2012年12月11日火曜日

カンボジアにおけるキャッサバ農園とバイオエタノール生産(出光興産)

出光興産株式会社はインドシナ地域においてバイオエタノール事業を推進するため、2012年12月7日に、プノンペン市にてカンボジア政府との覚書に調印。1)


  日刊工業新聞の報道によると、カンボジアの農園でキャッサバを栽培し、これを原料にバイオエタノールを生産する計画であり、現地政府機関がすでに約1万ヘクタールのキャッサバ畑を確保しているという。また工場はカンボジアのほか、主要な販売先となるタイでも検討しているとのことである。2)


 この事業に関連して、出光興産は経済産業省による「平成 23 年度民活インフラ案件形成等調査 カンボジア・メコン川上流西岸地域農業・物流インフラ整備事業」を受託しており、調査報告書がWEBサイトに掲載されている。3)
 この資料によるとキャッサバ向けの2万ヘクタールを含む5万ヘクタールの開発、将来的には隣接する5万ヘクタールの開発も計画しているとのことである。この報告書では「現時点では、プロジェクトサイトに住民の存在は確認されていない」と記載されている。また水運によるカワイルカ等の影響の可能性が指摘されている。


1)http://www.idemitsu.co.jp/company/news/2012/121210.html
2)http://www.nikkan.co.jp/news/nkx0820121211caan.html
3)http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2012fy/E001988-1.pdf
   http://www.jetro.go.jp/jetro/activities/oda/model_study/earth_infra/pdf/h23_saitaku_20.pdf

開発と権利のための行動センター 青西

2012年12月7日金曜日

資料紹介:モザンビークにおける農地争奪

 

モザンビークにおける農地争奪関連資料です。

LORDS OF THE LAND

- PRELIMINARY ANALYSIS OF THE PHENOMENON OF LAND
GRABBING IN MOZAMBIQUE CASE STUDIES-


JUSTIÇA AMBIENTAL & UNIÃO NACIONAL DE CAMPONESES
MAPUTO, MOZAMBIQUE

http://www.open.ac.uk/technology/mozambique/pics/d131619.pdf

2012年12月6日木曜日

モザンビーク北部における大規模植林プロジェクトの問題点

 モザンビーク北部のニアサ州などは、日本政府・ブラジル政府が参加するプロサバンナ・プロジェクトだけではなく、スウェーデン政府などが推進する植林プロジェクトのターゲットともなっています。

 「荒蕪地」と見なされている農地に対して、既に植林プロジェクトそして大豆生産などを狙うブラジルの農企業家などがラッシュしているのです。
 「農地争奪」の危険はないのか、ではなく、既に争奪戦は開始されています。そこに日本政府も「争奪に参加する」ために手を上げているのです。

THE HUMAN RIGHTS IMPACTS OF TREE PLANTATIONS IN NIASSA PROVINCE, MOZAMBIQUE 
 FIAN 2012
http://www.tni.org/sites/www.tni.org/files/download/niassa_report-hi.pdf

The Expansion of Tree Monocultures in Mozambique.
Impacts on Local Peasant Communities in the Province of Niassa-A field report 
WRM 2010
http://www.wrm.org.uy/countries/Mozambique/book.pdf
 
スゥエーデン政府は植林プロジェクトを推し進める一方、プロジェクト対象地域のニアサ州のReality Checkというローカルコミュニティの現状調査などを5年間にわたって実施し、毎年報告書を出していくようである。ここにはプロサバンナ・プロジェクトの対象地域(CUAMBA)も含まれている。
Reality Checks in Mozambique-- Building better understanding of the dynamics of poverty and well-being -  Annual Report, 2012, Embassy of Sweden


anual report、sub-reportとも次のサイトでアクセスできる。
http://www.orgut.se/reference-library/

Reality Checkの対象地はLago, Majune, Cuamba. Cuambaはプロサバンナ・プロジェクト対象地。

ニアサ州の地図

フィリピンのバイオエタノール事業-企業からの回答へのコメント

 

FoE Japanを含む日本のNGO・有志個人から伊藤忠商事株式会社(以下、伊藤忠商事)宛てに10月16日付で提出したフィリピンのバイオエタノール事業に関する公開質問状(>内容)について、11月16日付で伊藤忠商事からの回答がありました。 

これに対してFoEJapanが回答へのコメント及び新しい現地情報をWebサイトに掲載しています。


伊藤忠商事からの回答状はこちら
バイオエタノール製造・発電供給事業に関する公開質問状に対する御回答

伊藤忠の回答状に対する、現場の最新の状況も交えたコメントhttp://www.foejapan.org/aid/land/isabela/20121130.html
http://www.foejapan.org/aid/land/isabela/20121130_2.html

2012年12月3日月曜日

モザンビークにおけるブラジルの大規模プロジェクトが何百万という農民を排除する危険性

 

<11月30日付けのグレインのメーリングリストより届いたニュースを翻訳のうえ紹介します。ブラジルだけではなく、日本政府もこのプロジェクトに関与しています。>


  ブラジル政府及び民間セクターは日本と協力しつつ、モザンビーク北部において大規模な農業プロジェクトを推し進めつつある。プロサバンナと呼ばれるプロジェクトは1400万ヘクタールの土地を利用して、ブラジル企業が大豆やトウモロコシなどの商品作物を生産し、生産物を日本商社が輸出することを目指している。ナカラ回廊と呼ばれるモザンビークのこの地域は、数百万の小農世帯が生計を営んでいるが、このプロジェクトによって土地を奪われる危険性に直面している。
 
 ナカラ回廊はナンプラ州のナカラ港からザンベジエ州の北部を通り、ニアサ州のリチンガにつながる鉄道線路沿いに広がっており、モザンビーク国でも最も人口が集中している地域である。肥沃な大地と恵まれた降雨によって、数百万の小農民が自給向け、また地域内市場に向けて食料を生産している。

 しかしながら、プロサバンナ・プロジェクトはこの大地を日本やブラジルの企業の手に引き渡し、大規模農園を設立して、輸出向けの基幹作物低価格で生産することを目指している。サバンナを広大な大豆とサトウキビ農園に転換したブラジルのセラード開発のアフリカ版を、ここナカラ回廊で実現しようとプロサバンナ・プロジェクトは目論んでいるのである。
 
 多数のブラジル人投資家が既にこのモザンビーク北部のプロサバンナ・プロジェクト対象地を視察している。ヘクタールあたり年一ドル程度の長期間の借地契約で土地を提供しようというのである。
 元農業大臣であるロベルト・ロドリゲスに率いられるブラジルのジェトゥリオ・バルガス財団の系列であるGVアグロがブラジル人投資家を調整している。GVAのチャールズ・へフナ-はプロジェクトがモザンビークの小農民を排除する物だという考えを否定し、プロサバンナ・プロジェクトは荒蕪地を対象としており、農業は行われていないと指摘している。へフナ-は「モザンビークは農業に適した広大な土地を有しており」、「深刻な社会的影響を引き起こすことなく、3万~4万ヘクタールの大規模プロジェクトを実施する可能性を有している」と述べている。
 
 しかしながら、モザンビークの研究機関の調査は、この地域のほとんどの農業用地は農村コミュニティによって利用されていることを示している。
「ナカラ回廊に荒蕪地があるというのは真実ではありません」とIIAM(モザンビーク農業研究所の調査員であるハシント・マファラクゼーは言う。
 この地域の農民も大規模農園のための土地はないと言明している。2012年の10月11日にナンプラの町に結集した全国農民連盟(UNAC)のリーダーたちは、プロサバンナ・プロジェクトについて分析するとともに、会議の最後で次のように宣言している。
「ナカラ回廊において数百万ヘクタールの土地を求めているプロサバンナ・プロジェクトについて深く憂慮しています。地域の現実を見ればそのような大面積の土地がどこにもないことは明らかで、移動耕作を行っている小農民によって利用されている土地なのです。」

声明では「単一作物の生産のための大規模農業プロジェクトを実現するために、農民の土地を奪い、コミュニティを移転させようといういかなる動き」も、また「アグリビジネスを確立して、モザンビークの農民を農業労働者に転換しようとするブラジル人農業者の入植を」強く非難している。

 この会議はプロジェクトに影響を受ける地域の農民リーダーがプロサバンナ・プロジェクトを分析するために初めて集まったものであり、多くのリーダーにとってはプロジェクトについての情報を受けとる最初の機会であった。
 
 政府はこれまでに私たちを何度か会議に招待してきたが、それらはプレゼンテーションを一方的に見せるだけで、いかなる質問の機会も与えないものであったとナンプラの協同組合連合の代表であるグレゴリオ・アブドは述べている。「私たちは透明性を求めているし、詳細について知りたいのです」

 モザンビーク、ブラジルそして日本政府は、閉ざされたドアの向こう側で事業を進めつつあり、現在は2013年7月に終わる予定でプロサバンナ・プロジェクトのマスタープラン作成を進めている。日本政府はナカラ回廊のインフラ整備に資金提供をしているが、ブラジル協力事業団(ABC)の代表は、GVアグロがこの地域の大規模農園に投資するための膨大な資金を確保し、管理していると述べている。またABCの代表は、名前は明示されなかった他の人物によって管理される同等規模の資金の存在について言及している。一方ブラジルの研究機関であるEMBRAPAは、ナンプラとリチンガの国立研究所の能力強化に取り組んでおり、ナカラ回廊の諸条件への適応試験のために大豆や綿花などの品種を持ち込んでいる。

 UNACはプロサバンナ・プロジェクトが上から押しつけられた政策の結果であり、農民の基本的な要求や希望そして不安に答えるものではないと指摘している。UNACはこのプロジェクトが土地なし農民を産み出し、社会的動揺と貧困、腐敗、環境悪化を引き起こすものであると警告している。
 またUNACは、もしモザンビークのナカラ回廊に投資を行うのであれば、小農の農業開発と小農経済のために行うべきであり、それが尊厳ある生活を持続させることができる唯一の農業形態であり、また農村からの人口流出に歯止めをかけ、モザンビーク国民に適切な食料を十分供給するための唯一の道であると主張している。
 
  Brasil de Fato紙に2012年11月29日に掲載。
 
出典 
Megaproyecto brasileño en Mozambique desplazará a millones de campesinos 
UNAC, Via Campesina Africa, GRAIN | 29 November 2012  より翻訳
http://www.grain.org/article/entries/4625-megaproyecto-brasileno-en-mozambique-desplazara-a-millones-de-campesinos

英語版
  http://www.grain.org/article/entries/4626-brazilian-megaproject-in-mozambique-set-to-displace-millions-of-peasants

翻訳

開発と権利のための行動センター 青西

2012年11月17日土曜日

イサベラ州のケースについて-回答書を読んでのコメント

 この回答に関し、開発と権利のための行動センターの青西から、土地問題だけに関してのコメントを記載します。

質問1)サトウキビ栽培地の確保をめぐる問題について

(1) 当該農地の実際の耕作者の合意を得ぬまま、第三者が土地所有権の不当な取得・主張4を基に、ECOFUEL 社とサトウキビ栽培を目的とした契約を締結し、耕作者が同地での生計手段を喪失した/脅かされたケース5に関する事実確認の結果、および、その結果に基づく対応。(他続く)

 

 この質問に関して伊藤忠商事では、契約当事者であるECOFUEL社を介さずに第三者弁護士を通じて状況の確認を行ったとのことである。

 ここで4つのケースの確認作業が行われているが、うち3件で土地に関する係争が確認されている。2件において「法的所有者」がECOFUEL社と契約を行ったものの、耕作者は異なっており、もう一件では法的所有権者が確定できずにいる。

確認すべきこととして次の3点があげられる

1) 「法的所有権者」と耕作者が異なるケースが明らかに存在しており、こうしたケースが多々ある可能性が高いということ。この場合に一概に「法的所有権者」が正当な所有権を有するとは言えず、「法的所有権者」の土地証書が偽造されているケースあるいはその他の理由で正当性を有さないース、農地改革プロセスでの手続き中のケース、耕作者がその土地の占有権を有するものの法的手続きを行っていないケ-ス、あるいは耕作者の有する慣習法的な占有権が法的には認められていないケースなどが想定されうること。

2) 耕作者の権利は、その生存権の保証、伝統的生業形態を継続する権利という観点からも積極的に保証されるべきこと。

3) 今回の確認作業は弁護士に依頼しているが、高額な経費発生の可能性あり、耕作権が脅かされている小農民には現実的にはアクセスできないシステムであること。こうした問題に対して誰が経費を負担すべきなのかが明確となっていない。

以上の点を確認した上で、土地所有権に係わる書類等を有するものとの契約作業自体が、地域内の社会的紛争を引き起こすこととなることを改めて訴えたい。慣習的な土地利用が行われてきたところで、適切な仲介・紛争処理制度抜きに、近代法的な土地取引が進められると、それは土地紛争に直結する危険性が高いのである。

これに関連する質問4の(1)「 地域社会の農民・先住民族・労働者の苦情を適切に受け付けることができ、迅速に解決を図るための対応(苦情処理メカニズムの確立等の対応の検討・実施状況)」には明確な回答を頂いていない。

「種々の苦情に対しましては、その都度誠心誠意説明をさせて頂き、お陰様で地元の皆様にはご理解を頂き、本事業推進にご支援を得つつあると確信しております。」という回答であり、これではいつまでたっても現地の支援団体、日本のNGOなどが苦情を拾い上げ、圧力をかけることが必要となってしまう。

 

 ここであらためて日本政府が推進する「責任ある農業投資原則」を振り返ってみたい。

 この原則では土地について次のように定めている。

① 土地及び資源に関する権利: 既存の土地及び天然資源に関する権利は認識・尊重されるべき。

 問題となるのはやはりこの「既存の」の定義であろう。フィリピンの事例で見るように「法的所有権者」と耕作者が異なり、「法的所有権者」が土地所有証書などを偽造しているケースも存在する。「法的所有権者」を守ることが「土地及び資源に関する権利」を守ることになるとは言えないのである。

 土地に生計を依拠する耕作者の権利が優先的に尊重されるべきことが明記される必要がある。

 そして、「正当な土地及び天然資源に関する権利を認識・尊重」するためには、精緻な調査とそれに基づいて計画され、誠実に運営される仕組み・制度が必要とされる。これは土地を求めて「ラッシュ」しているような企業には絶対にできない作業である。イサベラ州のプロジェクトを見ても、土地に関する権利を認識・尊重するという作業がいかに複雑なものかわかるであろう。

開発と権利のための行動センター

青西靖夫

2012年11月16日金曜日

伊藤忠商事からの回答-フィリピンイサバル州の事業について

 

フィリピン・イサベラ州バイオエタノール製造・発電供給事業に関する公開質問状への回答から

 今回の質問状に関して、伊藤忠商事株式会社には誠意ある対応をして頂き、11月16日に伊藤忠商事株式会社とFoE他公開質問状の提出団体との会合を持つとともに、質問状に関して文書にて回答を頂きました。

 文書全文はpdfにて掲載します。こちら>>>

2012年11月13日火曜日

フィリピン:転作に反発 日系企業のバイオエタノール事業で、一部農民がサトウキビへの転作に反発(転載)

 

まにら新聞(11月5日付け)の記事を、許可を得た上で転載します。

まにら新聞11月5日
--
転作に反発
日系企業のバイオエタノール事業で、一部農民がサトウキビへの転作に反発
 http://www.manila-shimbun.com/photo204756.html
転作の進んだサトウキビ畑(手前)と水田(奥)=10月16日、ルソン地方イサベラ州サンマリアノ町で写す

  ルソン地方イサベラ州で、伊藤忠商事と日揮が出資するサトウキビを原料とする国内最大のバイオエタノール事業。地元農民の知らないうちに、コメやトウモロコシ畑から、サトウキビ畑に転作されるケースがあり、一部農民から反発が起きている。

 こうした事情について、エタノール工場にサトウキビを供給する地元企業「エコフューエル・ランド・ディベロップメント」の担当者は「問題は把握している。これまでに、契約後に問題が発覚した農地約200ヘクタールを放棄した」と述べた。今後も、問題の所在がはっきりした農地は放棄する意向だ。一方で「我々は、土地の所有を示す文書に基づいて契約した。農民が土地の所有を示す文書を持ってこないので、解決が進まない。我々も被害者だ」とも主張した。

 事業を推進する合弁企業「グリーン・フューチャー・イノベーションズ」の徳田慎一チェアマンは「イサベラ州の土地2万5千ヘクタールで、タバコの栽培をしているフィリピン人の事業パートナーから、ここなら大丈夫、と説明を受けた。土地問題があるとは知らなかった」と述べた。

 イノベーションズ社が、同州サンマリアノ町の工場で、年間5万4千キロリットルのバイオエタノールを生産。エコフューエル社が、工場から半径約30キロの地域で、1万1千ヘクタールの土地を農家から借り上げ、サトウキビを栽培して、工場に供給する計画だった。

 イサベラ州の農家は、自作農として、主にコメとトウモロコシを栽培してきた。しかし、地元有力者が、農地の所有を示す文書を用意し、エコフューエル社と賃貸契約を結んでしまった。多くの農家は、農地改革法に基づき、農地を分配されていたが、農地の所有を示す文書を取得していなかった。

 工場から約30キロ離れた同州デルフィンアルバノ町で、トウモロコシを栽培してきた男性、サムラ・ラミルさん(43)は「知らない間にサトウキビを植えられた」と憤る。自身の農地13ヘクタールのうち、3ヘクタールがサトウキビ畑に変わったという。損失は1回の収穫当たり、豊作なら12万ペソ、凶作でも3万ペソになる。

 サトウキビ畑への転換で農地1・5ヘクタールを失ったという農家の女性、メルリーナ・ヘルナンデスさん(43)によると、同町の土地問題は、エタノール事業が始まる前からあった。コメを作付けしていたヘルナンデスさんの農地は、2007年ごろ、中国企業と地元有力者が賃貸契約し、トウモロコシ畑に転換されてしまったという。ヘルナンデスさんは「昔のようにコメを植えたい。元の農地に戻してほしい」と訴えた。

 エコフューエル社によると、農家から借り上げ予定の1万1千ヘクタールのうち、10月末までに8千ヘクタールを確保した。契約農家は約3千人という。

(以上)

2012年11月7日水曜日

11/15 モザンビークでのJICA熱帯サバンナ農業開発プログラム

□■□■転送歓迎━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
明治学院大学国際平和研究所(PRIME) 「平和学を考える」
AJF・JVC・HFW・明治学院大学国際平和研究所(PRIME)共催
連続公開セミナー「食べものの危機を考える」2012年度 第5回

モザンビークでのJICA熱帯サバンナ農業開発プログラム
市民社会との勉強会

講師:独立行政法人国際協力機構(JICA)
      アフリカ部アフリカ第三課 坂口幸太さん
コメンテイター:
   舩田クラーセンさやかさん(東京外国語大学大学院 教員)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■□■

 モザンビーク北部のナカラ回廊地域では、2011年4月より、地域の
小規模農家と農業開発に参入する投資家が共存するモデルを目指す
「日本・ブラジル・モザンビーク三角協力による熱帯サバンナ農業開発
プログラム(ProSAVANA-JBM)」が、独立行政法人国際協力機構
(JICA)により実施されています。
 JICAによると、ProSAVANA-JBMは、広大な熱帯サバンナ地帯を
有していたブラジルで、1970年代から日本との協力で約20年にわたっ
て農業開発協力事業に取り組んだ知見や農業技術を活用し、世界の
食料問題の解決に貢献することを目的としています。
 今回のセミナーでは、本事業を担当する坂口幸太さんをお招きし、
プログラムの詳細についてお話しいただきます。その上で、現地で
長年にわたって活動や調査研究を行ってきた舩田クラーセンさやか
さん(東京外国語大学大学院 教員)にコメンテイターをお願いして
います。
 質疑応答の時間には、参加者と活発な議論を行いますので、皆さま
ふるってご参加ください。

**********
【講師プロフィール】
●独立行政法人国際協力機構(JICA)アフリカ部アフリカ第三課
 坂口幸太さん

2003年東京外国語大学ポルトガル語学部卒業。同年JICA入団。
中南米部南米課、国際協力総合研修所、ブラジル事務所を経て現在
アフリカ部アフリカ三課(南部アフリカ所掌)でモザンビーク国担当及び
JBPP(日本ブラジルパートナーシッププログラム)対アフリカ協力担当。

**********
┏━━━━━━━━━━━━━━━
┃開催概要
┗━━━━━━━━━━━━━━━
【日時】2012年11月15日(木)18:30~20:30(開場18:15)
【会場】明治学院大学白金校舎 本館1252教室
    アクセス http://www.meijigakuin.ac.jp/access/shirokane/
    (JR品川駅・目黒駅よりバスで約10分、東京メトロ白金高輪駅、
    白金台駅、高輪台駅より各徒歩約7分)
【参加費】無料
【申込み】明治学院大学国際平和研究所 担当:田中  
          E-MAIL:prime@prime.meijigakuin.ac.jp
          TEL:03-5421-5652

【11/20 波多江秀枝さんのフィリピン現地報告会(京都)】

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【11/20 波多江秀枝さんのフィリピン現地報告会(京都)】
日本が関わる環境破壊
鉱山、ダム、バイオ燃料の開発現場で
―この半年の動き―
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イベント掲載サイト
http://d.hatena.ne.jp/odanetkansai/20121106/1352193534

●日時:2012年11月20日(火)午後6時30分~
●場所:キャンパスプラザ京都 第4演習室
       (ビックカメラ前、JR京都駅ビル駐車場西側)
●報告者:波多江秀枝さん  (国際環境NGO FoEジャパン 委託研究員)
 フィリピンで日本の資本や援助によって進められている様々な開発事業。その開発によって地元の住民が抱えてきた問題は、なかなか解決に至らないまま、新たな問題が浮上しているケースもあります。
 フィリピンを拠点に開発の現場での調査を続けておられる波多江秀枝さんをお招きし、4つの事業について、この半年の現場の動きと日本側の対応を、写真や映像を交えながら、ダイジェストで報告していただきます。
 みなさまの参加をお待ちしています。
●参加費:500円
●共催:関西フィリピン人権情報アクションセンター
    フィリピンの子どもたちの未来のための運動(CFFC)

  ●問合せ先:フィリピンの子どもたちの未来のための運動(CFFC)
 京都府宇治市広野町西裏99-14 パール第1ビル3階
 Tel 0774-48-1100 Fax 0774-44-3102 (藤原)
 http://www.geocities.jp/fujiwara_toshihide/index.html
 もしくは メール fujiwara_toshihide@yahoo.co.jp
<ニッケル鉱山・製錬>
 住友金属鉱山等が出資。国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)が支援。住民・NGOが指摘する事業地周辺の水質汚染を事業者や政府機関は認めるか?
( http://www.foejapan.org/aid/jbic02/rt/activity.html )
<サンロケ多目的ダム>
 丸紅、関西電力が出資。JBICが融資。事業開始から14年経つ今も補償が未完了? ダム上流の鉱山事故でダム貯水池への影響は?
( http://www.foejapan.org/aid/jbic02/sr/activity.html )
<イサベラ州バイオエタノール>
 伊藤忠商事・日揮が出資。農地収奪等の問題が未解決のまま工場の操業開始?違法操業による大気・水質汚染の実態は?
( http://www.foejapan.org/aid/land/isabela/activity.html )
<ボホール灌漑ダム>
 国際協力機構(JICA)の援助で建設された灌漑ダム。ダム完工から15年経った今年、やっと敷設されたコンクリート水路に灌漑用水は届くのか?
( http://www.foejapan.org/aid/jbic02/bohol/activity.html )    

2012年10月23日火曜日

日系企業出資のバイオエタノール事業に反対する農民らがサトウキビ切り倒す

 

10月16日付けの「まにら新聞」が次のような記事を掲載しています。

まにら新聞10月16日
 ルソン地方イサベラ州で伊藤忠商事と日揮が出資するサトウキビを原料とするバイオエタノール事業で、事業に反対する地元農民と農民団体50人が15日午後、サトウキビ畑に植えられているサトウキビ約100株を切り倒した。

 農民の要求は、サトウキビ畑の土地の所有権問題の解決。農民はもともと、農地でコメやトウモロコシを栽培し、生計に充てていた。しかし、比の民間企業「エコフューエル・ランド・デベロップメント社」が農民に無断で、サトウキビに転作したという。

 50人は、同州デルフィンアルバノ町の農地2500平方メートルで、刃渡り約30センチのボロ(長刀)を使い、サトウキビを1本ずつ切り倒した。この間、同社の現地責任者が農園に駆けつけ、土地問題の解決策を提示したが、農民側を止められなかった。

 エコフューエル社は、伊藤忠商事と日揮が出資する「グリーン・フューチャー・イノベーションズ社」の提携企業。

http://www.manila-shimbun.com/photo204473.html

(記事を読むためにはマニラ新聞にご登録ください)

 

付記: この撤去作業の後、10月20日(土)、ECOFUEL社本社のCSR/渉外担当トップが村を訪問し、ECOFUEL社がこれまで契約していた第三者(隣町の村長)が当該農地の所有権を持っていなかったことを認めたということです。ECOFUEL社は、FoEのWEBサイトの報告(今年2月)でも指摘していた偽の証明書のみで契約をしていたとのことです。http://www.foejapan.org/aid/land/isabela/20120213.html

フィリピンにおけるバイオ・エタノール事業について日本企業に公開質問状を提出

2012年10月16日

以下FoE Japan のサイトより転載

10月16日(火)、FoE Japanを含む日本のNGO・有志個人から伊藤忠商事株式会社(以下、伊藤忠商事)に対し、同社、および、日揮株式会社が出資して進めるフィリピンのバイオエタノール事業に関し、公開質問状を提出しました。 

フィリピンで最大規模のバイオエタノール製造が行なわれる同事業に関しては、原料であるサトウキビの農地11,000ヘクタール(東京ドーム2,353個分)の確保をめぐり、これまでにも、現地農民組織や国際NGOから、農地収奪や土地利用転換、労働搾取等の問題(>詳細)が指摘されてきました。
また、今年5月下旬に工場の操業が開始されてからは、周辺地域における悪臭、大気・水質汚染等の問題(>詳細)が報告されています。(工場の操業は8月上旬から停止中)
日本のNGOも今年2月に意見書を提出するなど、早急な問題の解決を日本企業に求めてきました(>詳細)が、伊藤忠商事からは「指摘事項の事実確認をしている」との回答ばかりで、意見書提出から半年以上経つ今も、事実確認の結果や対応に関する回答はありませんでした。
今回の公開質問状では、現地企業任せではなく、「自らが率先して現地の状況を把握し、問題解決のために適切に対処していくことが、企業の社会的責任(CSR)の取り方」であると指摘。今年12月と言われている本格的な工場の操業を前に、問題の解決が進まない現場の状況を憂慮し、日本企業のより積極的な関与を促すとともに、以下の点に関する現場での問題状況と対応について、4週間以内の回答を同社に求めています。

 

1.サトウキビ栽培地の確保をめぐる問題
2.サトウキビ栽培に従事する農業労働者の労働条件等の問題
3.工場の操業に伴う新たな問題
4.早期の問題把握と解決に向けた対応と現地住民との対話
公開質問状の本文はこちら(PDF)

プロサバンナ事業(日本援助)に関するモザンビーク農民連盟の声明

 

日本政府、国際協力機構(JICA)などが関与してモザンビークにおいて進めつつある「プロサバンナ事業」に対してモザンビークの農民組織が声明文を発表。

 このプロジェクトを農民のニーズを組み入れないトップダウンの政策の結果であり、大規模農業の展開が、農民の土地を奪い取る危険性があること、社会動乱を引き起こしかねないことなどを指摘している。

以下、声明文の日本語訳である。

União Nacional de Camponeses (UNAC)

プロサバンナ事業に関する声明

(日本語)

我々、ナンプーラ州農民支部、ザンベジア州農民支部、ニアサ州農民連盟、カーボデルガード州農民連盟の女性農民と男性農民、全国農民連盟(UNAC)の全メンバーは、2012年10月11日にナンプーラ市に集まり、プロサバンナ・プロジェクトに関する分析と議論を行った。

プロサバンナは、モザンビーク共和国、ブラジル連邦共和国、日本の三角事業であり、14百万ヘクタールにも及ぶニアサ、ナンプーラ、ザンベジア州の14ディストリクト(郡)を焦点とするナカラ回廊開発のための巨大農業開発事業である。

当該プロジェクトは、ブラジルのセラードにおいて日伯両政府によって実施された農業開発事業に触発されて行われたものである。セラード開発は、環境破壊や同地に暮らしていた先住民コミュニティの壊滅をもたらし、今日、セラードでは、大規模な産業としての農業やモノカルチャー栽培(主に大豆)が進んでいる。ナカラ回廊地域は、ブラジルのセラードと類似するという気候上のサバンナ性や農業生態学的な特徴、国際市場への物流の容易さにより(当該プロジェクト地として)選ばれた。

プロサバンナ・プロジェクトについて耳にするようになって以来、本事業関係者(モザンビーク、ブラジル、日本政府)による情報の不足、透明性の減少は顕著となっており、以上に言及した理解に至った。

我々男女の農民は、このような手法、プロセスのすべてにおける市民社会組織、特に農民組織らの排除や低い透明性に特徴づけられるモザンビークでのプロサバンナの立案と実施を非難する。プロサバンナに関する深い分析に基づき、我々農民は以下の結論に至った。

  • プロサバンナは、ナカラ回廊の農民ら自身の基本的なニーズ、展望、そして懸念に関する配慮を欠くトップ・ダウン式の政策の結果である。
  • 我々は、モノカルチャー(大豆、サトウキビ、綿など)の大規模農業プロジェクトのために主張される、農民の土地の収用やコミュニティの移転のいかなるイニシアチブも強く非難する。
  • 我々は、アグリビジネスを目的とし、モザンビーク人農民らを被雇用者や農業労働者に変えるブラジル人農家の入植を非難する。
  • 地域の実態として、土地は農民によって休耕技術の資源として使われており、土地の拡大は不可能となっているにもかかわらず、ナカラ回廊周辺の何百万という土地を要求するプロサバンナという事業に対して、我々は大きな懸念を認識する。

プロサバンナの立案と実施プロセスにおいて顕著になったやり方を考慮すると、我々農民は、次の影響が予想される点について警鐘を鳴らす。

  • 土地の収用と移転のプロセスの結果、モザンビークで土地なしコミュニティが現れること。
  • ナカラ回廊周辺およびそれ以外の地域における頻繁な社会的動乱の発生。
  • 農村コミュニティの貧困化と自給自足の為の代替手段の減少。利権争いと汚職の増加。
  • 化学肥料や農薬の超過的使用の結果としての土壌の疲弊と水資源の汚染。
  • アグリビジネス事業のための森林伐採の結果としての生態系の不均衡。

モザンビークあるいはナカラ回廊地域に投資するのであれば、地元農民の農業や経済の発展のために適切な投資が行われるべきであり、我々はそれを要求する。我々、UNAC並びにVia Campesinaのメンバーは、それこそが、唯一尊厳があり意味のある雇用を生み出すことができる農業であり、農村人口流出を防ぎ、モザンビークの全国民のために質量ともに十分な食料を生産し、食料主権の達成の道に貢献すると認識している。

我々は、モザンビークにおける農業分野の開発のオルタナティブとして、食料主権に基づくアグロエコロジー的生産モデルと農民農業への強くかつ忠誠的なコミットメントを継続する。このモデルは、持続可能性のすべての側面に結びついており、実践において自然に寄り添ったものである。

農民の農業は、地域経済の主柱であり、農村における雇用を維持し、増加させるのに役立ち、都市や村落の生存を可能にする。協働が、自身の文化やアイデンティティを強めることを可能とする。このオルタナティブなモデルにおいて、開発政策は、社会的にも環境的にも持続可能であり、民衆の現実のニーズや課題に基づいて組み立てられなければならない。

農民は生命や自然、地球の守護者である。小農運動としてのUNACは、農民の基礎(土壌の尊敬と保全、適切で適正な技術の使用、参加型で相互関係に基づく農村開発)に基づいた生産モデルを提案する。

現在、国連は、FAOを通じて、世界の、特に開発途上国の八人に一人が飢えに苦しんでいると報告している。モザンビークもこれに含まれる。したがって、モザンビーク政府の優先順位は、国内消費のための小農生産による食料生産であるべきであり、社会の多様なセグメントを包摂し、内発的な潜在性を発展させることを試みるべきである。

UNAC 25年に及ぶ食料主権のための農民の闘い!

よりよい正義、豊かさ、連帯のある社会の形成のための農民(男性、女性、若者)を主人公とするための闘い

2012年10月11日ナンプーラ

下記原文(ポルトガル語)より和訳http://www.unac.org.mz/index.php/7-blog/39-pronunciamento-da-unac-sobre-o-programa-prosavana

2012年10月16日火曜日

ランドラッシュに関する記事掲載中

 

財団法人 地球・人間環境フォーラムのニュースレターである「グローバルネット」に隔月でランドラッシュに関する記事が掲載されています。

詳細は下記サイトから。

http://www.gef.or.jp/activity/publication/globalnet/index.html

ランドラッシュ~世界の農地はいま
世界各地でランドラッシュと呼ばれる大規模な国際的土地取引が起こっている。土地取引により、もともと経済的な基盤の弱い小農民や現地住民をさらなる貧困へ追いやるケースも出てきており、大きな問題をはらむ動きとなっている。世界の環境、土地、水、食糧問題を考える上で、ランドラッシュの動きは、今後私たち市民が考えるべき大切なテーマとなっていえるだろう。しかし日本ではまだまだ情報が少ないのが現状だ。この連載では、日本でランドラッシュの問題に取り組むNGOのメンバーであるAMネット代表理事 松平尚也氏と開発と権利のための行動センターの青西靖夫氏が、その概況や事例を紹介しその課題や解決に向けた動きを探る。(2012年4月開始。偶数月連載)

ランドラッシュに関するシンポジウム 講演録

 

財団法人地球・人間環境フォーラムのサイトに2012年1月に開催されたシンポジウム 「海外農地投資(ランドラッシュ)の現状とバイオマスの持続可能な利用~日本は今後、どう対応すべきか~」の講演録がPDFにて掲載されています。

詳細は下記リンクよりご確認ください。

http://www.gef.or.jp/activity/economy/stn/biomass_landrush2012.html

フィリピンバイオエタノールプロジェクトを巡る問題

 

FoE のサイトにフィリピンのイサベラ州におけるバイオエタノール製造・発電事業の報告がアップされています(2012年7月)

現地報告(1)では工場の操業開始に伴う工場排水や大気汚染に関する住民の声。

現地報告(2)ではサトウキビ調達現場、特に土地所有権を巡る不正の存在とその不正の告発を行うコストがすべて農民にかかってくる現実、また農業労働者の雇用条件などの問題が指摘されています。

詳細はこちらでお読みください。http://www.foejapan.org/aid/land/isabela/2012July.html

開発と権利のための行動センター 青西

2012年3月8日木曜日

フィリピン・イサベラ州バイオエタノール事業 「早急な問題解決を!」日本企業に対応を求める文書提出

(FoE サイトからの転載です。

フィリピンのバイオエタノール事業の実施に伴い起きている現地での問題を早急に解決するため、積極的な対応をとるよう求める文書を伊藤忠商事株式会社(以下、伊藤忠商事)に提出しました。

文書を提出したのは、国際環境NGO FoE Japan、開発と権利のための行動センター、“No! to Landgrab, Japan”の日本のNGO・市民団体です。
フィリピンで最大規模となる同バイオエタノール事業は、伊藤忠商事と日揮株式会社が出資し進められていますが、原料であるサトウキビの農地 11,000ha(東京ドーム2,353個分)の確保をめぐり、これまでにも、農地収奪や土地利用転換、労働搾取等の問題が指摘されてきました。
こうした問題について、同企業はこれまでNGOに対し、「現地企業が対応する」と回答。しかし、日本企業のパートナーである現地企業は、地元住民から直接訴えを受け、こうした問題を把握しているにもかかわらず、真摯な対応を取っているとは言えず、問題は解決されないまま現在に至っています。
NGO3団体はこうした現状を踏まえ、今回、伊藤忠商事に提出した文書のなかで、以下のような問題を再度指摘しています。

1.サトウキビ栽培地の確保をめぐる土地収奪の助長と生計手段への影響、人権侵害
2.サトウキビ栽培地の確保をめぐる無秩序な土地利用転換
  (コメ・トウモロコシ等の食料生産地や森林地域からの転換のケース)
3.サトウキビの栽培に従事する農業労働者の労働条件・環境の問題
  (法定最低賃金の不遵守、賃金未払い、福利厚生の未提供等のケース)
4.バイオエタノール製造・発電所の建設に従事する労働者の労働条件・環境の問題
  (法定最低賃金の不遵守、福利厚生の未提供等のケース)

また、日本企業「自らが率先して現地の状況を把握し、問題解決のために適切に対処していくことが、企業の社会的責任(CSR)の取り方」だとし、同企業に対し、主に以下のような点を求めました。

・法的な擁護を受けにくい農民、先住民族、農業労働者、契約労働者などに対する特別な配慮と人権侵害を回避するための対処
・早期の問題把握に向けた実効的な苦情処理メカニズムの確立と地域社会の農民、先住民族、労働者、また、NGOとの直接対話
・法的には土地権に問題がないと見せかけている土地での契約を早急に破棄/回避するための実効的な施策
・契約労働者を含む労働者の人権を確実に尊重し、擁護できるよう、労働条件・環境を改善するための実効的な施策

バイオエタノール工場の建設工事はこの2月にほぼ終わり、5月には商業運転の開始が見込まれていますが、現地で起きている問題を早急に解決し、今後、同様の問題が拡大することを未然に回避するためにも、日本企業は、対応を現地企業にのみ任せるのではなく、同社のCSR方針、また、同社も賛同する国連グローバル・コンパクト10原則等の国際基準に則った、迅速かつ積極的な対応を求められています。
提出文書の本文はこちら[PDF]
同事業の詳細について


●本件に関するお問い合わせはこちらまで
国際環境NGO FoE Japan 担当:波多江
TEL: +63-929-560-9896(フィリピン)  Email: hatae@foejapan.org

2012年2月26日日曜日

グレインが農地収奪に関する新しいデーターを公表/モザンビークを概観

 

このデータは2006年以降の、それぞれの国に対する海外農業投資を集約したものであり、そのほとんどはFarmlandgrabのサイトに報告されたものに依拠しているとのことである。
GRAIN releases data set with over 400 global land grabs(2012/2/23)
http://www.grain.org/article/entries/4479-grain-releases-data-set-with-over-400-global-land-grabs

(数字の記載ミスがあったのでいくつか修正しました。)

この中でモザンビークに焦点を当てて概要を報告する。
1)耕作面積
まず海外農業投資に目を向ける前に、モザンビークの耕作地面積を把握してみたい。

JICAの報告書によると「農耕可能地については約3,600 万ha と報告されているが、実際の耕作地面積はこのうちの16%に相当する570 万ha である」とのことである。
FAOのデータベースでは(2009)、農業用地が約4930万ha、耕作地が約505万ヘクタール、林地が約3923万ヘクタールとされている。(農業用地と林地で総土地面積の7863万haを上回る)
USAIDのサイトは耕作地は380万~530万ヘクタールであろうと見なしている。

つまり土地利用を明確に把握するデータは存在していないというのが実態であるのだが、とりあえず500万ヘクタールを耕作地として考えてみる。

2)GRAINのデータ
 GRAINのデータベースによると2006年以降のモザンビークにおける農業投資案件として25件、1,583,149ヘクタールがリストアップされている。現在の耕作面積の30%である。これらがどのような土地で進められているかはわからない。
 またこのうちの120万ヘクタールはエタノール生産向けと思われる。

3)JICA-ブラジル-モザンビークプロジェクト
 このプロジェクトの準備調査が対象としたナンプーラ州についてJICA報告書は「ナンプーラ州における農地面積は約459 万haと推計され、そのうちの約31%に相当する145万haが耕作地として利用されている」と記載し、一戸あたりの平均所有面積は1ha、またナンプーラ州では70万の農家が存在するとされている。
 
 GRAINのデータベースにある農業投資の総面積は、150万世帯が影響を受ける可能性も秘める規模なのである。

 では、果たして、JICAが調査も行わずに、プロジェクト対象地域に含めた、日本の農地面積より広大な、640万ヘクタールは一体どのような土地なのだろうか。少なくともJICAの報告書には明確に示されていないのでわからない。その面積は現在のモザンビーク全体の耕作地よりも大きく、モザンビークの「農業用地(可耕地を意味するのであろう)」の20%近い。このような膨大な面積が「機械化農業に適している」と記載された外交文書に、JICAは調査もせずに調印しているのである!

4)GRAINのデータから把握できるもう一つの問題
 今回の三角協力のブラジル側カウンターパートであるEMBRAPAについて、既にブラジルの鉱業開発企業とのジョイント・ベンチャ-でモザンビークに投資することが報告されている。3万ヘクタールのオイル・パーム生産を行うとのことである。
 モザンビークにおける収益事業にコミットしているEMBRAPAが、公的事業として行われるJICAの国際協力事業に、ブラジル政府側のカウンターパートとして組み込まれていることは問題ではないだろうか。

 またGRAINのデータにあるように膨大な海外農業投資がすすみつつあり、今後様々な問題が発生することが予見される時代に、上記のような投資計画にもコミットしているブラジルのEMBRAPAと組んで、海外農業投資、大規模農業開発のために税金を投入することの是非が強く問われる。
 放っておいても民間企業が進めるであろう事業の片棒を担ぐのではなく、小農民の権利と生活を守るためにこそ、私たちの税金が利用されるべきなのである。

開発と権利のための行動センター 青西

モザンビークに関するデータ抽出分はこちら

http://cade.cocolog-nifty.com/file/Mozambique-GRAIN.pdf

2012年2月19日日曜日

違法な農地収奪を煽るバイオ燃料プロジェクトと現状が見えない日本企業

フィリピン、イサベラ県におけるバイオ燃料プロジェクトが、地域内における土地紛争を激化させる要因となっていることは、以前も報告しました。

 今回FoEのサイトにまた新しい事実が報告されています。不明瞭な土地所有権に加えて、経済的・政治的な権力を有する者による違法な土地取引や土地登記によって、農民から土地が奪われ、サトウキビ農園に転換されつつあるのです。

【現地報告】農地収奪・作物転換の現状(続報)2012年2月13日http://www.foejapan.org/aid/land/isabela/20120213.html

 農地契約を請け負う現地企業であるEcofuel 社は「土地の所有権の法的状況が曖昧であったり、所有権に問題のある土地では契約しない」との見解を示し、契約後に問題が発覚した場合は契約を破棄することを示してきました(2011年6月、国際NGO調査団との会合で回答)が、現実には、その対応も不十分であることが報告されています。

 農地賃貸契約を結ぶ際に提出された権利書が「正当であるように思われた場合」には、あえてその権利書の内容について精査することはないと思われます。今回FoEのサイトにて報告されているように、農民が権力者による立ち退き命令に負けず、脅迫にも負けず、所有権の真偽を、自ら調べて告発しない限り、問題が存在することすら明らかにはならないのです。 

 Ecofuel社が、農民が泣き寝入りしている事例まで、わざわざ調べに回ってくれるわけもないのであり、Ecofuel社からの報告のみでは、現地親会社のGFII社も投資側の伊藤忠商事他も真実をつかむすべはないのです。

 このバイオ燃料プロジェクトに投資している日本企業/伊藤忠商事が、「現地企業が所有権に問題のある土地では契約しない」と語っていることを根拠に、違法な土地取引や土地収奪がないと判断する根拠は明らかに揺らいでいます。 
 地域内の土地紛争に関して調査する第三者機関を設置し、透明かつ迅速に調査できるような仕組みを作るような、地域内の政治的・経済的な紛争のただ中に身をさらすような深いコミットメントをしない限りは、このバイオ燃料プロジェクトの正統性を保証することは難しいものと思われます。

 開発と権利のための行動センター
 青西靖夫

本紹介

バイオマス本当の話し 持続可能な社会に向けて
第1章 バイオマスの基礎知識
第2章 バイオマスの持続可能性
第3章 日本でどう利用するか



農業と経済11月号
http://www.kyoto-gakujutsu.co.jp/showado/noukei/201111.html

特集●食料不安!? 価格高騰下の食料安全保障
第1部 世界と日本の食料安全保障政策
食料価格高騰下のG20農相会合で何が合意されたのか 北林寿信
・世界食料需給予測と国際的対応 小泉達治・古橋 元
・日本の食料安全保障――問われる食料自給力と国際的責任 鈴木宣弘・木下順子
・金融投機の問題点と商品市場規制の可能性 田中徹二
海外農地調達と途上国における食料安全保障 青西靖夫
・食料安全保障と食料主権――国際社会は何を問われているのか 久野秀二

第2部 食料の価格動向と国内への影響
・国内食品産業はどう対応したか―1次・2次加工食品価格の動向と食品産業の対応策 野島直人
・飼料穀物価格の動向と酪農・畜産業への影響 森 久綱
・品目ごとの価格動向と関連産業の対応
 【小麦】小麦の国際的価格動向とその影響 吉田行郷
 【大豆】高騰と高止りの繰り返しが予想される大豆の国際市場 薄井 寛
 【砂糖】砂糖の国際価格動向と国内への影響 成田喜一
 【コーヒー】コーヒー価格高騰と食料安全保障
  ――キリマンジャロの小農民による生産・市場リスクへの対応 辻村英之

2012年2月13日月曜日

アンゴラでサトウキビによるバイオ燃料プロジェクト。日本企業が建設を受注

 

  2012年2月7日付けの丸紅株式会社(以下「丸紅」)ニュースリリースによると「アンゴラ共和国・地質鉱山工業省より製糖・バイオエタノール工場新設請負契約を受注しました。」とのことである。
  http://www.marubeni.co.jp/news/2012/120207.html

 このプロジェクトはアンゴラ南部のクネネ州(Cunene province)にサトウキビを原料とする精糖・バイオエタノール生産拠点を確立する計画のようであり、丸紅は、設備の設計から試運転までを一括で受注したということである。

 アンゴラでは現在、サトウキビとバイオエタノール生産がブームとなっているようであり、北部においても、ブラジル企業と国営石油会社のジョイント・ベンチャーでのバイオエタノール生産が進められているようである。
   http://www.biocom-angola.com/

 クネネ州におけるプロジェクトの詳細は把握できていません。

 青西

2012年2月9日木曜日

転載:2/17 セミナー「熱帯林とパーム農園~プランテーションは持続可能になり得るか?」

イベント情報転載します。

■セミナー「熱帯林とパーム農園~プランテーションは持続可能になり得るか?」

http://www.mekongwatch.org/events/lecture01/20120217.html


アブラヤシの実からとれるパーム油は、現在世界で最も生産・消費されている油脂です。日本での消費量は過去30数年の間に5倍と急増し、食用油脂、加工食品を中心にさまざまな製品に使用されています。パーム油は、インドネシアとマレーシアで世界の85%が生産され、熱帯林地域がアブラヤシ農園開発のために転換されています。プランテーション向けの土地利用転換は、東南アジアにおける、熱帯林の最大の脅威となり、地域によっては地元住民のとの土地をめぐる軋轢も生じています。

パーム油の持続可能な利用と生物多様性との共存については、「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」での議論が続けられていますが、「持続可能なパーム油」とは何か、熱帯林保全との両立はどうすれば可能なのでしょうか。今年度の現地調査や日本企業へのアンケート、ヒアリング調査の結果を踏まえ、考えていきたいと思います。

■開催日:2012年2月17日 13:30~16:30

■会場:東京ウィメンズプラザ視聴覚室

■資料代:500円(主催団体会員は無料)

■内容(予定、敬称略)

1.総論「プランテーション開発と熱帯林」三柴淳一(FoE Japan)                                          2.「パーム油の基礎知識」桑野知章(幸書房)                                                                  3.スマトラ報告「小規模農園と土地紛争」中司喬之(熱帯林行動ネットワーク)                        4.サラワク報告「先住民族への影響」峠隆一(フリージャーナリスト)       5.サバ・RSPO報告「グッドプラクティスの追求」飯沼佐代子(地球・人間環境フォーラム)     6.アンケート調査結果報告「企業の認識と取り組み」根津亜矢子(地球・人間環境フォーラム)  7.まとめと提言 満田夏花(メコン・ウォッチ)

■主催:メコン・ウォッチ、国際環境NGO FoE Japan、地球・人間環境フォーラ ム、サラワク・キャンペーン委員会、熱帯林行動ネットワーク、レインフォレスト・アクションネットワーク日本代表部

◆申込み:下記フォームからお申込み下さい。https://pro.form-mailer.jp/fms/6ee1b20825955

◆問い合わせ先:特定非営利活動法人 メコン・ウォッチ担当:満田(みつた)Tel: 03-3832-5034  Fax.03-3832-5039※本セミナーは、地球環境基金の助成金により開催します。

2012年2月8日水曜日

フィリピン バイオエタノールプロジェクトを巡る問題

FoE Japan のサイトに日本の伊藤忠商事などが投資するイサベラ県のバイオエタノールプロジェクトを巡る問題が報告されています。

1)2月7日 【現地報告】未解決かつ拡大しつつある農地収奪・作物転換の現状

http://www.foejapan.org/aid/land/isabela/20120207.html

この報告では、先祖から耕作してきた土地であるにも関わらず、よそ者によって自分の土地が登記され、エタノールのためのサトウキビ生産の契約が結ばれてしまったケースを複数報告しています。

また土地紛争は、最初の事業計画地であるサン・マリアーノ町から、近郊へ拡大、輸出されつつある!とのことです。

伊藤忠などの投資を受け、現地で事業を進めるGFII社とECOFUEL社は、「土地の所有権の法的状況が曖昧であったり、所有権に問題のある土地では、契約しない」 との見解を示し、契約後に問題が発覚したケースに関しては、契約を破棄する方向性を示してきました(2011年6月の国際NGO現地調査団との会合における回答)にもかかわらず、こうした問題が続いていることを、この報告は指摘しています。

2)1月29日 工場建設労働者が正当な利益供与を訴えストライキ

http://www.foejapan.org/aid/land/isabela/20120129.html

この報告はバイオエタノール製造工場の建設労働者によるストライキと労働者の告発を報告している。

204名の労働者が、法的に定められた給与の未払い、不当解雇、不当な契約手続きの強要、正当な社会保障手続きなどを求めてストライキを実施したとのことです。

詳細はリンク先の報告を読んで頂ければと思います。

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 1)にあるような、土地が慣習的に利用されてきた地域で、今回のような開発事業が入ることによって、行政や権力に近いものが土地登記を都合よく操作して、土地を取得するというのは何世紀も続いてきた問題であり、それをまた繰り返すことは許されることではありません。

 また報告にあるように、日本企業側は対応を現地企業任せにするのではなく、自ら現地の状況を把握し、問題解決のために適切に対処することこそ、企業の社会的な責任の取り方であると考えます。法的な擁護を受けにくい農民や先住民族の権利を認め、尊重する方針を明確に示し、率先してその方策を提示し、実現することこそ社会的な責任を担っていくことを意味すると考えます。

 青西靖夫(開発と権利のための行動センター 理事)

2012年1月29日日曜日

難しそうだ!モザンビークにおける土地所有

 

 アフリカはまだまだ縁遠くて、あまり勉強していない。しかしJICAのプロジェクトの件もあるので、少しずつ勉強してみようと思う。

 土地所有関連で基本データはUSAIDの”Land Tenure and Property Rights”のサイトであろうか。http://usaidlandtenure.net/usaidltprproducts/country-profiles/mozambique/country-profile-mozambique#Mozambique_Land

 次に検索で出てきたのが”STUDY ON COMMUNITY LAND RIGHTS IN NIASSA PROVINCE, MOZAMBIQUE,” これはおもしろそうだ。しかし私は英語は得意ではない・・・まあゆっくり取り組んでみたい。

 そもそも、JICAによるモザンビークプロジェクトの「準備調査報告書」は「EMBRAPA の研究者チームは、ニアサ州およびナンプーラ州のナカラ回廊の北西には約640 万ha にもおよぶブラジルのセラード類似土壌の存在を確認した。これらセラード類似土壌は、上記1)の調査対象地域の約12%程度しか占めていない(残る88%は、本調査の対象地域とした国道13号線沿いの12 郡外に分布する)。」(1)と記した上で、この地域を「機械化農業に適しているとして」プロサバンナ・プロジェクトの対象地域に含めた(2)。つまり準備調査を行わなかった地域をプロジェクト地域にあえて含めたのである。
 調査がなされていないのであるから、ニアサ州のどこが明確に対象とされているか、どのような土地所有になっているとも、どのような人々が居住し、どのように土地を含めた自然資源を利用しているのか、報告書のどこを読んでもわかるはずがない。 

そのような中で出会ったのが前述の2009年に発行された報告書である。” Study on Community Land Rights  in Niassa Province, Mozambique"


 これはニアサ州における植林プランテーション開発のニーズから始まっているようであるが、まず導入部分で、ニアサ州について次のように説明している。
「この州は大規模な農業投資、非農業投資のポテンシャルを有するが、ほとんど無人のように見える空間は、数百キロ離れた多くのコミュニティに占有され、移動耕作の統合的なシステムを通じて広範な資源が利用され、流域部はより集約的に利用されている。これらの地域への投資は、想像されるよりも難しい」(P9)
 こうした現状把握の上で、土地法はできたけれども、問題はある、さてどうすべきか、というところからこの調査が行われているのである。スタートラインが全然異なる。

 本書の結論部分では、協議のあり方の問題などが指摘されているようであるが、読むことはできていない。これからじっくり取り組んでいきたい。

 一方、この前のJICAの回答は「同地域は国有地であり、モザンビーク政府が定めた土地利用制度に基づき、将来モザンビーク以外の国からの民間資本による農地利用の可能性があるものと考えます。」とのこと。コミュニティの利益を守っていこうという思いは残念ながらどこにも見えない。

 さて、JICAはブラジル政府の意向を受けて、調査もせずにプロジェクトのターゲット地域を拡大してしまったが、コミュニティの土地利用を巡る紛争が生じないように、土地収奪が行われないように適切な法の施行、協議の実施、必要な場合には協議に関する細則制定に関わる支援、実施機関強化などを行っていけるのであろうか。それだけでも非常に困難なプロジェクトであろう。

 しかし最低限そのような制度確立がなされなければ、いくら「村落開発」のモデルを構築しても、コミュニティの農地が奪われたらそれで終わりである。またそうした制度の確立まで、ブラジル政府の動きを押しとどめるだけの政治力を有するのであろうか?

(青西)

(1)モザンビーク国 日伯モザンビーク 三角協力による熱帯サバンナ農業開発協力プログラム準備調査最終報告書 8-2から
http://lvzopac.jica.go.jp/external/library?func=function.opacsch.toshoshozodsp&view=view.opacsch.newschdsp&shoshisbt=1&shoshino=0000252732
(2)付属資料    付属資料―2:Minutes of Meeting (2010 年3 月18 日)
(3)STUDY ON COMMUNITY LAND RIGHTS IN NIASSA PROVINCE, MOZAMBIQUE,
       Rapporter Institutionen för stad och land · nr 6/2009
http://sidaenvironmenthelpdesk.se/wordpress/wp-content/uploads/2011/06/Final_published_med_bild_p%C3%A5_omslag_Community_Land_Rights_Niassa_report_6_20091.pdf

2012年1月5日木曜日

JICA モザンビーク案件に関する質問書への回答

国際協力機構(JICA)よりの回答です。

回答から簡単に整理します。
-現時点での計画書は「日伯モザンビーク三角協力による熱帯サバンナ農業開発協力プログラム準備調査報告書」の別添資料にある三カ国MOUのみである。
MOUは了解覚書(りょうかいおぼえがき、Memorandum of Understandingの略)の意味で、現時点では英文の文書しか公開されていないということとなる。
-2012年2月より「ナカラ回廊農業開発マスタープラン策定プロジェクト」が開始され、その中で開発計画が定められる。また既に開始されている農業研究プロジェクト、農業開発マスタープラン策定事業を実施する中で、大中小農業の共存を通じた地域の農業開発の在り方を検討していく
-公的資金、民間資金による土地取得は、現時点では予定されていないが、対象地域は国有地であり、モザンビーク政府が定めた土地利用制度に基づき、将来モザンビーク以外の国からの民間資本による農地利用の可能性があるものと考える。


この回答から読み取れるものは、大規模農業の支援を含めたプロジェクトが実施され、またモザンビーク政府の方針のもと、対象地域である「国有地」における民間資金等による土地取得に基づく大規模農業が行われる可能性を含んだプロジェクトであるということである。

また、この「準備調査報告書」は、次のように記している。
「ブラジル側(EMBRAPA)は独自の調査結果をも踏まえて、ナカラ回廊地域の農業開発について、調査の最終段階で以下の提言をした。」
「『準備調査』は、国道13 号線沿いに、ナンプーラ州並びにニアサ州およびザンベジア州の一部を調査対象地域とした。しかしながら、この地域には、①大規模農業を展開する農地はない」
「EMBRAPA(注:ブラジルの研究機関) の研究者チームは、ニアサ州およびナンプーラ州のナカラ回廊の北西には約640 万ha にもおよぶブラジルのセラード類似土壌の存在を確認した。これらセラード類似土壌は、上記1)の調査対象地域の約12%程度しか占めていない
(残る88%は、本調査の対象地域とした国道13号線沿いの12 郡外に分布する)。

つまり、ブラジル側の「大規模農業を展開する農地」という意向のもと、JICAは「準備調査」段階では想定してもいなかった地域を、「急遽」プロジェクト地域に含めることとし、かつその土地は「国有地」であるので、民間資本による(大規模)土地取得が起こりえることを許容しつつ、その土地における大規模農業の展開をも支援していこうとしているのである。

どのような土地であるのか、当方が質問した「対象となる土地の現在の権利状況、利用状況」についても、「国有地である」との一面的かつ断片的な情報のみを有するだけであるにもかかわらず、プロジェクト対象地域に組み込み、大規模機械化農業を推進しようとしているのである。
アフリカにおいては、複雑な利用慣行と権利関係のもとにあることが多々指摘されている「国有地」であるにも関わらず、JICAは、モザンビーク政府の方針に従うことで、責任を回避できると考えているのであろうか。(文責 青西靖夫)

 

当案件についての関連情報はこちら

http://landgrab-japan.blogspot.com/2011/09/blog-post.html

以下、回答書

別途 pdf文書を添付する。pdf文書がオリジナルである。

http://cade.cocolog-nifty.com/ao/JICAmozambique.pdf


2011年12月27日
No! to Land Grab, Japan御中
独立行政法人国際協力機構アフリカ部

「日伯モザンビーク三角協力による熱帯サバンナ農業開発協力プログラム」に関する御質問への回答について

平素より当機構へのご支援を頂きまして誠に有難うございます。さて、2011年12月10日付でお寄せいただいたご質問に対し、別紙のとおり回答いたしますところ、ご確認頂ければ幸いです。
以上

(別紙)
2011.12.27
JICAアフリカ部

No!toLandGrab,Japanからの質問への回答
1. 最終合意された計画書について

公開されているサイトなどでは最終調査報告書を含め経過的な資料については提供されていますが、成案となった計画書を提供いただくことは可能でしょうか。

(回答)現時点で計画書と呼びうるものは、「日伯モザンビーク三角協力による熱帯サバンナ農業開発協力プログラム準備調査報告書」別添資料の三カ国MOUのみです。2012年に開始するナカラ回廊農業開発マスタープラン策定プロジェクトの結果を受け、開発計画が策定されていくことになります。

2. 計画の進捗状況と計画の終了時期について

(1) 本計画は概ね2010年~2014年期の第1段階、2015年から始まる第2段階がありますが、現在の進捗状況を概括的に教えていただけますか。

(回答)2011年5月より「ナカラ回廊農業研究・技術移転能力向上プロジェクト」を実施中です。また、2012年2月より「ナカラ回廊農業開発マスタープラン策定プロジェクト」が開始予定となっております。第2段階に関しては現時点では具体的な構想は議論されておりません。

(2) また、公開された資料では第2段階の終了時期が曖昧ですが計画の終了時期をいつに設定されていますか。

(回答)現時点では特に明確な終了時期を想定しておりません。事業の進捗状況等を見極めながら三カ国で決定していく事項と考えております。

3. 投資に際しての地域住民・農業者、環境への配慮などについて

この点については、日本政府の「行動原則」においても掲げられています。また、モザンビークにおける多くの事例はこの点での不充分さが海外報道でも指摘されています。
(1) どのように実施されたのでしょうか、あるいはされる予定でしょうか。

(回答)現時点では当機構の事業に関連する投資は行われておりません。

(2) 地域利害関係者への配慮に関して、手法・同一地域での開催頻度・関係者の参集状況・反応について教えていただけますか。

(回答)これまで「ナカラ回廊農業研究・技術移転能力向上プロジェクト」に関連する調査実施時には、リシンガ(ニアッサ州)、ナンプラ(ナンプラ州)周辺において社会調査を実施し、また地域住民団体代表者の参加を得たワークショップ(1回、約30名が参加)を行い、三カ国協働で事業計画を作成しております。これら一連の活動はモザンビーク政府関係者からは好意的に受け入れられております。

環境配慮について、その実効性を担保する法的・行政的な措置などはあるのでしょうか。また適切なものをお考えでしょうか。その理由・根拠は如何なるものでしょうか。

(回答)JICAが定めた環境配慮ガイドラインのみならず、モザンビーク国環境活動調整省が環境法に基づき環境影響評価を行います。

4. 「地域農業開発計画」と「商業的規模の農地への投資」について

2010年3月の調査報告書によれば、本計画は「環境保全に配慮した持続可能な農業開発の実現」を目指したものと考えますが、その中に①付加価値の高い輸出志向型を含むアグロインダストリーを起点とした地域農業開発計画の推進、②640万haの商業的規模での農地への投資と大規模農業生産という性格の異なる2つの計画が含まれていると理解します。

(回答)既述した農業研究プロジェクト、農業開発マスタープラン策定事業を実施する中で、大中小農業の共存を通じた地域の農業開発の在り方を検討していくこととしており、その結果はモザンビーク政府により活用されることとなります。

  (2) 前者①の計画と②の計画の対象地域の重なりはあるのでしょうか。

(回答)①②の共存を目指しており、対象地域に重なりが出てくる可能性はございます。
(3) 対象地域の重なりの有無に限らず、既存の耕地が570万haほどであるのに対してブラジル型の大規模農業投資の対象が640万haに及ぶことは、当初の計画の狙いである中小規模農家を対象とする地域農業開発計画をも頓挫させる懸念を持たざるを得ません。また大規模企業的経営と農民的経営の競合により自給的農業、家族経営農業の脱落が必至と考えます。

この点について如何お考えでしょうか。
(回答)本事業は大中小規模農業の共存を目指すものであり、中小規模農家を対象とする地域農業開発計画を頓挫させないための開発モデルを策定することが事業の目的の一つです。今後もこのモデルづくりに資する事業をモザンビーク政府と協働で実施してまいります。

5. 本計画においてモザンビーク以外の国からの公的あるいは民間資本による農地取得(利用あるいは占有)は予定されていますか?
(1) 権利取得が有り得る場合、対象となる土地の現在の権利状況、利用状況はどのようになっているでしょうか?

(回答)現時点では予定されておりません。同地域は国有地であり、モザンビーク政府が定めた土地利用制度に基づき、将来モザンビーク以外の国からの民間資本による農地利用の可能性があるものと考えます。

最後に本事業の計画及び当機構の取組イメージに関しましては、JICA-NET教材「アフリカ熱帯サバンナ農業開発協力事業~ブラジルの成功事例をアフリカへ~(URL:http://jica-net.jica.go.jp/dspace/handle/10410/705)」にて紹介していますので、貴協会の会員の皆様にも広くご参照頂ければ幸いです。