2011年4月26日火曜日

豊田通商と包括提携を結んだアルゼンチンのニデラ社による農園労働者搾取などに関する質問状に対する農林水産省の回答

  4月25日付けで、農林水産省より受け取った質問状の概要は以下のとおりである。

http://cade.cocolog-nifty.com/file/20110425MAFF.PDF

1) 現在アルゼンチンの行政・司法当局によって調査中であり、その結果を見守るべきものと考えます
2) 本件については、現時点でその事実関係がはっきりしておりません。このため、引き続き情報収集に努めるとともに、豊田通商にも照会し、事実関係の把握に努めております。

<回答に対して  青西>
*「結果を見守った後」、どのような対応を取るのか。世界銀行等が進めるRAI(責任ある農業投資原則)においても、この日本政府の「指針」においても、空虚なままに残されている点である。投資対象国の国内法に違反すれば、当然、対象国の法律に基づいて処罰されるべき問題である。
 それ以前に、あるいはそれ以上に、投資国側として何ができるかが求められているのである。それが何もない、投資受け入れ国の国内法のみが、法的あるいは行政的な対処を定めるとすれば、この「指針」も「RAI」も定める必要はないのである。法的拘束力を持たない「自発的原則」は単に投資にお墨付きを与える役割しか持ち得ないのである。

*「事実確認の方法論」について質問したが、回答はない

*「日本国民への情報提供の仕組み」についても回答はない。

 また豊田通商にしても、日本政府の関係省庁にしても、現地報道及びそれに対する見解を何一つWEB サイトで公表していない。市民社会に情報が開かれることがなければ、このような「指針」の履行の監視は困難である。

 

<以下 質問書>


  2011年3月3日
外務大臣    前原誠司殿
農林水産大臣  鹿野道彦殿

外務省   経済安全保障課
農林水産省 食料安全保障課
農林水産省 国際協力課
                                    質問書

 2011年1月24日、2010年11月24日付で送付させていただきました質問書に対して、電話及び文書にて回答を頂きました。当方からの質問書に対応していただきましたことお礼申し上げます。

 その後、アルゼンチンにおけるニデラ社の農園における農園労働者の搾取、労働関係法及び徴税関連法への違反が、アルゼンチン政府当局によって摘発されたとの記事を目にしております。
 このアルゼンチンのニデラ社は昨年11月に日本の豊田通商と包括提携を結んでおります。つきましては、日本政府が定めました「食料安全保障のための海外投資促進に関する指針」に基づき、この事例に対して、特に「指針」の③と④に関連して、日本政府がどのような情報を収集され、どのように対処されたのか、あるいは対処される予定であるのかを公表いただきたく、お願い申し上げます。

 また現地ニデラ社側が否定をしている一方で、アルゼンチン政府の関係当局が摘発を行っている中で、日本政府として、どのような手段によって、事実確認を行われるのか、方法論についても回答頂きたく思います。前回の質問書の回答によると「当事者である株式会社等からヒアリングを行い」ということが書かれておりましたが、今回のような事例においては「当事者」からのヒアリングだけでは不十分かと思われます。このような際に、今後どのような形で対応をされていくのでしょうか。

 前回の質問書にも記させていただきましたが、日本国政府はこの「指針」以外にも、世界銀行などとともに「責任ある農業投資のための行動原則」の策定にも取り組んでいます。この中でも「指針」と同様に、土地と資源に対する権利の尊重、食料安全保障、透明性の確保や、協議と参加、社会的持続性、環境持続性などが取り上げられています。
 このような「指針」や「行動原則」が実効性を持つためには、企業との情報共有を進めるだけではなく、市民社会に幅広く情報が共有されることが不可欠だと考えます。「指針」等を定めるのであれば、輸入食料を利用している日本国民に対して、幅広く情報を提供するための仕組みが構築されることが前提となるべきであろうと考えます。

青西靖夫(開発と権利のための行動センター 代表)
大野和興(日刊ベリタ編集長)
近藤康男
松平尚也(アジア農民交流センター)

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