2011年1月26日水曜日

質問書への回答(農林水産省)

 

1月24日付で農林水産省より、質問書への回答を受け取りました。

1)バイオエタノールなどの投資についても、食料安全保障への影響を生じることがないか情報収集を行っていく

2)事例2については当事者である株式会社からヒアリング等を行い、行動原則との整合性を確認した

3)事例3については更に情報収集を進めていく

という回答でした。

 今後もモニタリングを進めていくとともに、行動原則との整合性確認プロセスについての情報公開を求めていくことが重要かと考えております。

 当事者企業からのヒアリングで整合性を確認するだけであれば、その情報に関する裏付けはとれないので、確認プロセスとしては不十分と考えられます。 

開発と権利のための行動センター

青西

 2010124land

2011年1月18日火曜日

イベント紹介:「当たり前に生きたい、ムラでも、マチでも─TPPに反対する人々の運動」 2.26「TPPでは生きられない!座談会」のお知らせ

 

 イベント案内転載します。

「当たり前に生きたい、ムラでも、マチでも─TPPに反対する人々の運動」
   2.26「TPPでは生きられない!座談会」のお知らせ

  TPP(環太平洋経済連携協定)というのをご存知ですか。まだ正体のよくわか
らないこの妖怪がわたしたちに襲いかかろうとしています。
  もともとは2006年に発効したニュージーランド、チリなど4カ国の小さなFTA
(自由貿易協定)だったものが、新たにアメリカ、オーストラリアなど数カ国が
参加を表明したため「バスに乗り遅れるな」とばかり菅首相が飛びつき、財界や
大手マスコミが政府の尻を叩き、その賛否を巡っていまや大論争となっています。

 それぞれの家庭にそれぞれの事情や都合があるように国や地域にとってもそれ
は同じです。相手の立場に配慮して協議をすすめるのが貿易交渉ですが、TPP
は例外なき自由化を強引に進めようとするものです。菅首相はこれに参加するこ
とを、明治維新、敗戦に次ぐ「第三の開国」と述べました。

 これが実行されたら、コメをはじめとして畑作物、乳製品から沖縄のサトウキビ
までほとんどが輸入物に置き換わり、食料自給率は14%まで低下すると農水省は
試算しています。これは地域の崩壊を意味し、人が暮らし続けることができるバ
ランスのとれた社会としての「日本」の終わりを意味します。

 マスコミの一部は「牛丼が200円になる」とはしゃいでいますが、労働力も自由
化され、際限のない賃金水準まで下がりつづけ、安い牛丼すら食えなくなること
を覚悟しておくべきでしょう。ワーキングプア、非正規社員はふえつづけ、農村
からの離村者なども含め、都市に失業者があふれることにもなりかねません。

 いったい、誰のための自由化でしょうか。私たち農民はもとより、多くの人たち
にとって、なんのメリットもありません。どうか、みなさん。この愚挙、この暴
挙を阻止するために、私たちと共に立ち上がってください。
 2月26日に全国の百姓が東京に集まり声を挙げます。多くのみなさんの参加を呼
びかけます。

【日 時】 2011年2月26日(土)13時~17時
 
【会 場】 東京都千代田区神田駿河台「明治大学リバティータワー2階1021教室」
最寄り駅:JR中央線・総武線、東京メトロ丸ノ内線「御茶ノ水駅」下車徒歩3分
  (地図)http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html
  
【参加費】 500円(予定)

【内 容】
参加者が3分間スピーチで語る。農民だけでなく、TPPやグローバリゼーション
の影響を受ける人たちにも参加してもらい、様々な視点から発言してもらう。また、
グローバリゼーションとたたかう韓国農民をゲストとして招く。

座談会の後、街頭行動を行う。18時~19時(キャンドルデモなどを予定)

【問合せ先】 事務局の市村まで(フォーラム平和・人権・環境 事務局内)
Tel:03(5289)8222   Fax:03(5289)8223
メール:ichimura@gensuikin.org

詳しくはこちらのサイトを http://www.geocities.jp/yaoyahyakusho/muramachi/home.html

2011年1月13日木曜日

カンボジアにおける農民排除

farmlandgrab.orgのサイトに紹介されている記事から、いくつかを紹介します。またカンボジアに関する日本語での記事も4),5)で紹介しています。 

青西

1)カンボジアは売りに出されているのか?
  Has Cambodia become a country for sale?  BBC (2011/1/13)
  http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-pacific-12152759
「タイの投資家がサトウキビ・プランテーションを開発したときに、私たちは補償もないままに土地から追われたのです。」
 カンボジアの新しい土地コンセッションは、その立地を生かして経済開発をもくろむものであり、2005年以降、すでに国土の15%が民間企業の手に渡った。その3分の1は外国企業であり、リースに際して、企業は農地の開発と雇用創出を約束している。

 しかし不公正で暴力的な農地収奪が進んでいる。家を銃撃して追い出すこともある。軍がプランテーション主のために排除に関与することもある。
 妊娠中であったホ・マイさんは関係当局に抗議をしたものの、逮捕され、刑務所で出産。当局は、ホさんが違法に耕作をしていたのだと告発。ホさんは農地は自分のものだと主張するが、法的な文書は有していない。
 これはカンボジアではごく普通のことであり、ポルポト政権下で私的土地所有は禁止され、土地証書は焼かれてしまい、さらに多くの人が内戦で逃げざるをえなかったのである。

 政府は、貧しい農民に対する土地証書の発行プログラムを進めているという。それは土地土地引きをより確かなものにすることができるからである。そして政府は2百万近くの土地証書を発行したという。
 
 しかし不正もはびこっている。地方の役人のところに行き、賄賂を払えばいいだけだという。また土地排除のために警察や軍を動かすこともあるという。
「無理矢理追い出されるのと法律によって追い出されるのとどちらを取るか、選ばせるだけなのだ」

2)韓国企業による土地囲い込みに抵抗(2011/1/07)
  Land clearance by Korean firm blocked
http://www.phnompenhpost.com/index.php/2011010745949/National-news/land-clearance-by-korean-firm-blocked.html
 村人が育ててきたカシューナッツ園を伐採し、土地を囲い込もうとする韓国のゴム企業に対して、800人の村人が抵抗。抵抗運動は平和的に行われているという。
「私たちのカシューナッツが切り倒されたら、どうやって生きていけるのか」
 韓国系のBNA社は2009年9月にカンボジア政府から70年間にわたる7500haの土地コンセッションを受け、ゴムとキャッサバ生産を計画している。
 会社側は「土地は政府から受け取ったものであり、如何なる補償を提供するつもりもない」という。
 農民は「企業が7500haの土地を握り込んだら、私たちはどこで生活し、どこを耕していけばいいのだ」と抗議の声を上げている。

3)農地収奪に抵抗するコミュニティ
Cambodia: Communities fight back against land grabbing(201009/13)IRIN
 http://www.irinnews.org/report.aspx?ReportId=90453

以下 日本語記事です。リンクのみ紹介

4)【ルポ・カンボジア】ゴムに追われる農民(2010/10/20)   大野和興

  http://www.the-journal.jp/contents/ono/2010/11/post_13.html

5)カンボジアで進む外国企業のプランテーション化(2009/11/10)

日本国際ボランティアセンター(JVC)のカンボジア事務所代表としてカンボジアの農村で活動する山崎勝さんに聞いた。(聞き手:大野和興)

 http://opinion.infoseek.co.jp/article/642

2011年1月12日水曜日

海外農業投資指針の運用について

農林水産省と外務省への質問状

2010年11月24日に下記の文面の質問状を外務大臣、農林水産大臣および外務省、農林水産省の担当部局に送付した。
その後12月27日に外務省の担当者より、電話にて外務省からの回答を聞くことができたが、農林水産省からは返答はない。
外務省としては、海外の農業投資を重要と考え 情報収集を進め、行動原則と整合性を確認していくとのことであった。
しかし情報を収集するのは、これからであり、海外での農業投資に先立って情報を収集し、整合性を確認するというのとは大きく異なっている。
つまり、行動原則との整合性の確認は適切には行い得ていないと理解できる。

また1)の事例においては、食料生産のための農業投資ではないということで、行動原則との整合性を確認する対象ではないという見解であった。つまり、食料生産や地域住民の自給基盤に大きな影響を与えることが想定されるバイオ燃料生産等の投資に関しては、抜け落ちていくということになる。

更に3)の事例における現地新聞で報道されたケースに関しては、新聞報道以上の情報を有しているということはないようであり、投資に先んじて情報を得る仕組みは存在していないと理解できるであろう。

また2)の事例においても、1月12日までの時点において、外務省、農林水産省ともWEB上で公開している情報は存在せず、透明性の確保、情報公開について全く不十分であろう。

このように海外投資指針を策定しても、海外農業投資を適切に監視していくことが非常に困難であることは明白であり、また市民社会が適切に情報にアクセスすることもできない。このような状況の中で、適切な海外農業投資が実施できるという保証は存在していない。

市民社会による適切な情報収集とそれに基づく企業、行政への働きかけが不可欠であろう。

青西

以下質問状


                               2010年11月24日
外務大臣    前原誠司殿
農林水産大臣  鹿野道彦殿

外務省   経済安全保障課
農林水産省 食料安全保障課
農林水産省 国際協力課

                                    質問書

 日本国政府は2009年(平成21年)8月20日に外務省及び農林水産省の共催によって第5回「食料安全保障のための海外投資促進に関する会議」を開催し、「食料安全保障のための海外投資促進に関する指針」を取りまとめました。

 この中で、日本国の海外農業投資においては、「被投資国における農業の持続的可能性を確保」することが重要であることを認め、政府及び関係機関は、「本指針に基づいて海外農業投資の促進策を講ずるに当たり、以下の行動原則との整合性を確認する」ことを定めております。
 つきましては、この「指針」に関連して、次の事例において、行動原則の①~⑥に沿って、日本政府がどのような情報を収集され、どのように整合性を確認されたのか、また収集された情報及びその検討結果についてどのように開示されているのかを公表いただきたく、お願い申し上げます。

事例1)フィリピンにおけるバイオエタノール製造・発電事業について
「伊藤忠商事株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:岡藤正広、以下「伊藤忠商事」)および日揮株式会社(横浜本社:横浜市西区、代表取締役会長兼 CEO:竹内敬介、以下「日揮」)は、フィリピン事業パートナーと共同で、フィリピン最大級のバイオエタノール製造、および電力供給事業に参画いたします。事業の概要は以下の通りです。」
(以上下記サイトより転載)
  http://www.itochu.co.jp/ja/news/2010/100408.html

事例2)双日、アルゼンチンで大豆など農業事業を開始
~農業経営ノウハウを蓄積し、ブラジルなどへ拡大。食料資源の安定供給に貢献~
双日株式会社は、南米アルゼンチンにおいて大豆などの農業生産を行う事業会社 双日ブエナスティエラス・デル・スール社(Sojitz Buenas Tierras del Sur S.A.、以下BT社)を双日グループの100%出資で設立し、アルゼンチンの大手農業事業運営会社であるカセナベ社(Cazenave y Asociados S.A.、本社:ブエノスアイレス市)と協力し、2010年穀物年度から大豆等の穀物の生産・販売する農業事業を開始します。日本の 大手商社が海外で直接事業法人を設立し、農業事業を行うことは今回が初めてです。
(下記サイトより転載)
http://www.sojitz.com/jp/news/releases/20101117.html

事例3)2010年11月9日付けで掲載されたフィリピンにおける投資計画
Japan firms eye farm investments(Bussines World 2010/11/9)
A NUMBER of Japanese firms plan to invest in a plantation in the Philippines, with the produce to be exported to Japan, the chief of the Agriculture department said yesterday.
"Some Japanese firms are interested in investing in a crop that will be used for their consumption," Agriculture Secretary Proceso J. Alcala told reporters.
Mr. Alcala said the department is currently in advanced talks with the interested Japanese firms.
He declined to name the firms nor the crop and investment involved, saying only that the companies do not want any genetically modified variety of the crop.
http://www.bworld.com.ph/main/content.php?id=20928


  日本国政府はこの「指針」以外にも、世界銀行などとともに「責任ある農業投資のための行動原則」の策定にも取り組んでいます。この中でも「指針」と同様に、土地と資源に対する権利の尊重、食料安全保障、透明性の確保や、協議と参加、社会的持続性、環境持続性などが取り上げられています。
 このような「指針」や「行動原則」が実効性を持つためには、企業に対してだけではなく、市民社会に幅広く情報が共有されることが不可欠だと考えます。

 つきましては、上記の3つの事例に関して、「指針」の適用及び「行動原則」の試験的・自発的適用の例として、積極的な情報開示をお願いするものであります。


青西靖夫  (開発と権利のための行動センター 代表)
松平尚也 (AMネット 代表理事)



食料安全保障のための海外投資促進に関する指針 より一部抜粋
http://www.mofa.go.jp/ICSFiles/afieldfile/2009/08/20/G0858_J.pdf

4 我が国の行動原則及びこれに関する国際的取組等
(1)行動原則
海外農業投資は、被投資国における農業の持続可能性を確保しつつ、投資側・被投資側の双方が裨益する形で実施することが重要である。この観点から、政府及び関係機関は、本指針に基づいて海外農業投資の促進策を講ずるに当たり、以下の行動原則との整合性を確認する。同時に、被投資国側にも投資環境の整備(収用の原則禁止や輸出規制の抑制等)や投資関連情報の提供などを求めていく。
① 被投資国の農業の持続可能性の確保
(例:投資側は、被投資国において、持続可能な農業生産を行う。)
② 透明性の確保
(例:投資側は、投資内容について、契約締結時等において、プレスリリース等により、開示する。)
③ 被投資国における法令の遵守
(例:投資側は、土地取引、契約等被投資国における投資活動において、被投資国の法令を遵守する。)
④ 被投資国の農業者や地域住民への適正な配慮
(例:(イ)投資側は、投資対象の農地の農民及び所有者に対し、その農地の取得及びリースに関し、適切な対価を提供する。(ロ)投資側は、現地における雇用について、適切な労働条件の下、農民等従業員の雇用を行う。)
⑤ 被投資国の環境への適切な配慮
(例:投資側は、投資に当たって、土壌荒廃、水源の枯渇等、被投資国の環境に著しい悪影響を与えてはならない。)
⑥ 被投資国における食料事情への配慮
(例:(イ)投資側は、被投資国における食料事情に悪影響を与えないように配慮する。(ロ)投資側は、被投資国の主食作物を栽培している農地を他の作物に転換することにより主食作物の生産量を著しく減少させるような投資は行ってはならない。)

マリ:投資家によって追われる農民たち

アフリカで進む農地収奪についてアフリカ日本協議会の斉藤さん提供の情報です。

African Farmers Displaced as Investors Move In(2010/12/21)
http://www.nytimes.com/2010/12/22/world/africa/22mali.html?_r=1&scp=1&sq=African%20Farmers%20Displaced&st=cse








(Wikepediaより) 

「日々かろうじて生計をたて、やせた土地を何世代にもわたって耕し続けてきた農民は、自分たちの土地がリビアのカダフィ大佐の土地になり、自分たちが土地から出て行かなくてはならないという驚くべきニュースを聞かされた。」
このニュースは、アフリカを始め、開発途上国で進む、地球的な規模のランド・ラッシュ、農地争奪の一つの例を紹介したものである。アフリカ諸国では政府が土地の所有権を有しているケースが多く、その土地を(耕作し、何世代にもわたって生活してきた人々がいるにも関わらず)その土地を外国政府や投資家に貸し付けてしまうという問題が起きている。
国連や世界銀行は土地取引と生産が公正に行われれば、増加する世界人口を養うことに寄与するというが、一方、新しい植民地主義であり、農村を破壊し、膨大な土地なし農民が発生するという懸念もある。
(この辺の議論は世界銀行の報告書やGRAIN、食料の権利に関する国連特別報告者などによるものであり、別途記事を紹介する)

この記事によると
マリに対しては、中国、南アフリカがサトウキビ、リビヤとサウジ・アラビアが米、またカナダ、ベルギー、フランス、韓国、インド、オランダなどが投資を進めているか、あるいは関心を持っているという。
マリでは約60万エーカー(24万ヘクタール)を対象にした60の契約が結ばれているというが、実際には60万ヘクタールにのぼるという説もあるという。記事ではこの大半は国内投資家による国内市場向けの食料生産だというが、リビアに対する10万ヘクタールのリースのようなケースも存在している。しかしこの契約ではリビアはその土地を開発するという条件で、50年間にわたり土地を無償で利用できるという。
このリビヤとのプロジェクトでは2万人が影響を受けるといい、既に抗議行動も起き、軍によって逮捕されたものもいるという。しかし農民は土地を守るために死ぬ覚悟だという。
「人々は権利を守るために立ち上がらなければ、すべて失ってしまう」

マリの国連開発計画事務所で働くエコノミストは、農業社会であるマリにおいて、農民から土地を奪ったら、他に生活を支える手段はなく、首都に職を持たず、土地から流れてきた住民がふくれあがり、政治的な問題となることは明らかだと分析しているという。

「私たちの家を破壊し、土地を取り上げる前に、私たちが生活し、耕していける新しい土地を示してみろ」という抗議の声がある。
(記事の整理、部分訳は開発と権利のための行動センター 青西)

関連スライドショーはこちら
http://www.nytimes.com/slideshow/2010/12/21/world/africa/20101221_MALI.html

その他関連情報
マリ 外国資本の農地開発で小農民が水飢饉? 食料不安が煽る持続不能な食料増産(農業情報研究所 09/3/17)
 http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/agrifood/overseainvest/09041701.htm

記事紹介:豆から見える世界

当ブログの立ち上げメンバーの一人でもある松平尚也さんの記事を紹介します。

日本の豆、豆腐の自給率は?
和菓子の豆はどこから来るのか?
豆はどういう形で胃袋に入っているのか?
なぜ大豆油消費が増えたのか?

https://docs.google.com/viewer?a=v&pid=explorer&chrome=true&srcid=0B52cEjg1HlzCZWYxZDViMDAtOTNhNS00NDVjLTg2ZDItNjZhZDczNmIxZWIw&hl=en