2011年9月26日月曜日

モザンビーク:土地収奪につながるJICAプロジェクト

現在日本政府はブラジル-モザンビーク-日本との三角協力という形で、モザンビークにおける農業開発プロジェクトの実施を計画している。[1]
「モザンビーク国日伯モザンビーク三角協力による熱帯サバンナ農業開発協力プログラム準備調査 最終報告書」(2010.3 JICA)によると、この地域での「農業開発は、農家の大多数を占める小規模農家の支援と付加価値の高い農業の展開を通じた地域農業の振興を目指して、『アグロインダストリーを起点とした地域農業開発の推進』」を提案する」としている。また「村落レベルの開発モデル構築プロジェクト」の終了時期を2014年と予定している。
しかしながらブラジルからの投資拡大を狙うモザンビーク政府、また投資先の拡大を狙うブラジル企業の動きは、このようなプロジェクトを上回るスピードで動き、地域農民の土地が奪われる危険性が高まっている。既にブラジル側の要請とモザンビーク政府の賛同を受けて、「商業規模(commercial scale)の農業生産投資をも可能にすべく」、想定外であった640万hがプロジェクトの対象に加えられている。日本からの円借款や技術協力を利用しつつ、ブラジルを中心とした投資が促進され、農民が土地が奪われていく危険がある。
8月14日の"Folha de S. Paulo"紙の記事は、モザンビークのパチェコ農業大臣の話しとして、「ブラジルのセラードにおける開発を再現したい」、「北部4州において、6百万ヘクタールの土地を、ヘクタール当たり9ユーロで50年にわたるコンセッションで提供できる」と伝えている。更にこの記事では、ブラジルの生産者や投資家側がモザンビークへの進出に前向きであるこという。グロッソ・綿花生産者協会のアウグスティン氏は「モザンビークは、アフリカの中心にあるマット・グロッソであり、ただで土地が手に入り、環境面での条件も多くはなく、更に中国への船賃も安くすむ」と歓迎の意向を示しているという。今日、マット・グロッソでは、伐採・開墾への許可を得ることはほとんど不可能だという。[2]
その後、農業大臣は土地のコンセッションについて記事は歪曲されていると打ち消しに躍起になっているようであるが、土地のコンセッションが農業大臣の権限の元にはないという点についての説明に留まり、将来的なコンセッションの可能性を何ら否定するものとはなっていない。[3]
そもそも、三角協力の一環として開催された「モザンビークにおけるアグリビジネスへの投資機会」というセミナーにおいて、モザンビークの農業大臣が、マット・グロッソの生産者に対して積極的に投資を求め、無償で土地を提供すると話していたようである。[4]
  更に在ブラジルモザンビーク大使館のWEBサイトには、この11月にブラジルからアフリカ諸国への投資ミッションが派遣され、アンゴラ、南アフリカ、モザンビークを訪問することが記載されている。このミッションの主要分野の一つには、農業関連企業の国際化も含まれている。[5]
またAgência de Notícias Brasil-Árabe (ANBA) の記事によると、パラグアイなど南米周辺国に向けて投資を進めてきたブラジルの農業生産者は、南米での土地入手が難しくなり、現在アフリカに目を向けているとのことである。既にAçúcar Guarani社はモザンビークに進出し、エタノール向けサトウキビを生産し、スーダンに進出しているGrupo Pinessoもモザンビークへの進出を検討しているという。[6]
このようなブラジルからアフリカへの移民、投資の動きは数年前から非常に活発なようであり、「ブラジルはアフリカでのプレゼンスを増し、土地を購入している-このようなブラジルのアグリビジネス関連企業のアンゴラやモザンビーク、モ-リタニア、スーダンなどへの移動はこれまで見たことがないものである」という記事も見られる。[7]
  このような記事からわかることは、既にブラジルからアフリカに向けての農業投資の動きは活発であること、そうした中で、日本政府はブラジルからモザンビークへの農業投資促進に向けて協力しているのである。また円借款での道路建設も既に調印済みである。

JICAの報告書、「モザンビーク国日伯モザンビーク三角協力による熱帯サバンナ農業開発協力プログラム準備調査 最終報告書」(2010.3 JICA)を改めて見直すと600万ヘクタールの土地が狙われている理由が明らかになる。
報告書の8.1の結論部分に次のように記載されている。<ブラジル側(Embrapa)は、本プログラムの対象地域を・・・「中小規模農家増収支援」に加え「商業規模(commercial scale)の農業生産投資をも可能にすべく、上記2)の対象地域(640万ha)を含めることが重要であると考えている.この新たな提案は、その後モザンビーク国農業省からも支持された。」
プロジェクトの中には、「ナカラ回廊周辺地域総合農業開発計画」を策定するというのも含まれているが、その計画策定前に、「セラードに類似し、機械化農業に適した地域」として640万ヘクタールが組み込まれたのである。こうしてこのプロジェクトは、民間投資によるモザンビークにおける大規模な機械化農業振興のためのプロジェクトとなった。このプロジェクト主催のシンポジウムで農業大臣が600万ヘクタールに言及したのは理由があるのだ。
日本側がどのように考えようと、ブラジルとモザンビークでは大規模な機械化農業による市場向け生産を目指しているのである。そしてこのプロジェクトの計画の枠内では、この動きに対して歯止めをかける仕組みはなく、「村落開発のモデル」を作っているうちに、村落が消え去る危険性すらある。

開発と権利のための行動センター
青西靖夫
[1]モザンビークにおけるJICAプロジェクト関連情報はこのサイト
http://landgrab-japan.blogspot.com/2011/09/blog-post.html
報告書へのリンクもこのサイトに入れてある。
[2] Moçambique oferece área de três Sergipes à soja brasileira(2011.8.14)
http://www1.folha.uol.com.br/mercado/959518-mocambique-oferece-area-de-tres-sergipes-a-soja-brasileira.shtml
José Pacheco diz que a concessão de 6 milhões de hectares a brasileiros é uma má interpretação(2011.9.9)
http://www.canalmoz.co.mz/hoje/20264-jose-pacheco-diz-que-a-concessao-de-6-milhoes-de-hectares-a-brasileiros-e-uma-ma-interpretacao.html
[3] Pacheco diz que não foi ao Brasil negociar terras
http://opais.sapo.mz/index.php/politica/63-politica/16451-pacheco-diz-que-nao-foi-ao-brasil-negociar-terras.html
及び[2]の2つめの記事
[4]Ministro José Pacheco convida produtores brasileiros a investir na produção de algodão em Moçambique (在ブラジルモザンビーク大使館のWEBサイトに転載されている記事)
http://www.mozambique.org.br/index.php?option=com_content&task=view&id=564&Itemid=9
[5]Missão Empresarial do Brasil para Angola, Moçambique e África do Sul
http://www.mozambique.org.br/index.php?option=com_content&task=view&id=586&Itemid=9
[6]Lavoura estrangeira(2011.9.15)
http://www.anba.com.br/noticia_especiais.kmf?cod=12406689
[7] Brasil amplía presencia en Africa y compra terrenos para cultivos(20106/29)
http://diario.latercera.com/2010/06/29/01/contenido/8_31094_9.shtml
Brasil invade África con sus productos(2010.6.23)
http://www.abeceb.com.ar/noticia/135175/brasil-invade-africa-con-sus-productos.html

2011年9月24日土曜日

ダカール宣言に改めて署名の要請(10月7日期限)

10月に開催される世界食料安全保障委員会の会議を前に、今年2月に公表されたダカール宣言への支持が求められています。

これは日本政府などが進める「責任ある農業投資原則:RAI原則」が不十分であり、これを拒否すること、また現在べっこに進められている、「土地に関する権利及び漁業、森林の責任あるガバナンスのための自発的ガイドライン」の制定を進めようとする動きの一環です。

http://www.dakarappeal.org

ダカール宣言の訳はこちら

http://landgrab-japan.blogspot.com/2011/03/blog-post_4646.html

 

開発と権利のための行動センター

青西

2011年9月14日水曜日

食料への権利:国連特別報告者

 2010年の国連総会に提出された「土地へのアクセスと食料への権利」の前半部分訳。(未定稿)食料への権利に関する国連特別報告者、オリビエ・ド=シューテル氏は国連総会に向けての報告書にて、土地への圧力が食料への権利を脅かしていることを伝えている。この報告書の重要な論点の一つは、土地所有のあり方に関するものである。個人的土地所有権の確立が土地への投資を促進し、生産性を高めるとされてきた考え方に疑問を呈し、セーフティ・ネットとしての土地の役割、慣習法に基づく土地保有を重視している。食料への権利、土地へのアクセスについて考える時に、参照される国際法を検討する資料としても有効かと思う。既に第3部の部分訳を「土地利用者の権利を守ること」(2010/11/08)として「開発と権利のための行動センター」のブログに掲載していたが、第一部、第2部の訳を追加したものである。

原文 The right to food A/65/281 (2010/8/11) 英語版とスベイン語版を利用(訳 青西)

http://www.srfood.org/images/stories/pdf/officialreports/20101021_access-to-land-report_en.pdf

 

 サマリー
 土地へのアクセス及びその土地保有の保障は食料への権利を享受するために極めて重要である。この報告では、高まる土地への需要を前に、三つのグループ、先住民族、小農民及び特別なグループとして牧畜民、遊牧民及び漁民に対して、どのような影響が出ているかを検討する。人権として、土地への権利の承認を進めることを通じて、諸国家や国際社会が食料への権利の行使をどのようにより尊重し、擁護し、履行できるかを検討する。
 この報告書では、土地保有の保障が非常に重要であることは間違いないものの、個人的土地所有地の確定及び市場での取引が、そのためにふさわしい方向であるとは考えてはいない。土地保有に関する慣習法的システムの強化、および土地保有に関する法律の強化によって、土地利用者をより効果的に保護することができるであろう。数十年にわたる農地改革の取り組みの中から、食料への権利の実現には土地の再配分が重要であることも強調している。また土地への権利を攪乱し、土地の集中を引き起こし、土地からの排除を引き起こすのではない、異なる開発モデルが優先されるべきである。

第1章    導入

1. 現在、十億もの人々が飢餓に苦しんでいる。大多数の人々、小農民や農業労働者、牧畜民、漁業者、職人、そして先住民族コミュニティの成員、こうした人々にとって、土地へのアクセスは、尊厳ある生活を獲得するための条件である。小規模農業に依存する5億人もの人々が空腹を抱えているのは、人々のつくる農作物の価格が安いからだけでも、大規模経営と競争することができないからでもなく、そうした人々の農地があまりに狭小であるからでもある。そこで大半の人々は食料の純購入者であり、しばしば、乾ききった土地や山肌で、そして灌漑もない土地に追いやられているのである。そこで大規模な生産者と水や土地を巡って競合を強いられるのである。小規模農業の行き詰まりや土地に対する権利が有効に守られていないことなどから土地を追われたことなどから、多くの農民が大農園の農業労働者へとならざるを得ない。しかしそこでは生存のために十分な賃金が支払われないこともしばしばであり、社会保障や法的な補償から取り残されるのである。伝統的漁民や牧畜民、半牧半農の民も同じような危機に瀕している。土地が稀少になればなるほど、人々が何世代にもわたって生計を立ててきた漁場や放牧地から排除される危険が高まるのである。先住民族や森林居住民の脆弱な状況は、人々が生計を立ててきた森林に対する圧力が高まっていることによるものである。

2.土地へアクセスは、世界人権宣言の第25条や経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約の第11条に定められている適切な食料への権利と密接に関係している。食料への権利は、個々人が、一人であるいは集団で、すべての時において、適切な食料あるいはそれを得るための手段に、物理的、経済的にアクセスできることを求めている。「個人もしくは集団が、それらの対応範囲を超えた理由によって、手に届く手段によって適切な食料への権利を享受できない場合には」国家が食料を提供する義務を負うものである。しかしながら、食料への権利は、まず国家に対して、人々が食料を生産するために依存している生産的な資源へのアクセスを剥奪するような方策を取らないよう求める必要がある。(尊重する義務)また他のものによる剥奪から守ること(保護する義務)、食料安全保障を含め、生計を安定させるためのや資源や手段へのアクセスや利用を強化するように務めること(履行義務)が求められている。


3 今日、最も脆弱なグループにとって、既存の土地や水、放牧地、漁場へのアクセスを守ることは、尊厳ある生活のために不可欠のものである。こうした場合には食料への権利は、所有権の保護あるいは先住民族の土地やテリトリー、資源との関係によって補完される。また他の事例においては、土地の欠如は著しい脆弱性の原因であり、国家は、第三者の所有権を制約することにもつながる土地の再分配プログラムなどを通じて、土地へのアクセスを強化すること、あるいはそれを可能にするという更なる義務を有することとなる。十分かつ適切で文化的にも受け入れられる食料を生産するための代替手段を欠く、あるいは購入のための十分な収入を得ることができない場合には、この国家の義務はより明確である。

4 土地へのアクセスそして土地保有の保障は食料の権利を享受するためだけではなく、(土地なし農民に対する)労働の権利、住居への権利など、その他の人権を享受するためにも不可欠なものである。この点について、前任の「適切な住居に対する権利に関する特別報告者」は、「人権に関する国際法において、土地への権利を人権としての承認を確実にすること」を国連人権理事会に求めている。食料への権利を切り口とする当報告書もこの結論を確認するものである。ここでは土地への高まる圧力を概観し、それに続いて、自然資源、特に土地へのアクセスという点から、守られるべき土地利用者の権利について分析する。更に、より公正な土地へのアクセスを確実にするための検討を行う。

5 この報告書の結論は以下の市民社会との協議の結果に基づくものであり・・・(省略)

第2章 現行の土地への圧力

6 土地への圧力は急激に高まりつつある。農村部の人口が増加する中で、一人当たり、世帯当たりの耕作面積は小さくなりつつある。インドでは1960年に2.6haであった平均土地所有面積は2000年には1.4haまで低下し、その傾向はいまだ続いている。同じような状況は、バングラディシュやフィリピン、タイでも報告されている。これらの国では平均農家規模の低下は、土地なし層の増加と同時に進行しつつある。こうした傾向はアジア地域に限られるものではない。東アフリカ、南部アフリカにおいても、一世代の間に一人当たり耕地面積は半分にまで減少し、いくつかの国においては、平均耕作面積が0.3ha以下となっている。こうした現象はエロージョンや土壌劣化によって更に厳しいものとなっており、深刻な土壌劣化によって、世界中で毎年500万から1千万ヘクタールの農地が失われている。しかし農村人口の増加に見合う形で耕作地を拡大することは困難であろう。森林は二酸化炭素の貯留という重要な役割を担っており、その上に既に森林破壊が温室効果ガスの排出の主要原因となっているのである。

7 こうした長期的な傾向は、農地への圧力を高めるようなここ数年の政策によって、深刻化しつつある。多くの地域において、輸出志向向けの農業政策の中で、食料やエネルギー源、商品作物などの大規模農園が開発されてきた。こうした土地集中の傾向は、主として、機械化した資本集約型の農業を進める開発モデルによるものであり、またサプライチェーンの広がりにも後押しされてきたのである。こうした傾向は、市場とより密接に結びつき、輸出向けの基準に見合う生産物を大量に生産しうる大規模生産者を優遇するものとなった。また農地利用に関する競合は、輸送燃料としてのバイオ燃料利用を進める政策によって、近年更に深化した。資源を巡って、地域の利用者と政府、新規のアグロ燃料生産者との間で競合が引き起こされ、より貧しいグループがこれまで依存してきた土地へのアクセスを失う危険が生じたのである。最近の世界銀行は80カ国で389の長期にわたる借地や大規模な土地取得をリストアップしており、そのうちの37%の投資プロジェクトは食料生産を目指すものであり、35%がアグロ燃料向けであるという。こうしたすべての理由から、特別報告者は、土地に関する権利の変更を引き起こすような投資は、最大の注意を払って取り扱われるべきであることを強く主張するものである。CFSの第36回総会において、大規模な土地投資のリスクと代替のビジネスモデルについて、詳細を報告する予定である。

8 気候変動の緩和や環境保全のために取られる手段は、技術的解決と、市場による解決を優先してきたが、これが土地利用者の権利とさらに紛争を生み出している。気候変動枠組み条約に基づく京都議定書第12条に定められたクリーン開発メカニズムに基づき、付属書I国(先進工業国)は、開発途上国におけるガス排出削減プロジェクトの実施を支援することで追加的な排出権を得られることとなっている。しかしながら、このメカニズムでの利益を求める植林プロジェクトが、不十分にしか保護されていないであろう地域住民を排除しかねないのである。2005年に打ち出され、2007年12月にバリで開催されたCOP13で強化されたREDD(森林破壊と森林劣化からの排出削減)プログラムは森林居住者にとっての脅威である。政府やその他のアクターが、炭素貯留から派生する利益を我がものにしようするかもしれない中で、森林居住者が生活を糧を得ている森林に対する慣習的権利は一般的に認められていないのである。また諸政府は環境保全のために、野生生物保護区や国立公園、あるいはその他の自然保護区の設置を進めている。生態系は、土壌構造の維持や土壌保全、栄養循環、堆肥施用、害虫管理、受粉、水供給、水濾過、生物多様性、大気調整など農業にとっても重要な役割を果たしている。しかしながら、土地利用計画を含む保全策の適用は、生計を土地に依存する人々の食料への権利を考慮しなければならない。


9 近年の土地の産業的な利用や都市化も競合を推し進めている。毎年1950万ヘクタールの農地が産業的な開発や宅地開発向けに転換されている。研究者たちはは農民の土地が鉱業開発プロジェクトや工場建設のために、ほとんど補償もないままに、強制排除のように収用されるケースを報告している。いくつかの地域では、海外からの投資を呼び込むための特別経済地域の設定が、産業用地の拡大を引き起こしている。大規模インフラプロジェクトやダム、高速道路建設なども大きな影響を引き起こしている。2003年から2009年にかけて特別報告者が諸政府に送付した通知の多くの部分は、こうしたプロジェクトに関連する強制排除に関するものであった。

第3章 土地利用者の保護

10 ここまでに言及したような土地への圧力が、土地を巡る紛争を引き起こしている。また未利用地を求め、公正な分配を求める「下からの」農地改革を求めるような社会運動を犯罪と見なす動きが進んでいる。こうした中で、活動に関与している農民の暗殺など、深刻な人権侵害が引き起こされており、特別報告者も政府に対していくつもの通知を送付している。しかし土地に対する圧力の高まりも懸念される。小農民や伝統的漁民、小規模牧畜民、森林に依存する先住民族など、生存のために土地に依存している人々、の権利はほとんど守られていない。この報告では、まず先住民族の状況について触れるものである。先住民族は国際法において独自の保護された領域を持つことが認められている。次には十分に土地への権利が認められていないことが多い小農民の状況について、またその他の土地利用者、特に共有地に依存する漁民や牧畜民に検討する。中心となるメッセージは、土地に関する権利の保障が重要であり、食料への権利を実現するためには不可欠なものであるが、個人的な土地登記の推進と土地権に関する市場の整備が、そのために最もふさわしい手段とは考えられないという点である。

A. 先住民族

11 先住民族は、時に国家に属すると見なされる自分たちの土地における自然資源の開発による被害を受けている。先住民族の土地やテリトリーの領域区分は、多くの障害をはらみ、遅遅として進まない。多くの場合、参加の機会すらない。1991年に発効したILOの169号条約、独立国における先住民族に関する条約では、土地に関する様々な保障を定めている。条約は十分に批准されているとは言い難いが、2007年9月13日に国連総会において61/295決議で採択された「先住民族の権利宣言」がそれを補うものとなり、この分野に関する国際的慣習法の形成に寄与している。宣言はその第8条、(2)(b)において国家は「土地、領域または資源を収奪する目的または効果をもつあらゆる行為」を禁止すべきと定めている。これは169号条約の第18条に相応するものである。また宣言の第10条において、自らの土地または領域からの強制的な移動の禁止するとともに、事前で自由な情報に基づく合意を要求し、正当で公正な補償に関する合意、可能な場合には帰還の選択肢を求めている。


12 加えて、1966年12月16日に採択された「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」の第一条及び「市民的及び政治的権利に関する国際規約」の第一条では「すべて人民は、天然の富及び資源を自由に処分することができる」と定められており、このことは、先住民族が依存する資源やテリトリーからの先住民族の排除に対して先住民族を保護することを含意する。「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」の第5条d)v)も、先住民族コミュニティの土地に対する権利を保護するものとなっている。(訳注:「単独で及び他の者と共同して財産を所有する権利」)先住民族のテリトリーの公的な承認と登録に関する権利は、地域的な人権法によって確認されている。米州人権裁判所及びアフリカ人権委員会は、土地に対する先住民族の伝統的占有は、国家が定める完全な所有権と同等なものとみなし、善意の第三者への法的な移管の結果として土地の占有権を失った場合でも、その土地を回復、あるいは質・面積とも同等の土地を得ることができるとされる。土地に対する先住民族コミュニティの権利はそこに含まれる自然資源への権利も含んでいる。土地所有権とは個人のものだけではなく、しばしばグループやコミュニティに期するものであり、米州人権条約の第21条によって保護されている所有権は、先住民族の集団的権利を構成するものと考えられる。つまり国家は共同体的所有の権利を保護する慣習法的な土地保有システム承認しなければならないであろう。そこでは個人、あるいは氏族、村、民族であろうと、構成する成員の一人が土地を譲渡しようとすることに対して、コミュニティに拒否権を付与するということが考えられる。

13 基本的人権に関する国際法は、先住民族コミュニティとその土地やテリトリー、資源との関係を保護するものであり、国家に対して、その土地の区域を確定し、囲い込みから土地を保全し、その内的な組織のあり方に基づいて土地や資源を利用・管理する権利を尊重することを要求するものである。こうした保障は多くの場合尊重されずにきているが、これまでの判例は,慣習法的な保有権から派生する権利の行使は法的システムにおいて承認され、保護されうることを示している。また共同体的所有の権利、個人ではなく集団としての権利も、個人的所有権に代替するものであることを示している。どちらの場合も、自然資源のその他の利用者の権利の保護を改善するための着眼点となるものである。

B 土地を耕作する小農民 
14 土地へのアクセス及び保有の保障は、小農民が尊厳ある生活を獲得するためにも不可欠のものである。既に述べたように、食料への権利は国家に対して、人々が依存する生産のための資源へのアクセスを剥奪しないようにするという義務を課している。つまり、あるコミュニティが土地に定住し、生計の手段としてそれに依存している時に、食料への権利を尊重するという義務は、特定の条件が満たされない限り、コミュニティのその土地からの排除を禁止することを要求するものである。経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会が定めた、適切な住居への権利と強制的排除に関する第7項の基準や「開発によって引き起こされる排除と移転に関する基本的原則」を満たさないようないかなる排除も行われてはならない。これらのガイドラインは、国家や機関が、強制的排除が引き起こされないような、政策や法律、手続きや予防措置の策定を支援するために、また予防が失敗した際に権利を侵害された人々へに対して、有効な資源を供給するための実務的なツールである。
15 世界人権宣言の第17条、アフリカ人権憲章第14条、人権と根源的自由に関する欧州条約第一議定書第一条、米州人権条約第21条に基づき、所有権に関しても、土地利用者は、特定の条件のもとで、排除から保護されている。どのような条件のもとで排除が認められるかという点は、それぞれで異なっているが、最も共通する用件とは次のようなものである;公的な目的に基づき、有効(あるいは正当)なものであること、(これは単なる民間の利益に寄与するためだけの排除は除外されるということである);差別的ではないこと;手続き法に沿ったものであること;正当な補償を伴わなければならないこと。こうした専横的な収用に対する保護は、違法な占拠に対しては原則的には適用できないが、法的証書によっては認められていない土地の占有や慣習法的保有権に基づく場合には、一般的には適用される。

16 .土地保有への保障を高めることが、小農民の土地への投資意欲を促進するとされ、土地を担保として利用することで融資のコストを削減することができるとされてきた。また植林や、より責任ある土壌や水資源の利用によって、より持続的な農業を促すとされてきた。しかし本来の問題は、土地保有への保障が改善されるべきかどうかではなく、どのように、という点にある。古典的なアプローチは、個人的土地所有権の確立と土地登記簿の整備に基づき、これによって土地に関する取引を容易かつ安全に行うことができようにするというものであった。このアプローチにおいては、土地保有の保障というのは、市場への統合を促進するための手段と見なされており、土地所有権が法的に認められることで、土地を譲渡することも抵当に入れることもできるようになり、そこで離農することもできれば、土地への必要な投資資金を得ることもできるようになる。1970年代後半から、80年代にかけて、また近年ではエルナンド・デ・ソトの著作の影響を受けて、国際的な金融機関は、構造調整政策の一環として土地登記の整備と土地所有権の確定手続きを進めてきた。これによって良好な土地市場が、土地の有効な配分を実現し、経済成長が促進されると期待していたのである。更にこのことは、農村における貧困と食料安全保障の不備に取り組むための鍵になると考えられていた。

17 しかしながら、土地所有権に関する西洋的な考え方を移転する取り組みは、数多くの問題を引き起こすこととなった。土地所有権確定手続きは、透明性を保ち、適切に監視されない限り、腐敗した官僚と共謀する、地域の有力者や海外の投資家の手に握りこまれてしまうのである。更に、こうした手続きは、土地利用者の権利ではなく、形式的な所有者の権利の承認に基づくことで、不平等な土地分配を固定化し、結果的に農地改革に逆行するものとなる。こうした状況は、特に植民地期の不平等な農業構造が残され、ごくわずかの土地エリートが大半の可耕地を所有するような国で顕著である。またこうした手続きは男性だけを優遇する危険性もある。土地保有への保障を改善する目的を持ついかなるプロジェクトも、現存の不均衡を正すことを探らなくてはならない。そうした例としてはカンボジアにおける土地管理プロジェクトが知られている。

18 個人による土地所有権確定は、コミュニティによる土地所有のような土地保有に関する慣習的な権利と対立するような場合には、紛争の火種となり、法的な不確実性を高めることとなる。土地の市場取引と結びついた個人的土地所有権は、コミュニティの土地やコミュニティの共有資源に関する慣習的な保有形態の承認とは矛盾し、特に土地を集約的に利用しないグループや継続的に利用しないグループを不利な立場に置くこととなる。
 
19 最後に、土地所有権に関する市場の設置も、望まない結果を引き起こすこととなる。こうした市場は、より効率的な利用者に土地を割り当てることになるとされているが、これは農業から十分な利益をあげることができない農村居住者に、農業から退出する道を与えるものとなる。世界銀行によると「確実で、揺らぎのない土地所有権は、市場において、より生産性の高い利用や利用者への土地移転を可能とする」と記している。しかし、生産者に対して適切な支援策が講じられない場合に、土地所有権確定が農業生産性に引き起こす影響についてははっきりしない点もある。土地売買で、土地がより有効な土地利用者に渡るのではなく、単に資本へのアクセスがあり、土地購買力が大きな者の手に渡ることも多いのである。事実、土地所有権市場の設置によって、土地が投機的な資本の手に渡り、生産から除外され、生産性が低下し、農村貧困層に土地なし農民が増加するということも引き起こされている。特に貧しい農民たちは、土地を売るように強いられ、その後手の届かない価格によって市場からは排除されてしまう。特に、不作などの影響で債務を負った場合には顕著である。つまりその他の政策と切り離されてしまうと、土地所有権確定手続きは、非生産的な効果を持ち、貧困層の脆弱性を増すこととなる。実際に、個人に対する土地所有権確定によって、土地が資本に転換することで、貧困削減に貢献することができるという考えは、いくつかの仮定に基づいている。土地所有権が担保となり、担保によって、融資が得られ、それが収入をもたらすという仮定である。しかし貧困層、土地が重要かつ唯一の社会的セーフティ・ネットとなっている人々は、融資を得るために自分の土地を担保に入れることに躊躇するものである。また土地所有権を確定することが、民間金融機関からの融資機会を大きく増加させるというのも約束された話ではない。

20 貧困層にとって、個人的な土地所有権確定よりも、土地保有が保障されることの方が重要である。収入が低く、社会保障制度が欠如しているような場合には、農村部の貧困層にとって、土地が社会的なセーフティ・ネットとしての役割を果たし、基本的な生計手段を提供しているのである。言い換えるならば、いくつかの国での経験が明らかにしているように、土地保有の保障と土地権の承認が強い要求に合致しているのに対して、個人への土地所有権確定と土地譲渡性について同じことをいうことはできない。反対に、土地売却を制限することで、土地を売るようにという圧力から小農民を守ることができるのであり、共有地に関する利用権や、土地管理における共同体的な形式を保護することができるのである。完全な所有権のかわりに、使用権を承認する形で土地保有を保障するために、地方の土地権の記録、あるいは少なくとも土地取引を記録するための、安価でアクセスしやすい手法の利用についての経験が増えつつある。ベニンでは「 Plan foncier rural」が実施され、ブルキナ・ファソでも試されている。エチオピアでは1ドルの登録料で証明書が発給されている。分権化された土地権管理としては、マダカスカルの法2005-19による管理が興味深い。

21 土地保有の保障に関して二つの相異なる考え方が存在している。一つは土地所有権確定に基づく土地市場の促進であり、もう一つは、生計手段を安定させるために、関係するグループの権利を拡大しようという方向である。
 
22 いくつもの国で、特にアフリカにおいて、既存の慣習法に基づく権利を公式に法的に認可していこうという動きが広がっている。そこには個人への土地所有権確定への代替案としての集団的権利も含まれている。一般的に、特定の家族の成員も、コミュニティの成員は、その代表を通じても、その土地を自由に処分すること、たとえば売却することはできない。慣習法に基づく権利の承認は、有効な保障を与えるのである。土地に対する長期的な投資に寄与するものである。(未払いの際に土地を取り上げるということはできないが)、融資者は長期における投資を確実にすることができるので、融資へのアクセスも改善することもできるであろう。また賃貸借市場の形成によって、土地へのアクセスを改善することができる。このことは特に教育機会を持たず、土地は持たないものの、労働力を数多く抱える家族に有利である。同時に、慣習法的保有権の承認によって、女性の権利を侵害するような、伝統的な家父長制的土地分配が正統化されていく危険性がある。このことは承認プロセスにおいて、厳格な保護規定を盛り込むことで避けなければならない。

23 慣習法的な保有権が承認される際に、個人と共同体的権利の関係は多岐にわたる。土地に関する共同体的権利が、個人的な権利の集合体として形式化されるケースもある。カンボジアにおいては、土地は先住民族コミュニティ全体のものとされるが、2001年の土地法では、特定のコミュニティの成員が、コミュニティ全体の合意の上で、共有地の一部の土地を授受できるとされている。他のアプローチとしては、地域コミュニティの権威にそれらの権利の管理を認めるというものである。ラテン・アメリカ諸国では、先住民族グループは、既に政治的権利や土地への権利を認められているが、こうしたグループは、土地の管理について一定の自治を獲得することができ、土地保有の権利も保障されている。

24 貧困層の法的なエンパワーメントには次の点を含めなければならない。
(a)土地からの排除に対する保護(b)公的に承認されている権利を有効に守るための手段の提供(法的支援、基本的な法的研修、弁護士補助員)(c)土地利用に関して、土地利用者の支援(d) 汚職撲滅を通じて、土地管理機関の能力強化。個人的土地所有権確定計画は、慣習に基づく利用者の権利が成文化された上で組み合わされ、また土地市場が土地集中に結びつかないようにする条件が定められている時のみ勧められるべきであること。慣習的な土地保有権を認めること。但し、これらのシステムについては詳細に分析し、必要な場合には、女性の権利、共有地の依存する利用者の利用の権利、コミュニティの最も脆弱なグループの権利に配慮するように改編されるべきである。


C 遊牧民、小規模牧民、漁民

25 土地利用者の権利の保護は、農民の土地保有への保障を改善するだけには留まらない。漁民は漁業へのアクセスが必要であるが、海や川へのアクセスとなる土地が柵で囲われることで大きな影響を受けている。遊牧民も育てている家畜のための放牧地が必要である。こうしたグループや移動農業に従事する人々にとって、土地所有権を正式に定め、土地登記を確定するというのは、解決策ではなく、問題でしかない。それは人々が依存している資源へのアクセスをフェンスで断ち切り、土地所有権確定による大規模な囲い込みの被害者を生み出すものなのである。ケニアにおいて、遊牧民の権利は土地の正式認定プロセスにおいて無視され、遊牧民は、大牧場主や稀少資源を求める暴力的な土地収奪の被害者となってきた。更に、土地に対する法的権利を有さないことから、補償すら求めることができなかった。タンザニアにおいては、大規模な土地登記プロセスが5年間にわたって進められた後、遊牧民は数多くの共有草地から排除されたことを報告するとともに、「利用していない」と見なされて、残された放牧地すら失う危険にさらされている。

26 このような集団にとって、共有地の存在は極めて重要なものである。「貧困層の法的エンパワーメント委員会」が記すように、いくつかの法的文化において、放牧地や森林、水、漁場、地表鉱物など自然資源の共同体に基づく管理は、ほとんど自己所有地を有さない人々にとって、資源を管理し、所有するための有効かつ伝統的な手段であると指摘している。こうしたシステムは、承認されるとともに、恣意的な剥奪からしっかり守られなければならない。現実に、現行の国際法において、先住民族に対して適用可能な要件は、少なくとも、伝来の土地に対して先住民族と類似の関係を有し、個人よりもコミュニティを中心とする伝統的コミュニティに対しては拡大して適用されなければならないであろう。このことは、上からの押しつけの管理や、共有資源の剥奪ではなく、直接の利害を有するコミュニティによる地域レベルでのコミュニティ共有資源の管理を促進することになるであろう。こうした取り決めが制度化され、共有財としての機能が認識された上での、共有資源の分権化した管理は非常に有効であることが知られている。共有資源の利用形態について交渉する際に、そうした人々は許容量やまたそれを持続的に利用する方法について最善の情報を有しているのであり、またそうした利用者は共有資源のモニタリングや違反事例の報告などに強いインセンティブを持つ。

2011年9月5日月曜日

資料紹介:モザンビークにおける農業開発

 9月2日に開催された勉強会では、アフリカやウクライナにおける農業投資のあり方、また小規模農家が自給向け農業生産において果たす役割などが報告され、非常に興味深いものであった。
 今回の報告の中でモザンビークにおける農業開発プロジェクトについても触れられた。これまでアフリカにおいても、農業開発が穀物を主体に語られることが多かったが、イモ生産を重視する必要性が指摘された。

 しかしキャッサバをバイオ燃料やその他の工業原料として利用するための大規模生産が進められれば、人々の食料への権利を脅かす危険性はぬぐいきれない。

 モザンビークではJICAによる大規模な農業開発プロジェクトも計画されており、今後のモザンビークにおける農業開発のあり方を検討のために、インターネット上で見ることができる資料を紹介する。資料の詳細はリンクで確認を願いたい。
(この資料は勉強会で紹介されたものではない))

1)JICAプロジェクト関連
①モザンビーク国 日伯モザンビーク 三角協力による熱帯サバンナ農業開発協力プログラム準備調査最終報告書

http://libopac.jica.go.jp/images/report/P0000252732.html

②日・ブラジル連携対アフリカ熱帯サバンナ農業開発協力事業(ProSAVANA)
─ブラジルの「農業革命」をアフリカ熱帯サバンナに移転する─
http://www.jaicaf.or.jp/publications/kyouryoku/vol33_03.pdf
国際農林業協力 Vol.33, No.3 通巻160 号

③ProSAVANA-JBM(日伯モ・三角協力によるモザンビーク熱帯サバンナ農業開発)国際セミナー「モザンビークアグリビジネス~日伯連携協力と投資の機会~」の開催(4月25日)
http://www.jica.go.jp/brazil/office/information/articles/2011/110513.html

④「日本 モザンビーク農業開発協力を本格化 アフリカ農地争奪戦で一角確保?」
農業情報研究所(WAPIC)
http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/agrifood/overseainvest/10031801.htm

2)バイオ燃料関連  
⑤アフリカにおけるバイオ燃料製造プラントの普及可能性とCDM化促進調査研究報告書財団法人 国際経済交流財団
(タンザニア及びモザンビークをケースとしている)
 http://www.jef.or.jp/PDF/j21-1-05.pdf

⑥モザンビークにおけるジャトロファバイオ燃料の持続的生産
 研究代表者名     芋生 憲司 (東京大学大学院農学生命科学研究科 教授)
http://www.jst.go.jp/global/kadai/h2201_mozambique.html

3)イモ、キャッサバ関連
⑦自給的作物研究 モザンビークとタンザニアにおけるキャッサバの生産・加工・流通・消費の現状と政策の課題
http://www.promarconsulting.com/site/wp-content/uploads/files/Cassava_Final_Report.pdf
               
⑧モザンビークのキャッサバ転換―東アフリカにおける商品化の動き―
農林金融 2011年7月号 平澤明彦
http://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n1107re2.pdf

⑨変貌するアフリカ・中東の食料需給―高まる食料の輸入依存度―
農林金融 2011年7月号  清水徹朗
http://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n1107re1.pdf

⑩平成22年度 アフリカにおける農業投資拡大のための検討調査 成果報告書
 サブサハラ地域におけるイモ類を対象とした民間投資を拡大するための調査。対象地域はナイジェリアとガーナであるが、参考までに。
  http://www.mri.co.jp/NEWS/press/2011/__icsFiles/afieldfile/2011/04/27/nr20110422_ssu_j.pdf
英文報告書も次のサイトからダウンロードできる。
http://www.mri.co.jp/NEWS/press/2011/2027817_1401.html


 ちなみに、⑦、⑩は農林水産省の委託事業であり、三菱総合研究所は2010年にも農林水産省から「地球的規模の問題に対する食料・農業・農村分野の貢献手法に関する検討調査」を受託し、ブラジルとパラグアイでの調査を行っている。[1]
  これらは日本政府の進める海外農業投資促進のための基礎調査であると考えられる。また「ウクライナにおける農業投資関連情報の調査・分析(平成22年度)」も農林水産省のWEBに掲載されている。[2]
[1]http://www.mri.co.jp/NEWS/press/2010/2017557_1395.html
[2]http://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokkyo/toushi/chosa_bunseki.html
  海外農業投資に対する行動指針は、ただ定めただけであり、整合性の確認など行われていない一方で、せっせと農業投資を進めるための調査はしている、そういうことであろう。

 青西

9/16 追記

モザンビーク北部における農業開発には、ブラジルとの三角協力を目指すJICAも深く関わっているが、その思惑を超えるスピードで事態は動いているのかもしれない。

 印鑰氏が9月3日付けでツイッターで紹介している記事によると、モザンビーク政府は北部のNiassa, Cabo Delgado, Nampula and Zambéziaなどの6百万ヘクタールに上る土地をブラジルの農業生産者に提供する用意があるという。この土地でブラジルにおけるセラード開発の経験を活かして、大豆などを生産するというのだ[1] 一方、モザンビークの農業大臣は自分の発言の取り消しに躍起になっているようで、三角協力の枠組みでしかないと説明しているようである。しかしブラジルの農業家はモザンビークへの進出について、「アフリカのマット・グロッソだ」、中国への送料も安くなると乗り気のようである。[2]

 最終的に、日本の円借款でインフラを整備し、JICAのプロジェクトで、(若干?)生産面でのリスクが下がったところで、結局小農民を排除して、ブラジルの資本家が流入してくる、ということになるのではないか。そんな懸念を持つ。
[1]   Brazil: Mozambique Cedes Land to Brazilian Agribusiness
 http://globalvoicesonline.org/2011/08/30/brazil-mozambique-agribusiness/
[2]  José Pacheco diz que a concessão de 6 milhões de hectares a brasileiros é uma má interpretação
http://www.canalmoz.co.mz/hoje/20264-jose-pacheco-diz-que-a-concessao-de-6-milhoes-de-hectares-a-brasileiros-e-uma-ma-interpretacao.html