の土地を長期にわたって企業が簒奪を正当化しようとするものであり、これを認めることは断じてできない。

 このペーパーでは、拒否の姿勢について説明を行っていく。この7つの原則は合理的そしてまた説得力があるように見えるかもしれない。しかしそうではない。特にこれらの原則は人権侵害や国際法に反する政策に対する規制としては全く不十分である。原則は特定の政策を進めていくものだと思われるかもしれないが、そうでもない。

 諸国家は国際法を履行する責任がある。特に国連の社会権規約委員会の一般的意見書12に示されている、「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」の11条、またFAOの「食料への権利のガイドライン」を履行する責任がある。そこでは人々の土地へのアクセスを保証するために農地改革を実施すること、人々が尊厳を持って生活し食料を得ることができるように、生産のために適切な手段をとることを求めている。また農村の未来の世代が必要とする土地を考慮しなければならない。(アフリカにおいては、2010年から2050年において人口は倍増すると見込まれている)こうした人々に対して土地の留保を保証することは不可欠なことなのである。

 農地争奪は、農民や遊牧民などが使ってきた土地から、今生きている人々、そして将来の人々までもを排除するものである。これは上記の国際法に定められた義務にも違反する。この事実は単なる「原則」によって救済されるものではない。また農地争奪は他にも様々な国際法への違反に結びついている。生計手段の剥奪、地域の自然資源を破壊する被持続的な農業の導入、適切な補償や再定住策を欠く土地からの強制排除、情報提供の拒否、生活に関わる政治的決定に対する参加の阻止などが引き起こされている。

 このペーパーではまずRAIイニシアティブとそしてまたRAI原則そのものの問題を、原則の一つずつについて検討していく。次に、このイニシアティブが出てきたプロセスを見直し、制度的また手続き的な問題点を検証する。

(1) 土地と資源に対する権利に関するRAI原則:既存の土地と自然資源に対する権利を認め、また尊重されること

 すべての権利保有者が明確化されるとともに、すべての形の土地権が法的に認められるということが必要な条件であろう。しかしこのことで、これらの権利が有効に保障されるということではないし、ローカルコミュニティの土地への権利が保護され、促進されるということでもない。
 第一に、そもそもこの原則は既存の土地権を、投資家に対して円滑に移行する目的でつくられたものであり、農民やコミュニティの手に、将来にわたって土地をとどめておくことを目指しているわけではない。
 第二に、「既存の土地権」という概念は、土地を持たない住民が土地にアクセスする、あるいはアクセスを回復するという権利を視野にいれていない。最も良好な農地が民間投資家に奪われつつあるという現実の中で、土地を持たない、あるいは土地をわずかしか持たない人々が土地を得て、「既存」の土地権を本質的に改善するということが妨げられてしまう。このことはRAIイニシアティブの根本的な矛盾である。土地の再配分を含んだ農地改革というのは、食料への権利を保障するための義務的な方策であるにも関わらず、こうした配分可能な土地資源を減少させ、農地改革に逆行する農地政策を促進するということは、食料への権利という人権の侵害であり、社会権規約に違反するものである。
 第三点は、急速な人口増加の中で、未来の世代に対して追加的な土地資源を確保するという予防的方策が必要とされていることである。このことは「既存の土地権」ではカバーしきれない。

 実際には、誰が土地への権利を持っているかというのは、様々な利害関係と権力関係が立ち現れる非常に政治的な問題であり、単なる技術的、行政的な問題ではない。意思決定の際に、土地権と「開発」に対してどのような解釈をとるかということは、権力的なバランスによるものである。歴史を振り返っても、常に土地権に対して、万人受けする技術的なアプローチが優先されてきたが、これは資本の利益にかなうものであり、金持ちを優遇するものであり、農民と労働者の更なる貧困化を引き起こしてきた。農民は土地を奪われ、排除され、移住を強いられてきたのである。RAIイニシアティブにおいて土地と資源への権利は技術的な課題として捉えられており、政治的な、階級的な問題には目が向けられていない。このことは女性や農民、放牧民、先住民族の権利を促進するどころか、切り崩していくこととなろう。

(2)食料安全保障に関するRAI原則:投資によって食料安全保障が危機に瀕することなく、むしろ強化されること

 食料安全保障のアセスメントは通常、国レベルの需要と供給の集計データに頼っている。こうした集計データでは、誰が食料を生産し、それがどこから来て、どのように生産されたものか、また現在誰が食料に事欠くのかは考慮されることはない。
 この結果、国内外で国際貿易向けの食料やバイオ燃料を生産する国が、海外から食料を輸入するという事態が起きるのである。食料安全保障を公的な、国レベルの集計データーで定義するということは、優越する生産・分配・消費パターンの中で社会的・環境的な問題を見過ごすこととなってしまう。大規模投資に基づく工業的農業によって純食料生産量が増加したとしても、ローカル・コミュニティの土地喪失、農民や放牧民の生活の破壊、土壌や水の破壊的使用といった受け入れがたいコストが発生するのである。食料安全保障は極めて狭い概念であり、RAIイニシアティブのように、この言葉を根本的な原則に使用するということは、地球上の在来農村、漁村、牧民のコミュニティに破滅的な結果を引き起こすことであろう。そこで我々は、適切な食料のための権利と食料主権、という言葉を用いるのである。

(3) 透明性、良好なガバナンス及び投資しやすい適切な環境に関するRAI原則:適切なガバナンスと土地へのアクセスと関連投資の過程に透明性があり、モニタリングが行われ、アカウンタビリティが確保される。

 土地へのアクセスと関連投資のプロセスにおける透明性とモニタリングは望まれる政策である。しかしそれだけで、貧困層にとって望ましい結果が保障されるわけではない。そこで我々は常に、透明性という考え方を貧困層にとってのアカウンタビリティの原則と結びつけることを提唱している。この点がRAIイニシアティブに完全に欠けている点である。
 実際に、RAIイニシアティブ策定は、インフォーマルな土地取引や投資の不安定性や不確実性を避けるために、透明な土地入手プロセスや、良好で安定な投資環境を求める、様々な多国籍企業や国内企業の要求に応える形で進められたものである。しかし土地取引が透明になったとしても(果たして企業がセンシティブな情報を公表したいと実際に望むかどうかは非常に怪しいところであるが)、このことが即座に農民の利益につながるというわけではない。これは地球上の様々な歴史や経験が何度となく明らかにしてきたことである。透明かつ「合法的に」、幾度となく農民・漁民・牧民、そして森の民のコミュニティは土地を奪われ、自然環境と脆弱な生態系が破壊されてきたのである。

(4) 協議と参加に関するRAI原則:実質的に影響を受けるすべての人と協議し、協議から得た合意を記録し、実施すること。

 RAIイニシアティブは、協議の結果が常に投資プロジェクトの受け入れになると想定して
いるようである。これでは協議は、結果がより正統化されて見えるようにするための単なる見せかけに過ぎない。
 しかしプロジェクトによって影響を受ける人々に対する協議の権利を真摯に取り上げ、人々がプロジェクトの社会的・経済的・環境的影響について、事前に公正なアセスメントを行い、代替案についても検討する機会を持つならば、こうしたプロジェクトを実施しない方がいいという結論に達するかもしれない。しかしこの原則、そして「協議」に関する主流の理解はこうした可能性を考慮してもいないし、こうした結果を本当に受け入れることもないであろう。この点が大きな問題である。実際に、近年の大規模な農地取得に際して、モザンビークのガサ県や、ケニアなど様々な国で「協議」が行われてきた。しかしその結果として引き起こされたのは土地の簒奪であり、敵対的な編入であった。多くの国で、国内企業や多国籍企業、国内エリート、政府は、土地を狙う自分たちのために「協議」を操り、農民や漁民、牧民のコミュニティの利益と人権を損なう方向に向かわせてきたのである。
 より広範な視点から考えるならば、土地の利用可能性や生態系保全の役割、農業のあり方、土地利用の構造について、政府は未来の世代に対して法的な義務を負っていることを忘れてはならない。影響を受ける人に対する協議が行われた後であっても、こうした義務を逃れることはできないのである。

(5)責任ある農業企業投資と経済的実行可能性に関するRAI原則:プロジェクトはすべての点において実現可能であり、法を尊重し、産業のベスト・プラクティスを反映し、永続性のある共通の価値観を持てるものであること。
 
 「経済的実行可能性」とは何なのか?世界市場において競争力を持つために、受け入れ国におけるすべての政策と戦略を外国資本に適したものとすることではないのか?この原則は、受け入れ国における政治経済に関して土地争奪が持っている意味を暗に示している。女性や小農民、牧民などすべての小規模な食料生産者が中核をなし、農業生態系に基づく耕作や牧畜が支援され、地域市場と経済が活性化されるような農業生産モデルを優先するかわりに、RAI原則は、国内外の大規模な投資家に奉仕するように政府と国家を導くための政策を正当化するものであり、破壊的な工業的農業モデルを促進するものである。しかし農業科学技術国際評価(IAASTD)はこうしたモデルは可能な選択肢ではないと明確に指摘している。食料及び気候危機の中で、こうした投資を促進することは無責任である。人権面からは、この原則は差別的であり、適切な食料への権利を実現するという国家の義務を果たすものでないと言える。

 いかに法律を守り、ベスト・プラクティスを踏襲したとしても、アグロ・インダストリーの経済的実行可能性というものが、そのプロセスにおいても、また結果的にも、プロジェクトに影響を受ける人々やコミュニティが利益の増進につながるという保障はない。事実、経済的にも成立し、それなりに法律も守っている農企業体が、貧困層やコミュニティの土地喪失を引き起こしたり、アグリ・ビジネスの中に無理矢理巻き込んでいくというケースは多々存在しているのである。経済的に成り立ちうるビジネスというのは、働く貧困層にとっての福祉を実現するということと同じではないし、そうした人々の経済的・社会的・文化的権利の実現を意味するものでもない。

(6) 社会的持続性に関する原則:投資は社会と分配に望ましいインパクトをもたらし、脆弱性を増大させないものであること。

 社会的持続性に関するアセスメントはしばしば、非常に狭い観点から、また非歴史的な観点から行われてきた。例えば、コミュニティが排除された事例で、土地取得が行われる以前、またその間の状況が調査されないままに、農業投資プロジェクトの社会的便益へのインパクトが、単に直接雇用、間接雇用によってのみ調査されるといったケースである。こうした調査は、人々が資源を奪われ、土地を追われることによって、未来の選択肢も奪われたのだ、という点についても見落としている。
 モザンビークのProcanaのようなプロジェクトの推進者たちも、プロジェクトにおける雇用の創出と、所得向上をもって、「社会的持続性」を示してきた。しかし長年の伝統であった放牧の終焉に関連しては「社会的持続性」という点からは全く議論がなされていない。また人々の資源管理と生活を尊重した上での生計の改善という可能性については調査すらなされていない。農村の貧困層の視点からは、主たる問題は彼らの権利を実現するためにどのような投資が必要かということであって、大規模な投資プロジェクトの影響を緩和するためにどうすればいいかという話ではない。


(7) 環境持続性に関するRAI原則:環境への影響を定量化し、資源の持続的利用を奨励する措置をとり、マイナスの影響は最小限に止めるか軽減する。

 「定量化」や「計量」といわれる場合に、金銭的や経済的な計算を意味することが多い。例えば、森林を伐採したり、焼き払ったりした際の環境コストというのは比較的簡単に計量されるのかもしれない。しかし農業投資プロジェクトを含むような食料・エネルギーモデル総体の環境コストを定量化しようと政策決定者が考えるか、そもそもそれが可能かどうかは定かではない。鉱業、単一作物農業、多様性の喪失、化学物質による土壌と水の汚染、長距離の食糧輸送と貯蔵、廃棄物処理など、このようなすべての環境コストを定量化しようとするだろうか。簡単に言うならば、経済及び生態系に対する政治的な観点からは、RAIの想定する土地取引は本来的に環境面からは持続不可能なものなのである。資源の持続的な利用を奨励するためには、全く異なるタイプの投資プロジェクトが検討されなければならない。

RAIの制度的問題

 このイニシアティブの手続き的また制度的な問題を検討する。

 RAIイニシアティブは大規模投資家が農業生産に対する関心を高めたことに対応したものである。RAI原則は農業投資における公共政策と受け取ることはできないし、民間農業投資に対する国家規制と見なすこともできない。それは大規模な農地取得が引き起こすネガティブな影響を緩和するための、自己規制のための政策アドバイスに過ぎない。
 民間セクターに対する自己規制という枠組みの中で、RAI原則は国内法規制、国際的人権法など、法的な拘束力に関しては言及していない。これはEITI(採掘産業の透明性イニシアティブ)やエクエーター原則、サンティアゴ原則、OECDの多国籍企業ガイドライン、また多々ある産品別や特定の取り組みにおける、企業の社会的責任という枠組みの中で検討されてきたものである。

 しかしながら、金融危機、規制緩和による様々な危機、また最近のメキシコ湾での危機など、民間セクターの自己規制が失敗してきたのは明らかであるにも関わらず、国際機関のいくつかや複数の政府は、いまだにこれだけが団体的/民間規制のあり方だと考えているのである。これは無責任な態度である。地域的にも地球的にも、我々は早急に食料品に対する金融的投機をやめさせなければならないし、実体経済一般の”金融化”にも歯止めをかけなければならない。世界の食料システムをコントロールしようとする力を押さえ込まなければならないのだ。度重なる食料危機や農業持続性、気候変動を乗り越えるためには、金融市場、食料、農業、水などの重要なセクターに関して、投資そして投資家に対する厳格な命令と執行可能な法的規制を実現しなくてはならない。

 RAIは貧困国政府の参加なしに、またこうした投資によって影響を受ける人々、女性や小農民、先住民族、漁民、牧民、農業労働者などの参加なしに、諸機関の間で進められてきたものである。RAIは多国籍機関の中で、手続きや決定、責任の所在などに関して明確なルールをもって作られたものではない。民間セクターと強い結びつきのあるテクノクラートが、ビジネスの動きにあわせつつ、イデオロギー的な信念のもとで、世界のそして人々の資源がどのように使われるべきかと決定した、市場志向の「グルーバル・ガバナンス」の賜物に過ぎないのである。
翻訳(開発と権利のための行動センター   青西)