農林水産省と外務省への質問状
2010年11月24日に下記の文面の質問状を外務大臣、農林水産大臣および外務省、農林水産省の担当部局に送付した。
その後12月27日に外務省の担当者より、電話にて外務省からの回答を聞くことができたが、農林水産省からは返答はない。
外務省としては、海外の農業投資を重要と考え 情報収集を進め、行動原則と整合性を確認していくとのことであった。
しかし情報を収集するのは、これからであり、海外での農業投資に先立って情報を収集し、整合性を確認するというのとは大きく異なっている。
つまり、行動原則との整合性の確認は適切には行い得ていないと理解できる。
また1)の事例においては、食料生産のための農業投資ではないということで、行動原則との整合性を確認する対象ではないという見解であった。つまり、食料生産や地域住民の自給基盤に大きな影響を与えることが想定されるバイオ燃料生産等の投資に関しては、抜け落ちていくということになる。
更に3)の事例における現地新聞で報道されたケースに関しては、新聞報道以上の情報を有しているということはないようであり、投資に先んじて情報を得る仕組みは存在していないと理解できるであろう。
また2)の事例においても、1月12日までの時点において、外務省、農林水産省ともWEB上で公開している情報は存在せず、透明性の確保、情報公開について全く不十分であろう。
このように海外投資指針を策定しても、海外農業投資を適切に監視していくことが非常に困難であることは明白であり、また市民社会が適切に情報にアクセスすることもできない。このような状況の中で、適切な海外農業投資が実施できるという保証は存在していない。
市民社会による適切な情報収集とそれに基づく企業、行政への働きかけが不可欠であろう。
青西
以下質問状
2010年11月24日
外務大臣 前原誠司殿
農林水産大臣 鹿野道彦殿
外務省 経済安全保障課
農林水産省 食料安全保障課
農林水産省 国際協力課
質問書
日本国政府は2009年(平成21年)8月20日に外務省及び農林水産省の共催によって第5回「食料安全保障のための海外投資促進に関する会議」を開催し、「食料安全保障のための海外投資促進に関する指針」を取りまとめました。
この中で、日本国の海外農業投資においては、「被投資国における農業の持続的可能性を確保」することが重要であることを認め、政府及び関係機関は、「本指針に基づいて海外農業投資の促進策を講ずるに当たり、以下の行動原則との整合性を確認する」ことを定めております。
つきましては、この「指針」に関連して、次の事例において、行動原則の①~⑥に沿って、日本政府がどのような情報を収集され、どのように整合性を確認されたのか、また収集された情報及びその検討結果についてどのように開示されているのかを公表いただきたく、お願い申し上げます。
事例1)フィリピンにおけるバイオエタノール製造・発電事業について
「伊藤忠商事株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:岡藤正広、以下「伊藤忠商事」)および日揮株式会社(横浜本社:横浜市西区、代表取締役会長兼 CEO:竹内敬介、以下「日揮」)は、フィリピン事業パートナーと共同で、フィリピン最大級のバイオエタノール製造、および電力供給事業に参画いたします。事業の概要は以下の通りです。」
(以上下記サイトより転載)
http://www.itochu.co.jp/ja/news/2010/100408.html
事例2)双日、アルゼンチンで大豆など農業事業を開始
~農業経営ノウハウを蓄積し、ブラジルなどへ拡大。食料資源の安定供給に貢献~
双日株式会社は、南米アルゼンチンにおいて大豆などの農業生産を行う事業会社 双日ブエナスティエラス・デル・スール社(Sojitz Buenas Tierras del Sur S.A.、以下BT社)を双日グループの100%出資で設立し、アルゼンチンの大手農業事業運営会社であるカセナベ社(Cazenave y Asociados S.A.、本社:ブエノスアイレス市)と協力し、2010年穀物年度から大豆等の穀物の生産・販売する農業事業を開始します。日本の 大手商社が海外で直接事業法人を設立し、農業事業を行うことは今回が初めてです。
(下記サイトより転載)
http://www.sojitz.com/jp/news/releases/20101117.html
事例3)2010年11月9日付けで掲載されたフィリピンにおける投資計画
Japan firms eye farm investments(Bussines World 2010/11/9)
A NUMBER of Japanese firms plan to invest in a plantation in the Philippines, with the produce to be exported to Japan, the chief of the Agriculture department said yesterday.
"Some Japanese firms are interested in investing in a crop that will be used for their consumption," Agriculture Secretary Proceso J. Alcala told reporters.
Mr. Alcala said the department is currently in advanced talks with the interested Japanese firms.
He declined to name the firms nor the crop and investment involved, saying only that the companies do not want any genetically modified variety of the crop.
http://www.bworld.com.ph/main/content.php?id=20928
日本国政府はこの「指針」以外にも、世界銀行などとともに「責任ある農業投資のための行動原則」の策定にも取り組んでいます。この中でも「指針」と同様に、土地と資源に対する権利の尊重、食料安全保障、透明性の確保や、協議と参加、社会的持続性、環境持続性などが取り上げられています。
このような「指針」や「行動原則」が実効性を持つためには、企業に対してだけではなく、市民社会に幅広く情報が共有されることが不可欠だと考えます。
つきましては、上記の3つの事例に関して、「指針」の適用及び「行動原則」の試験的・自発的適用の例として、積極的な情報開示をお願いするものであります。
青西靖夫 (開発と権利のための行動センター 代表)
松平尚也 (AMネット 代表理事)
食料安全保障のための海外投資促進に関する指針 より一部抜粋
http://www.mofa.go.jp/ICSFiles/afieldfile/2009/08/20/G0858_J.pdf
4 我が国の行動原則及びこれに関する国際的取組等
(1)行動原則
海外農業投資は、被投資国における農業の持続可能性を確保しつつ、投資側・被投資側の双方が裨益する形で実施することが重要である。この観点から、政府及び関係機関は、本指針に基づいて海外農業投資の促進策を講ずるに当たり、以下の行動原則との整合性を確認する。同時に、被投資国側にも投資環境の整備(収用の原則禁止や輸出規制の抑制等)や投資関連情報の提供などを求めていく。
① 被投資国の農業の持続可能性の確保
(例:投資側は、被投資国において、持続可能な農業生産を行う。)
② 透明性の確保
(例:投資側は、投資内容について、契約締結時等において、プレスリリース等により、開示する。)
③ 被投資国における法令の遵守
(例:投資側は、土地取引、契約等被投資国における投資活動において、被投資国の法令を遵守する。)
④ 被投資国の農業者や地域住民への適正な配慮
(例:(イ)投資側は、投資対象の農地の農民及び所有者に対し、その農地の取得及びリースに関し、適切な対価を提供する。(ロ)投資側は、現地における雇用について、適切な労働条件の下、農民等従業員の雇用を行う。)
⑤ 被投資国の環境への適切な配慮
(例:投資側は、投資に当たって、土壌荒廃、水源の枯渇等、被投資国の環境に著しい悪影響を与えてはならない。)
⑥ 被投資国における食料事情への配慮
(例:(イ)投資側は、被投資国における食料事情に悪影響を与えないように配慮する。(ロ)投資側は、被投資国の主食作物を栽培している農地を他の作物に転換することにより主食作物の生産量を著しく減少させるような投資は行ってはならない。)
2010年11月24日に下記の文面の質問状を外務大臣、農林水産大臣および外務省、農林水産省の担当部局に送付した。
その後12月27日に外務省の担当者より、電話にて外務省からの回答を聞くことができたが、農林水産省からは返答はない。
外務省としては、海外の農業投資を重要と考え 情報収集を進め、行動原則と整合性を確認していくとのことであった。
しかし情報を収集するのは、これからであり、海外での農業投資に先立って情報を収集し、整合性を確認するというのとは大きく異なっている。
つまり、行動原則との整合性の確認は適切には行い得ていないと理解できる。
また1)の事例においては、食料生産のための農業投資ではないということで、行動原則との整合性を確認する対象ではないという見解であった。つまり、食料生産や地域住民の自給基盤に大きな影響を与えることが想定されるバイオ燃料生産等の投資に関しては、抜け落ちていくということになる。
更に3)の事例における現地新聞で報道されたケースに関しては、新聞報道以上の情報を有しているということはないようであり、投資に先んじて情報を得る仕組みは存在していないと理解できるであろう。
また2)の事例においても、1月12日までの時点において、外務省、農林水産省ともWEB上で公開している情報は存在せず、透明性の確保、情報公開について全く不十分であろう。
このように海外投資指針を策定しても、海外農業投資を適切に監視していくことが非常に困難であることは明白であり、また市民社会が適切に情報にアクセスすることもできない。このような状況の中で、適切な海外農業投資が実施できるという保証は存在していない。
市民社会による適切な情報収集とそれに基づく企業、行政への働きかけが不可欠であろう。
青西
以下質問状
2010年11月24日
外務大臣 前原誠司殿
農林水産大臣 鹿野道彦殿
外務省 経済安全保障課
農林水産省 食料安全保障課
農林水産省 国際協力課
質問書
日本国政府は2009年(平成21年)8月20日に外務省及び農林水産省の共催によって第5回「食料安全保障のための海外投資促進に関する会議」を開催し、「食料安全保障のための海外投資促進に関する指針」を取りまとめました。
この中で、日本国の海外農業投資においては、「被投資国における農業の持続的可能性を確保」することが重要であることを認め、政府及び関係機関は、「本指針に基づいて海外農業投資の促進策を講ずるに当たり、以下の行動原則との整合性を確認する」ことを定めております。
つきましては、この「指針」に関連して、次の事例において、行動原則の①~⑥に沿って、日本政府がどのような情報を収集され、どのように整合性を確認されたのか、また収集された情報及びその検討結果についてどのように開示されているのかを公表いただきたく、お願い申し上げます。
事例1)フィリピンにおけるバイオエタノール製造・発電事業について
「伊藤忠商事株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:岡藤正広、以下「伊藤忠商事」)および日揮株式会社(横浜本社:横浜市西区、代表取締役会長兼 CEO:竹内敬介、以下「日揮」)は、フィリピン事業パートナーと共同で、フィリピン最大級のバイオエタノール製造、および電力供給事業に参画いたします。事業の概要は以下の通りです。」
(以上下記サイトより転載)
http://www.itochu.co.jp/ja/news/2010/100408.html
事例2)双日、アルゼンチンで大豆など農業事業を開始
~農業経営ノウハウを蓄積し、ブラジルなどへ拡大。食料資源の安定供給に貢献~
双日株式会社は、南米アルゼンチンにおいて大豆などの農業生産を行う事業会社 双日ブエナスティエラス・デル・スール社(Sojitz Buenas Tierras del Sur S.A.、以下BT社)を双日グループの100%出資で設立し、アルゼンチンの大手農業事業運営会社であるカセナベ社(Cazenave y Asociados S.A.、本社:ブエノスアイレス市)と協力し、2010年穀物年度から大豆等の穀物の生産・販売する農業事業を開始します。日本の 大手商社が海外で直接事業法人を設立し、農業事業を行うことは今回が初めてです。
(下記サイトより転載)
http://www.sojitz.com/jp/news/releases/20101117.html
事例3)2010年11月9日付けで掲載されたフィリピンにおける投資計画
Japan firms eye farm investments(Bussines World 2010/11/9)
A NUMBER of Japanese firms plan to invest in a plantation in the Philippines, with the produce to be exported to Japan, the chief of the Agriculture department said yesterday.
"Some Japanese firms are interested in investing in a crop that will be used for their consumption," Agriculture Secretary Proceso J. Alcala told reporters.
Mr. Alcala said the department is currently in advanced talks with the interested Japanese firms.
He declined to name the firms nor the crop and investment involved, saying only that the companies do not want any genetically modified variety of the crop.
http://www.bworld.com.ph/main/content.php?id=20928
日本国政府はこの「指針」以外にも、世界銀行などとともに「責任ある農業投資のための行動原則」の策定にも取り組んでいます。この中でも「指針」と同様に、土地と資源に対する権利の尊重、食料安全保障、透明性の確保や、協議と参加、社会的持続性、環境持続性などが取り上げられています。
このような「指針」や「行動原則」が実効性を持つためには、企業に対してだけではなく、市民社会に幅広く情報が共有されることが不可欠だと考えます。
つきましては、上記の3つの事例に関して、「指針」の適用及び「行動原則」の試験的・自発的適用の例として、積極的な情報開示をお願いするものであります。
青西靖夫 (開発と権利のための行動センター 代表)
松平尚也 (AMネット 代表理事)
食料安全保障のための海外投資促進に関する指針 より一部抜粋
http://www.mofa.go.jp/ICSFiles/afieldfile/2009/08/20/G0858_J.pdf
4 我が国の行動原則及びこれに関する国際的取組等
(1)行動原則
海外農業投資は、被投資国における農業の持続可能性を確保しつつ、投資側・被投資側の双方が裨益する形で実施することが重要である。この観点から、政府及び関係機関は、本指針に基づいて海外農業投資の促進策を講ずるに当たり、以下の行動原則との整合性を確認する。同時に、被投資国側にも投資環境の整備(収用の原則禁止や輸出規制の抑制等)や投資関連情報の提供などを求めていく。
① 被投資国の農業の持続可能性の確保
(例:投資側は、被投資国において、持続可能な農業生産を行う。)
② 透明性の確保
(例:投資側は、投資内容について、契約締結時等において、プレスリリース等により、開示する。)
③ 被投資国における法令の遵守
(例:投資側は、土地取引、契約等被投資国における投資活動において、被投資国の法令を遵守する。)
④ 被投資国の農業者や地域住民への適正な配慮
(例:(イ)投資側は、投資対象の農地の農民及び所有者に対し、その農地の取得及びリースに関し、適切な対価を提供する。(ロ)投資側は、現地における雇用について、適切な労働条件の下、農民等従業員の雇用を行う。)
⑤ 被投資国の環境への適切な配慮
(例:投資側は、投資に当たって、土壌荒廃、水源の枯渇等、被投資国の環境に著しい悪影響を与えてはならない。)
⑥ 被投資国における食料事情への配慮
(例:(イ)投資側は、被投資国における食料事情に悪影響を与えないように配慮する。(ロ)投資側は、被投資国の主食作物を栽培している農地を他の作物に転換することにより主食作物の生産量を著しく減少させるような投資は行ってはならない。)
先ほどはMLのほうに質問してすみませんでした。
返信削除これに関する農水省の回答が下記のでしたね。最初は記事で次が回答書の画像ですね。
http://bit.ly/ety0Zz
http://bit.ly/e5wbWo