財団法人地球・人間環境フォーラムのサイトに2012年1月に開催されたシンポジウム 「海外農地投資(ランドラッシュ)の現状とバイオマスの持続可能な利用~日本は今後、どう対応すべきか~」の講演録がPDFにて掲載されています。
詳細は下記リンクよりご確認ください。
http://www.gef.or.jp/activity/economy/stn/biomass_landrush2012.html
詳細は下記リンクよりご確認ください。
http://www.gef.or.jp/activity/economy/stn/biomass_landrush2012.html
FoE のサイトにフィリピンのイサベラ州におけるバイオエタノール製造・発電事業の報告がアップされています(2012年7月)
現地報告(1)では工場の操業開始に伴う工場排水や大気汚染に関する住民の声。
現地報告(2)ではサトウキビ調達現場、特に土地所有権を巡る不正の存在とその不正の告発を行うコストがすべて農民にかかってくる現実、また農業労働者の雇用条件などの問題が指摘されています。
詳細はこちらでお読みください。http://www.foejapan.org/aid/land/isabela/2012July.html
開発と権利のための行動センター 青西
(FoE サイトからの転載です。
フィリピンのバイオエタノール事業の実施に伴い起きている現地での問題を早急に解決するため、積極的な対応をとるよう求める文書を伊藤忠商事株式会社(以下、伊藤忠商事)に提出しました。
文書を提出したのは、国際環境NGO FoE Japan、開発と権利のための行動センター、“No! to Landgrab, Japan”の日本のNGO・市民団体です。
フィリピンで最大規模となる同バイオエタノール事業は、伊藤忠商事と日揮株式会社が出資し進められていますが、原料であるサトウキビの農地 11,000ha(東京ドーム2,353個分)の確保をめぐり、これまでにも、農地収奪や土地利用転換、労働搾取等の問題が指摘されてきました。
こうした問題について、同企業はこれまでNGOに対し、「現地企業が対応する」と回答。しかし、日本企業のパートナーである現地企業は、地元住民から直接訴えを受け、こうした問題を把握しているにもかかわらず、真摯な対応を取っているとは言えず、問題は解決されないまま現在に至っています。
NGO3団体はこうした現状を踏まえ、今回、伊藤忠商事に提出した文書のなかで、以下のような問題を再度指摘しています。
1.サトウキビ栽培地の確保をめぐる土地収奪の助長と生計手段への影響、人権侵害
2.サトウキビ栽培地の確保をめぐる無秩序な土地利用転換
(コメ・トウモロコシ等の食料生産地や森林地域からの転換のケース)
3.サトウキビの栽培に従事する農業労働者の労働条件・環境の問題
(法定最低賃金の不遵守、賃金未払い、福利厚生の未提供等のケース)
4.バイオエタノール製造・発電所の建設に従事する労働者の労働条件・環境の問題
(法定最低賃金の不遵守、福利厚生の未提供等のケース)
また、日本企業「自らが率先して現地の状況を把握し、問題解決のために適切に対処していくことが、企業の社会的責任(CSR)の取り方」だとし、同企業に対し、主に以下のような点を求めました。
・法的な擁護を受けにくい農民、先住民族、農業労働者、契約労働者などに対する特別な配慮と人権侵害を回避するための対処
・早期の問題把握に向けた実効的な苦情処理メカニズムの確立と地域社会の農民、先住民族、労働者、また、NGOとの直接対話
・法的には土地権に問題がないと見せかけている土地での契約を早急に破棄/回避するための実効的な施策
・契約労働者を含む労働者の人権を確実に尊重し、擁護できるよう、労働条件・環境を改善するための実効的な施策
バイオエタノール工場の建設工事はこの2月にほぼ終わり、5月には商業運転の開始が見込まれていますが、現地で起きている問題を早急に解決し、今後、同様の問題が拡大することを未然に回避するためにも、日本企業は、対応を現地企業にのみ任せるのではなく、同社のCSR方針、また、同社も賛同する国連グローバル・コンパクト10原則等の国際基準に則った、迅速かつ積極的な対応を求められています。
>提出文書の本文はこちら[PDF]
>同事業の詳細について
●本件に関するお問い合わせはこちらまで
国際環境NGO FoE Japan 担当:波多江
TEL: +63-929-560-9896(フィリピン) Email: hatae@foejapan.org
このデータは2006年以降の、それぞれの国に対する海外農業投資を集約したものであり、そのほとんどはFarmlandgrabのサイトに報告されたものに依拠しているとのことである。
GRAIN releases data set with over 400 global land grabs(2012/2/23)
http://www.grain.org/article/entries/4479-grain-releases-data-set-with-over-400-global-land-grabs
(数字の記載ミスがあったのでいくつか修正しました。)
この中でモザンビークに焦点を当てて概要を報告する。
1)耕作面積
まず海外農業投資に目を向ける前に、モザンビークの耕作地面積を把握してみたい。
JICAの報告書によると「農耕可能地については約3,600 万ha と報告されているが、実際の耕作地面積はこのうちの16%に相当する570 万ha である」とのことである。
FAOのデータベースでは(2009)、農業用地が約4930万ha、耕作地が約505万ヘクタール、林地が約3923万ヘクタールとされている。(農業用地と林地で総土地面積の7863万haを上回る)
USAIDのサイトは耕作地は380万~530万ヘクタールであろうと見なしている。
つまり土地利用を明確に把握するデータは存在していないというのが実態であるのだが、とりあえず500万ヘクタールを耕作地として考えてみる。
2)GRAINのデータ
GRAINのデータベースによると2006年以降のモザンビークにおける農業投資案件として25件、1,583,149ヘクタールがリストアップされている。現在の耕作面積の30%である。これらがどのような土地で進められているかはわからない。
またこのうちの120万ヘクタールはエタノール生産向けと思われる。
3)JICA-ブラジル-モザンビークプロジェクト
このプロジェクトの準備調査が対象としたナンプーラ州についてJICA報告書は「ナンプーラ州における農地面積は約459 万haと推計され、そのうちの約31%に相当する145万haが耕作地として利用されている」と記載し、一戸あたりの平均所有面積は1ha、またナンプーラ州では70万の農家が存在するとされている。
GRAINのデータベースにある農業投資の総面積は、150万世帯が影響を受ける可能性も秘める規模なのである。
では、果たして、JICAが調査も行わずに、プロジェクト対象地域に含めた、日本の農地面積より広大な、640万ヘクタールは一体どのような土地なのだろうか。少なくともJICAの報告書には明確に示されていないのでわからない。その面積は現在のモザンビーク全体の耕作地よりも大きく、モザンビークの「農業用地(可耕地を意味するのであろう)」の20%近い。このような膨大な面積が「機械化農業に適している」と記載された外交文書に、JICAは調査もせずに調印しているのである!
4)GRAINのデータから把握できるもう一つの問題
今回の三角協力のブラジル側カウンターパートであるEMBRAPAについて、既にブラジルの鉱業開発企業とのジョイント・ベンチャ-でモザンビークに投資することが報告されている。3万ヘクタールのオイル・パーム生産を行うとのことである。
モザンビークにおける収益事業にコミットしているEMBRAPAが、公的事業として行われるJICAの国際協力事業に、ブラジル政府側のカウンターパートとして組み込まれていることは問題ではないだろうか。
またGRAINのデータにあるように膨大な海外農業投資がすすみつつあり、今後様々な問題が発生することが予見される時代に、上記のような投資計画にもコミットしているブラジルのEMBRAPAと組んで、海外農業投資、大規模農業開発のために税金を投入することの是非が強く問われる。
放っておいても民間企業が進めるであろう事業の片棒を担ぐのではなく、小農民の権利と生活を守るためにこそ、私たちの税金が利用されるべきなのである。
モザンビークに関するデータ抽出分はこちら
フィリピン、イサベラ県におけるバイオ燃料プロジェクトが、地域内における土地紛争を激化させる要因となっていることは、以前も報告しました。
今回FoEのサイトにまた新しい事実が報告されています。不明瞭な土地所有権に加えて、経済的・政治的な権力を有する者による違法な土地取引や土地登記によって、農民から土地が奪われ、サトウキビ農園に転換されつつあるのです。
【現地報告】農地収奪・作物転換の現状(続報)2012年2月13日http://www.foejapan.org/aid/land/isabela/20120213.html
農地契約を請け負う現地企業であるEcofuel 社は「土地の所有権の法的状況が曖昧であったり、所有権に問題のある土地では契約しない」との見解を示し、契約後に問題が発覚した場合は契約を破棄することを示してきました(2011年6月、国際NGO調査団との会合で回答)が、現実には、その対応も不十分であることが報告されています。
農地賃貸契約を結ぶ際に提出された権利書が「正当であるように思われた場合」には、あえてその権利書の内容について精査することはないと思われます。今回FoEのサイトにて報告されているように、農民が権力者による立ち退き命令に負けず、脅迫にも負けず、所有権の真偽を、自ら調べて告発しない限り、問題が存在することすら明らかにはならないのです。
Ecofuel社が、農民が泣き寝入りしている事例まで、わざわざ調べに回ってくれるわけもないのであり、Ecofuel社からの報告のみでは、現地親会社のGFII社も投資側の伊藤忠商事他も真実をつかむすべはないのです。
このバイオ燃料プロジェクトに投資している日本企業/伊藤忠商事が、「現地企業が所有権に問題のある土地では契約しない」と語っていることを根拠に、違法な土地取引や土地収奪がないと判断する根拠は明らかに揺らいでいます。
地域内の土地紛争に関して調査する第三者機関を設置し、透明かつ迅速に調査できるような仕組みを作るような、地域内の政治的・経済的な紛争のただ中に身をさらすような深いコミットメントをしない限りは、このバイオ燃料プロジェクトの正統性を保証することは難しいものと思われます。
開発と権利のための行動センター
青西靖夫
2012年2月7日付けの丸紅株式会社(以下「丸紅」)ニュースリリースによると「アンゴラ共和国・地質鉱山工業省より製糖・バイオエタノール工場新設請負契約を受注しました。」とのことである。
http://www.marubeni.co.jp/news/2012/120207.html
このプロジェクトはアンゴラ南部のクネネ州(Cunene province)にサトウキビを原料とする精糖・バイオエタノール生産拠点を確立する計画のようであり、丸紅は、設備の設計から試運転までを一括で受注したということである。
アンゴラでは現在、サトウキビとバイオエタノール生産がブームとなっているようであり、北部においても、ブラジル企業と国営石油会社のジョイント・ベンチャーでのバイオエタノール生産が進められているようである。
http://www.biocom-angola.com/
クネネ州におけるプロジェクトの詳細は把握できていません。
青西