2011年2月12日土曜日

アルゼンチンでの農園労働者搾取と日本商社

日本の豊田通商と昨年11月に包括提携を結んだアルゼンチンの穀物商社ニデラの農場において、未成年、児童を含めた農村労働者を劣悪な条件で働かせていたとして、アルゼンチン当局が強制捜査を行い、労働者を解放、現在告発に向けて調査を続けている。

アルゼンチンのパヒナ12紙に2011年1月2日他に掲載された記事は次のように伝えている。

脱税の疑いでも調査されている穀物輸出業者であるニデラ社のエル・アルガロボ農園において、北部より連れて来られた子どもを含む労働者が奴隷状態で搾取されていた。労働者はコンテナでぎゅうぎゅう詰めで寝起こし、クリスマスも含め1日10時間の労働に従事していた。明かりもなく、飲料水はバケツで与えられるだけであった。農園の敷地から出ることは許されず、労賃も知らされていなかった。賃金は非公式な契約の最終日に支払われるが、消費したもののは法外な価格で天引きされた。中には社会開発省の記名がなされた非売品のパスタも含まれていた。強制調査までの3週間で支払われたのは、菓子パンを買うための12ペソ(240円ほど)だけであった。

宿舎には子どもと未成年30人ほどを含めて130人が滞在していたが、司法当局はサンペドロ周辺に1000近くのこうした宿舎があるのだろうと推測しているという。

このような労働者はトウモロコシの収穫期に合わせて、北部のサンティアゴ・エステーロより、契約仲介人を通して連れてこられ、直接農園に連れてこられた労働者は自分たちがどこにいるかすらわからない状況であったという。(3/8追記:F1種子生産のための雄花除去作業のようである)

この農園と契約していたニデラはアルゼンチン随一の穀物輸出商社であり、アルゼンチンの農産品輸出の10%を占めており、大豆やひまわりの種子市場でもトップを走っている。またニデラは労働者の搾取だけではなく、脱税でも調査を受けている。

このような劣悪な条件での労働者雇用はニデラだけではなく、デュポン社、Satus Ager S.A. y Suthern Seeds Production社などでも摘発されており、既にデュポン社に対しては、奴隷的な労働者搾取に対して、経済特権剥奪などの処分が下されている。

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ニデラ社は一連の報道を否定しているが、アルゼンチン政府の担当機関の調査によるものであり、違法な条件での雇用が行われていたことは間違いないであろう。
アルゼンチンのニデラ社への投資、包括提携は、日本政府の行動指針に照らし合わせ、下記の二点で問題を抱えている。この点について、豊田通商と担当省庁に再度質問状を送付したいと考える。
また今回のアルゼンチンにおける報道について、農林水産省、外務省また豊田通商のサイトにおいては一言も言及されていない。このような状況で、市民社会側の労力を持って、行動指針をモニタリングしていくことは正当なあり方とは言えないであろう。どのようにモニタリングの仕組みを作るのかも同時に検討されなければならない。

開発と権利のための行動センター
青西

③ 被投資国における法令の遵守
(例:投資側は、土地取引、契約等被投資国における投資活動において、被投資国の法令を遵守する。)
④ 被投資国の農業者や地域住民への適正な配慮
(例:(イ)投資側は、投資対象の農地の農民及び所有者に対し、その農地の取得及びリースに関し、適切な対価を提供する。(ロ)投資側は、現地における雇用について、適切な労働条件の下、農民等従業員の雇用を行う。)

参考資料
以下の記事をもとに、整理したものである。
Una vida nueva
http://www.pagina12.com.ar/diario/elpais/1-159715-2011-01-02.html
Tecnología agropecuaria
http://www.pagina12.com.ar/diario/elpais/1-160113-2011-01-09.html
Trabajo rural digno o esclavo: un debate ideológico
http://www.pagina12.com.ar/diario/elpais/1-160137-2011-01-09.html
FUERTES SANCIONES A DUPONT POR SOMETER A 140 TRABAJADORES
Un corte a los beneficios
http://www.pagina12.com.ar/diario/sociedad/3-161602-2011-02-02.html
NIDERA S.A., Argentina informs
http://www.nidera.com/default.aspx?partId=33&CID=434
南米に強みを持つ穀物メジャーと包括提携を締結
~ 食料資源確保のため供給ソースの多角化へ ~
http://www.toyota-tsusho.com/press/2010/11/20101119-3580.html

中国:土地を失った農民の生活と雇用

資料紹介
 このサイト作成のネットワークに参加されている方からの情報の転載です。
中国の労働問題に取り組む香港の団体「中国労工通信」(China Labour Bulletin)のサイトに土地を失った農民(失地農民)の生活と雇用についてのレポートが掲載されています。昨年10月ごろに発表したもののよ
うです。

成長著しい中国の都市部の工場などで働く若い労働者の多くは農村出身です。農村の問題が労働者の問題に直結しているという問題意識から書かれたレポートのようです。内容は以下の通りです。
 + + + + +
『食糧主権と尊厳ある生活:中国の失地農民の生活と雇用に関する報告』
目次
1、中国の農地占用のデータと失地農民の定義
2、失地農民の生活状況
 ・失地農民に対する政府の安定化対策
 ・失地農民の生活状況
3、失地農民の雇用状況
 ・失地農民の就業を阻害するもの
 ・政府の就業政策の不足
結論
 + + + + +
PDFファイル(中国語)
http://www.clb.org.hk/chi/files/CLB-2011-01-11-Report%20on%20the%20Right%20to%20Food.pdf
70年代末には2.5億人の貧困人口をか抱えていた中国農村は、2009年には3600万人にまでその数を減らすことができた。同時期に、農地の家族請負制が導入され、農民は土地の使用権を持つことになったが、90年代からの都市化のなかで、多くの農民が都市使用権を手放し、失地農民になり、厳しい状況に置かれている、という内容です。

土地を失う経過なども書かれてあるのではないか、と思います。土地を失った農民たちは賃金労働者になっています。食糧主権がどこでからんでくるのかですが、食糧にアクセスする権利として土地を持っていた農民が、それを手放して、賃労働で得たお金で食糧にアクセスする、という状況になっており、食糧主権と賃労働の関係から、失地農民の状況をレポートするという内容です。

「中国労工通信」(China Labour Bulletin)は英語のサイトもあるので、もしかしたらどこかに英語でレポートも掲載されているかもしれません。
英語サイト http://www.clb.org.hk/en/