2012年12月11日火曜日

カンボジアにおけるキャッサバ農園とバイオエタノール生産(出光興産)

出光興産株式会社はインドシナ地域においてバイオエタノール事業を推進するため、2012年12月7日に、プノンペン市にてカンボジア政府との覚書に調印。1)


  日刊工業新聞の報道によると、カンボジアの農園でキャッサバを栽培し、これを原料にバイオエタノールを生産する計画であり、現地政府機関がすでに約1万ヘクタールのキャッサバ畑を確保しているという。また工場はカンボジアのほか、主要な販売先となるタイでも検討しているとのことである。2)


 この事業に関連して、出光興産は経済産業省による「平成 23 年度民活インフラ案件形成等調査 カンボジア・メコン川上流西岸地域農業・物流インフラ整備事業」を受託しており、調査報告書がWEBサイトに掲載されている。3)
 この資料によるとキャッサバ向けの2万ヘクタールを含む5万ヘクタールの開発、将来的には隣接する5万ヘクタールの開発も計画しているとのことである。この報告書では「現時点では、プロジェクトサイトに住民の存在は確認されていない」と記載されている。また水運によるカワイルカ等の影響の可能性が指摘されている。


1)http://www.idemitsu.co.jp/company/news/2012/121210.html
2)http://www.nikkan.co.jp/news/nkx0820121211caan.html
3)http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2012fy/E001988-1.pdf
   http://www.jetro.go.jp/jetro/activities/oda/model_study/earth_infra/pdf/h23_saitaku_20.pdf

開発と権利のための行動センター 青西

2012年12月7日金曜日

資料紹介:モザンビークにおける農地争奪

 

モザンビークにおける農地争奪関連資料です。

LORDS OF THE LAND

- PRELIMINARY ANALYSIS OF THE PHENOMENON OF LAND
GRABBING IN MOZAMBIQUE CASE STUDIES-


JUSTIÇA AMBIENTAL & UNIÃO NACIONAL DE CAMPONESES
MAPUTO, MOZAMBIQUE

http://www.open.ac.uk/technology/mozambique/pics/d131619.pdf

2012年12月6日木曜日

モザンビーク北部における大規模植林プロジェクトの問題点

 モザンビーク北部のニアサ州などは、日本政府・ブラジル政府が参加するプロサバンナ・プロジェクトだけではなく、スウェーデン政府などが推進する植林プロジェクトのターゲットともなっています。

 「荒蕪地」と見なされている農地に対して、既に植林プロジェクトそして大豆生産などを狙うブラジルの農企業家などがラッシュしているのです。
 「農地争奪」の危険はないのか、ではなく、既に争奪戦は開始されています。そこに日本政府も「争奪に参加する」ために手を上げているのです。

THE HUMAN RIGHTS IMPACTS OF TREE PLANTATIONS IN NIASSA PROVINCE, MOZAMBIQUE 
 FIAN 2012
http://www.tni.org/sites/www.tni.org/files/download/niassa_report-hi.pdf

The Expansion of Tree Monocultures in Mozambique.
Impacts on Local Peasant Communities in the Province of Niassa-A field report 
WRM 2010
http://www.wrm.org.uy/countries/Mozambique/book.pdf
 
スゥエーデン政府は植林プロジェクトを推し進める一方、プロジェクト対象地域のニアサ州のReality Checkというローカルコミュニティの現状調査などを5年間にわたって実施し、毎年報告書を出していくようである。ここにはプロサバンナ・プロジェクトの対象地域(CUAMBA)も含まれている。
Reality Checks in Mozambique-- Building better understanding of the dynamics of poverty and well-being -  Annual Report, 2012, Embassy of Sweden


anual report、sub-reportとも次のサイトでアクセスできる。
http://www.orgut.se/reference-library/

Reality Checkの対象地はLago, Majune, Cuamba. Cuambaはプロサバンナ・プロジェクト対象地。

ニアサ州の地図

フィリピンのバイオエタノール事業-企業からの回答へのコメント

 

FoE Japanを含む日本のNGO・有志個人から伊藤忠商事株式会社(以下、伊藤忠商事)宛てに10月16日付で提出したフィリピンのバイオエタノール事業に関する公開質問状(>内容)について、11月16日付で伊藤忠商事からの回答がありました。 

これに対してFoEJapanが回答へのコメント及び新しい現地情報をWebサイトに掲載しています。


伊藤忠商事からの回答状はこちら
バイオエタノール製造・発電供給事業に関する公開質問状に対する御回答

伊藤忠の回答状に対する、現場の最新の状況も交えたコメントhttp://www.foejapan.org/aid/land/isabela/20121130.html
http://www.foejapan.org/aid/land/isabela/20121130_2.html

2012年12月3日月曜日

モザンビークにおけるブラジルの大規模プロジェクトが何百万という農民を排除する危険性

 

<11月30日付けのグレインのメーリングリストより届いたニュースを翻訳のうえ紹介します。ブラジルだけではなく、日本政府もこのプロジェクトに関与しています。>


  ブラジル政府及び民間セクターは日本と協力しつつ、モザンビーク北部において大規模な農業プロジェクトを推し進めつつある。プロサバンナと呼ばれるプロジェクトは1400万ヘクタールの土地を利用して、ブラジル企業が大豆やトウモロコシなどの商品作物を生産し、生産物を日本商社が輸出することを目指している。ナカラ回廊と呼ばれるモザンビークのこの地域は、数百万の小農世帯が生計を営んでいるが、このプロジェクトによって土地を奪われる危険性に直面している。
 
 ナカラ回廊はナンプラ州のナカラ港からザンベジエ州の北部を通り、ニアサ州のリチンガにつながる鉄道線路沿いに広がっており、モザンビーク国でも最も人口が集中している地域である。肥沃な大地と恵まれた降雨によって、数百万の小農民が自給向け、また地域内市場に向けて食料を生産している。

 しかしながら、プロサバンナ・プロジェクトはこの大地を日本やブラジルの企業の手に引き渡し、大規模農園を設立して、輸出向けの基幹作物低価格で生産することを目指している。サバンナを広大な大豆とサトウキビ農園に転換したブラジルのセラード開発のアフリカ版を、ここナカラ回廊で実現しようとプロサバンナ・プロジェクトは目論んでいるのである。
 
 多数のブラジル人投資家が既にこのモザンビーク北部のプロサバンナ・プロジェクト対象地を視察している。ヘクタールあたり年一ドル程度の長期間の借地契約で土地を提供しようというのである。
 元農業大臣であるロベルト・ロドリゲスに率いられるブラジルのジェトゥリオ・バルガス財団の系列であるGVアグロがブラジル人投資家を調整している。GVAのチャールズ・へフナ-はプロジェクトがモザンビークの小農民を排除する物だという考えを否定し、プロサバンナ・プロジェクトは荒蕪地を対象としており、農業は行われていないと指摘している。へフナ-は「モザンビークは農業に適した広大な土地を有しており」、「深刻な社会的影響を引き起こすことなく、3万~4万ヘクタールの大規模プロジェクトを実施する可能性を有している」と述べている。
 
 しかしながら、モザンビークの研究機関の調査は、この地域のほとんどの農業用地は農村コミュニティによって利用されていることを示している。
「ナカラ回廊に荒蕪地があるというのは真実ではありません」とIIAM(モザンビーク農業研究所の調査員であるハシント・マファラクゼーは言う。
 この地域の農民も大規模農園のための土地はないと言明している。2012年の10月11日にナンプラの町に結集した全国農民連盟(UNAC)のリーダーたちは、プロサバンナ・プロジェクトについて分析するとともに、会議の最後で次のように宣言している。
「ナカラ回廊において数百万ヘクタールの土地を求めているプロサバンナ・プロジェクトについて深く憂慮しています。地域の現実を見ればそのような大面積の土地がどこにもないことは明らかで、移動耕作を行っている小農民によって利用されている土地なのです。」

声明では「単一作物の生産のための大規模農業プロジェクトを実現するために、農民の土地を奪い、コミュニティを移転させようといういかなる動き」も、また「アグリビジネスを確立して、モザンビークの農民を農業労働者に転換しようとするブラジル人農業者の入植を」強く非難している。

 この会議はプロジェクトに影響を受ける地域の農民リーダーがプロサバンナ・プロジェクトを分析するために初めて集まったものであり、多くのリーダーにとってはプロジェクトについての情報を受けとる最初の機会であった。
 
 政府はこれまでに私たちを何度か会議に招待してきたが、それらはプレゼンテーションを一方的に見せるだけで、いかなる質問の機会も与えないものであったとナンプラの協同組合連合の代表であるグレゴリオ・アブドは述べている。「私たちは透明性を求めているし、詳細について知りたいのです」

 モザンビーク、ブラジルそして日本政府は、閉ざされたドアの向こう側で事業を進めつつあり、現在は2013年7月に終わる予定でプロサバンナ・プロジェクトのマスタープラン作成を進めている。日本政府はナカラ回廊のインフラ整備に資金提供をしているが、ブラジル協力事業団(ABC)の代表は、GVアグロがこの地域の大規模農園に投資するための膨大な資金を確保し、管理していると述べている。またABCの代表は、名前は明示されなかった他の人物によって管理される同等規模の資金の存在について言及している。一方ブラジルの研究機関であるEMBRAPAは、ナンプラとリチンガの国立研究所の能力強化に取り組んでおり、ナカラ回廊の諸条件への適応試験のために大豆や綿花などの品種を持ち込んでいる。

 UNACはプロサバンナ・プロジェクトが上から押しつけられた政策の結果であり、農民の基本的な要求や希望そして不安に答えるものではないと指摘している。UNACはこのプロジェクトが土地なし農民を産み出し、社会的動揺と貧困、腐敗、環境悪化を引き起こすものであると警告している。
 またUNACは、もしモザンビークのナカラ回廊に投資を行うのであれば、小農の農業開発と小農経済のために行うべきであり、それが尊厳ある生活を持続させることができる唯一の農業形態であり、また農村からの人口流出に歯止めをかけ、モザンビーク国民に適切な食料を十分供給するための唯一の道であると主張している。
 
  Brasil de Fato紙に2012年11月29日に掲載。
 
出典 
Megaproyecto brasileño en Mozambique desplazará a millones de campesinos 
UNAC, Via Campesina Africa, GRAIN | 29 November 2012  より翻訳
http://www.grain.org/article/entries/4625-megaproyecto-brasileno-en-mozambique-desplazara-a-millones-de-campesinos

英語版
  http://www.grain.org/article/entries/4626-brazilian-megaproject-in-mozambique-set-to-displace-millions-of-peasants

翻訳

開発と権利のための行動センター 青西