2011年5月31日火曜日

対外農業投資=農地収奪に関する勉強会、関西サテライト開催のご案内

対外農業投資=農地収奪に関する勉強会の案内
関西サテライト開催

(1)勉強会テーマ:<対外農業投資の動向とその影響>
   関西会場では、Ustream中継を一緒に見て討議し、質問をtwitterなどで東京側に送りたいと思います。
   東京での勉強家については以下をご覧ください。
   http://landgrab-japan.blogspot.com/2011/05/6.html

(2)日時:6月3日(金曜日) 18時〜20時半
(3)場所:ほんやら洞 2階
 http://honyarado-kyoto.cool.ne.jp/
(4)参加者はワンオーダーお願いします。
(5)講師:茅野信行氏
  1949年生まれ、ユニパック・グレ-ン代表取締役、國學院大學経済学部教授。
 穀物メジャ-及び上記会社において穀物・油糧種子の国際取引に長年従事。
 近著:「アメリカの穀物輸出と穀物メジャ-の成長」(2002年)、
    「食糧格差社会・始まった争奪戦と爆食する世界」(2009年)
(6)主な内容(仮):
  穀物を中心とする食料問題の構造
  農地・流通インフラへの投資動向・主要な投資主体の動向
  対外農業投資のもたらす食料の国際需給・流通、被投資国及び農民・農業  
  などへの影響
(7)主催:(仮)対外農業投資・農地収奪を考える会
   関西連絡先:春日匠 contact@talktank.net
関連サイト:http://landgrab-japan.blogspot.com/

 Ustream放送は以下のURLにアクセスすればどなたでもご覧になれます。
 http://www.ustream.tv/channel/nogyo-tv

2011年5月26日木曜日

ブラジル マルチグレイン社に関する三井物産社よりの回答

このブログでお伝えした「三井物産の子会社であるマルチグレイン社が先住民族の土地略奪に加担 」という記事に関連して、5月10日付けで三井物産株式会社に対して質問書を送付。

それに対して、5月23日付けで昨日、三井物産社から回答を受け取った。

以下が簡単な整理であり、原文は次のサイトにpdfでアップした。http://cade.cocolog-nifty.com/file/20110523Mitui.pdf

 

・事実確認の結果、指摘されたような違法な農園からの買い付けはなかった
・サプライチェーンにおける企業の社会的責任の重要性は認識している
・IBAMAのデータベースで当該地域と重複がないことを確認し、買い付けを
行っている。疑わしい事実が判明した際には、一切取引を行わない。

・Reporter Brasilで指摘された事件について
 -IBAMAの当初情報で問題なしとされていた農家が、違法地域に農場を持
っていることを後日IBAMAが指摘した。
 -マルチグレイン社はIBAMAに買い付け契約時にはそのような情報が無か
ったことをIBAMAに対して明らかにし、
 -違反の事実があれば引き取れないとして、引き取りを拒否
 -結果として、マルチグレイン社は違法に栽培された当該大豆の引き取り
は一切行っていない。

 

<以下、青西 コメント>

・今後とも現地の情報を把握し、上記回答に矛盾する事実が判明した場合には、適切な対応を要求すること

・今後とも、先住民族の土地権などが脅かされないように注視していくこと

・マルチグレイン社が関与していなかったとしても、先住民族の土地を脅かし、森林を破壊して広がっていく大豆生産、日本が輸入しているかもしれない大豆に関して、日本社会にも情報を積極的に伝えていくこと

などが必要だと考えている。

 


 

<以下質問書>

2011年5月10日

 

三井物産株式会社
取締役社長 飯島彰己殿
                                        質問書
 
 先般、ブラジルにおいて、マルチグレイン社が、先住民族の土地略奪に関与していると告発する報告がなされております。[1] 報告によると、政府によって定められた先住民族のテリトリーを違法に占拠して大豆耕作を行っている農場の中に、マルチグレイン社と契約している農園があるとのことです。またこれらの農場は環境法についても違反しているとのことです。
 このマルチグレイン社につきましては、三井物産株式会社の連結子会社であるとのニュースリリースも読ませて頂いております。[2]

  他方、日本国政府は2009年(平成21年)8月20日に外務省及び農林水産省の共催によって第5回「食料安全保障のための海外投資促進に関する会議」を開催し、「食料安全保障のための海外投資促進に関する指針」を取りまとめております。
 この中で、日本国の海外農業投資においては、「被投資国における農業の持続的可能性を確保」することが重要であることを認め、政府及び関係機関は、「本指針に基づいて海外農業投資の促進策を講ずるに当たり、以下の行動原則との整合性を確認する」ことを定めております。[3]
 
 今回のマルチグレイン社に関する報道を読みますと、マルチグレイン社はこの「指針」の①、③、④、⑤などに抵触しているものと考えられます。

 つきましては、三井物産株式会社としての、下記の項目についての現状の把握、及び今後の対応についてお聞かせ頂きたくお願い申し上げます。
 
1)マルチグレイン社が、生産物を購入している農園、もしくは生産に関わる契約を結んでいる、あるいは直接生産を行っている農園と、Terra Indígena Maraiwatsede他の先住民族テリトリーが重複しているケースが存在しているのかどうか。
2)重複している場合にはどのような法的な位置づけとなっているのか。
3)マルチグレイン社が、購入、もしくは生産に関する契約、あるいは生産を行っている農園において、IBAMA(ブラジル環境・再生可能天然資源院)からの指導、差し止め、差し押さえ等の行政措置の対象となったケースは存在しているのかどうか。
4)上記のようなケースが存在した場合には、三井物産株式会社としてどのような対処を行ったのか。

青西靖夫(開発と権利のための行動センター 代表)
大野和興(日刊ベリタ編集長)
近藤康男(アジア農民交流センター)
松平尚也(アジア農民交流センター)


[1] 三井物産の子会社であるマルチ・グレイン社が先住民族の土地略奪に加担
http://cade.cocolog-nifty.com/ao/2011/03/post-9179.html
元の記事は次のサイトなど
Soja pirata na Terra Indígena Maraiwatsede
http://pib.socioambiental.org/pt/noticias?id=99244
http://www.revistasina.com.br/portal/questao-indigena/item/117-soja-pirata-na-terra-ind%C3%ADgena-maraiwatsede

[2]ブラジル農業生産・穀物物流事業マルチグレイン社株式の追加取得基本合意(子会社化)
http://www.mitsui.com/jp/ja/release/2011/1193266_1822.html

[3] 食料安全保障のための海外投資促進に関する指針 より一部抜粋
http://www.mofa.go.jp/ICSFiles/afieldfile/2009/08/20/G0858_J.pdf

4 我が国の行動原則及びこれに関する国際的取組等
(1)行動原則
海外農業投資は、被投資国における農業の持続可能性を確保しつつ、投資側・被投資側の双方が裨益する形で実施することが重要である。この観点から、政府及び関係機関は、本指針に基づいて海外農業投資の促進策を講ずるに当たり、以下の行動原則との整合性を確認する。同時に、被投資国側にも投資環境の整備(収用の原則禁止や輸出規制の抑制等)や投資関連情報の提供などを求めていく。
① 被投資国の農業の持続可能性の確保
(例:投資側は、被投資国において、持続可能な農業生産を行う。)
② 透明性の確保
(例:投資側は、投資内容について、契約締結時等において、プレスリリース等により、開示する。)
③ 被投資国における法令の遵守
(例:投資側は、土地取引、契約等被投資国における投資活動において、被投資国の法令を遵守する。)
④ 被投資国の農業者や地域住民への適正な配慮
(例:(イ)投資側は、投資対象の農地の農民及び所有者に対し、その農地の取得及びリースに関し、適切な対価を提供する。(ロ)投資側は、現地における雇用について、適切な労働条件の下、農民等従業員の雇用を行う。)
⑤ 被投資国の環境への適切な配慮
(例:投資側は、投資に当たって、土壌荒廃、水源の枯渇等、被投資国の環境に著しい悪影響を与えてはならない。)
⑥ 被投資国における食料事情への配慮
(例:(イ)投資側は、被投資国における食料事情に悪影響を与えないように配慮する。(ロ)投資側は、被投資国の主食作物を栽培している農地を他の作物に転換することにより主食作物の生産量を著しく減少させるような投資は行ってはならない。)

2011年5月20日金曜日

6月3日 対外農業投資=農地収奪に関する勉強会の案内

対外農業投資=農地収奪に関する勉強会の案内

(1)勉強会テーマ:<対外農業投資の動向とその影響>

(2)日時:6月3日(金曜日) 18時~20時半

(3)場所:お茶の水 総評会館501会議室

http://www.sohyokaikan.or.jp/access/index.html

(4)参加費:500円

(5)講師:茅野信行氏

1949年生まれ、ユニパック・グレ-ン代表取締役、國學院大學経済学部教授。

 穀物メジャ-及び上記会社において穀物・油糧種子の国際取引に長年従事。

 近著:「アメリカの穀物輸出と穀物メジャ-の成長」(2002年)、

    「食糧格差社会・始まった争奪戦と爆食する世界」(2009年)

(6)主な内容(仮):

  穀物を中心とする食料問題の構造

  農地・流通インフラへの投資動向・主要な投資主体の動向

  対外農業投資のもたらす食料の国際需給・流通、被投資国及び農民・農業  

  などへの影響

(7)主催:(仮)対外農業投資・農地収奪を考える会

 

資料準備の都合上、事前に連絡をいただけると助かります。

  連絡先:近藤康男  mkykondo@ybb.ne.jp

              青西 靖夫 cade-la@nifty.com

 農地は誰のものか ブログ:http://landgrab-japan.blogspot.com/

2011年5月12日木曜日

IAASTD 報告書(2008)の概要

報告書自体は2008年のものですが、この報告書の内容はたびたび引用されています。

この記事は2008年5月に「オ-ガニック・スタンダ-ド」に掲載された報告書の紹介記事からの抄訳です。

 

Unequivocal support for organic agriculture

有機農業に対する明確な支持

 国際的に重要な科学的な研究が、有機農業は、社会的、経済的、そして環境における持続性を含め、21世紀における確かな持続的生産方法である、と明確な支持を表明。

 国際的に有力な活動であるInternational Assessment of Agricultural Science and Technology for Development(IAASTD開発のための国際農業技術評価)が、110の国からの900人の参加者により諮問を策定した。IAASTDは各国政府機関による4月7~12日のヨハネスブルグにおける全体会合を持つと同時に、6年に及ぶ検討の結果として08年4月15日に最終報告をまとめた。

開発と持続性の目標

 国連ミレニアム開発目標(UN Millennium Development Goals:MDGs)に則り、IAASTDは、農業知識・科学・技術(AKST)がどのように飢えと貧困を減らし、農村のくらしの改善と持続環境を保全し社会的経済的に持続的な公平な開発に寄与しうるか検討をしてきた。

 その作業は、過去及び未来に渡りAKSTが飢え、貧困、栄養状態、健康、そして環境と社会的持続性に与える影響など類似した共通の枠組みに基づくグロ-バルな評価と5つのサブグロ-バルな評価を含むものであった。5つのサブグロ-バルな評価は国・地域・ロ-カルなレベルで実施され、具体的な要素を分析することによりグロ-バルな評価を補完するものとされた。総合的な報告書は8つの事項に焦点を当てている。バイオエネルギ-、バイオテクノロジ-、気候変動、人の健康、天然資源管理、伝統的な知恵、貿易と市場、そして農業における女性、である。

IAASTDの報告書はヨハネスブルグの全体会合において60ヶ国の政府、科学者、私企業、社会啓発活動に取り組む団体により慎重に審議された。そして多くの国々で不安を呼び起こしている食料不足や食料価格の高騰を解決するために世界の農業を根本的に変革することを求めている。

重要な発見と結論

 その評価は工業的農業の失敗に関する誇張のない説明となっている。過去のグリ-ンレボリューションは、結局破壊の痕跡を残したものであるとされている。土壌の肥沃度の喪失、土壌流出、農業の生態系における機能の破壊などの結果、単収の落ち込み、耕作放棄、森林破壊、農業の限界地の増大が起きている。土壌に含まれる重要なミネラルを食いつぶす工業的な農法により農作物の栄養価は60年前に比べ非常に低下してしまっている。報告書は、近代農業は土地・水資源を枯渇させ、生物多様性を低下させ、そして貧しい人々を食料価格の高騰の下でなすすべも無い状況に放置してしまったと指摘している。既にある多面的機能を持つ仕組みの研究開発は充分に優先されない状況にある。環境への影響を緩和する生態的な機能は少ししか認識されていない。

IAASTDは、生産力と単収を重要視したことは一定の有益性をもたらしたが、環境と社会的公正の犠牲によるものであったと結論付けている。

 報告書はまた、小規模農家と環境は貿易自由化により犠牲となったことも示している。行き過ぎた貿易自由化は食料の安全保障と貧困の軽減に対しては負の影響をもたらし得ると認めている。そして不公正な農産物貿易システムは改められるべきであり、発展途上国は正当な権利として所謂北側からの補助金付きの安価な農産物の流入を阻止すべきである、と結論付けている。

 要するに、この星の食料システムが生き延びるためには、小規模農業を支援し、生態系にやさしい農業を支援し、公正で公平な貿易を支援しなければならない、ということである。

IAASTDは、石油化学燃料と農薬に依存した農業は、農業生態学に依拠し伝統的な地域社会の知恵による、柔軟性のある持続可能な農業に置き換えられるべきであることを呼びかけている。最も先進的な農業のあり方は、生物多様性を保持し労働集約的な、自然に逆らわない、自然と共にある農業である。

 報告書の特筆すべき点は、遺伝子組み換え作物に対する懐疑である。喧伝されている有益性に関する主張にはあまり触れることなく、懐疑と懸念に焦点が当てられている。人の健康と環境への影響に関しての疑問が提示されている。その報告書では、開発に対して技術評価が伴っていないこと、情報が逸話的で矛盾を含んでいること、有益性と被害双方共不確実性を孕んでいること、が述べられている。Robert Watson理事は、更に、組み換え作物が世界の食を賄えるかどうかは端的に言って、否である、我々はコストと利益双方を充分理解しなければならない、と述べている。英国食料農業省(DEFRA)所属の高名な気候変動専門家であり科学者グル-プの長である氏は、有機農業の有益性を示唆した。

 報告書はまた、食料生産からバイオ燃料への農地転用の急速な進行を批判し、それは食料品の価格高騰を招き、飢餓を軽減する力を削ぐであろうと述べている。

IAASTDは地域において管理され、生物学的根拠を持つ農法の強化がこれからの路であるとの証拠を示している。それは、21世紀の食料危機を回避する確かな方策として有機農業に対する明確な支持を表明している。報告書は、農学は、天然資源の保全にもっと注意を払うべきであると促し、また有機農業・小規模農業を後押ししている。天然の肥料や伝統的種子の活用や生産者から消費者までの距離の短縮などのエコロジカルな農業の実践を促している。

 報告書は、科学者の間で現在コンセンサスとなっていることを反映しており、全ての政府、市民社会や国際機関が、報告書にある知見を支持し、その進歩的結論を実行に移し、そして真のグリ-ンレボリュ-ションに向けて跳躍することを呼びかけている。真のグリ-ンレボリュ-ションは、より公正で持続的な食料と生態的農業を将来獲得する上で緊急に必要とされている。

 この報告書が幅広く支持されたことは、参加各国政府の大多数による承認に表れている。しかし、カナダ・オ-ストラリア・アメリカはサインを拒否した。いくつかの点を曖昧な表現に修正した上でもアメリカは報告書の評価は公平さを欠いていると主張した。このアメリカの立場は基本的には貿易の問題に関連したものである。アメリカの代表団はまた、報告書は新たなバイオテクノロジ-や遺伝子操作に関して充分肯定的でないとも受け止めている。IAASTDはSyngenta社ほかの農業化学や生物工学企業から手厳しく攻撃を受けた。モンサントとスィンジェンタ社は、彼等の声が無視されその製品が不当に評価されていると苦情を述べ、抗議の表れとして会合から退席をした。

 報告書における評価は、実験を踏まえた証拠に対する、何百人もの科学者や専門の研究者による厳密で公平な分析に基づいたものである。専門家たちは、今になってバランスを欠いていると主張している政府や私企業を含む多くの利害関係者によって選ばれた人達なのである。

行動に向けた声

IAASTDは、政策立案に関連を持っているものの、指令を与えるものではない。具体的な政策や政策遂行を提言するものでもない。ただ、直面する農業知識・科学・技術(AKST)に関する主要課題を評価し、開発と持続性の目標に合致する選択肢を提示しているのである。

 それは、農民をエコシステムの生産者であり管理者として認識するよう主張している。往々にして貧しい人達によって生産・消費されている主要な生存のための食料の持続的生産性を向上させるために、農業知識・科学・技術(AKST)への公的・私的な更なる投資が必要とされている。農民の経験と外部の知識とを結びつけるために、農民、科学者、その他の人々の新たなパ-トナ-シップが必要とされている。

IAASTD:02年8月にヨハネスブルグにおけるWorld Summit on Sustainable Development の場で世銀とFAOの提案で設置され、同年11月アイルランドのダブリンで第一回会合が開催された。

30カ国の政府代表、30のNGO・消費者団体・企業代表からなるBureauがあり、実務を仕切るSecretariats。FAO, UNDP, WHO, UNESCO, World Bank, GEF, UNEPがバックアップ。

(翻訳:近藤康男)

報告書原文はこちら

http://www.agassessment.org/