このブログでお伝えした「三井物産の子会社であるマルチグレイン社が先住民族の土地略奪に加担 」という記事に関連して、5月10日付けで三井物産株式会社に対して質問書を送付。
それに対して、5月23日付けで昨日、三井物産社から回答を受け取った。
以下が簡単な整理であり、原文は次のサイトにpdfでアップした。http://cade.cocolog-nifty.com/file/20110523Mitui.pdf
・事実確認の結果、指摘されたような違法な農園からの買い付けはなかった
・サプライチェーンにおける企業の社会的責任の重要性は認識している
・IBAMAのデータベースで当該地域と重複がないことを確認し、買い付けを
行っている。疑わしい事実が判明した際には、一切取引を行わない。
・Reporter Brasilで指摘された事件について
-IBAMAの当初情報で問題なしとされていた農家が、違法地域に農場を持
っていることを後日IBAMAが指摘した。
-マルチグレイン社はIBAMAに買い付け契約時にはそのような情報が無か
ったことをIBAMAに対して明らかにし、
-違反の事実があれば引き取れないとして、引き取りを拒否
-結果として、マルチグレイン社は違法に栽培された当該大豆の引き取り
は一切行っていない。
<以下、青西 コメント>
・今後とも現地の情報を把握し、上記回答に矛盾する事実が判明した場合には、適切な対応を要求すること
・今後とも、先住民族の土地権などが脅かされないように注視していくこと
・マルチグレイン社が関与していなかったとしても、先住民族の土地を脅かし、森林を破壊して広がっていく大豆生産、日本が輸入しているかもしれない大豆に関して、日本社会にも情報を積極的に伝えていくこと
などが必要だと考えている。
<以下質問書>
2011年5月10日
三井物産株式会社
取締役社長 飯島彰己殿
質問書
先般、ブラジルにおいて、マルチグレイン社が、先住民族の土地略奪に関与していると告発する報告がなされております。[1] 報告によると、政府によって定められた先住民族のテリトリーを違法に占拠して大豆耕作を行っている農場の中に、マルチグレイン社と契約している農園があるとのことです。またこれらの農場は環境法についても違反しているとのことです。
このマルチグレイン社につきましては、三井物産株式会社の連結子会社であるとのニュースリリースも読ませて頂いております。[2]
他方、日本国政府は2009年(平成21年)8月20日に外務省及び農林水産省の共催によって第5回「食料安全保障のための海外投資促進に関する会議」を開催し、「食料安全保障のための海外投資促進に関する指針」を取りまとめております。
この中で、日本国の海外農業投資においては、「被投資国における農業の持続的可能性を確保」することが重要であることを認め、政府及び関係機関は、「本指針に基づいて海外農業投資の促進策を講ずるに当たり、以下の行動原則との整合性を確認する」ことを定めております。[3]
今回のマルチグレイン社に関する報道を読みますと、マルチグレイン社はこの「指針」の①、③、④、⑤などに抵触しているものと考えられます。
つきましては、三井物産株式会社としての、下記の項目についての現状の把握、及び今後の対応についてお聞かせ頂きたくお願い申し上げます。
1)マルチグレイン社が、生産物を購入している農園、もしくは生産に関わる契約を結んでいる、あるいは直接生産を行っている農園と、Terra Indígena Maraiwatsede他の先住民族テリトリーが重複しているケースが存在しているのかどうか。
2)重複している場合にはどのような法的な位置づけとなっているのか。
3)マルチグレイン社が、購入、もしくは生産に関する契約、あるいは生産を行っている農園において、IBAMA(ブラジル環境・再生可能天然資源院)からの指導、差し止め、差し押さえ等の行政措置の対象となったケースは存在しているのかどうか。
4)上記のようなケースが存在した場合には、三井物産株式会社としてどのような対処を行ったのか。
青西靖夫(開発と権利のための行動センター 代表)
大野和興(日刊ベリタ編集長)
近藤康男(アジア農民交流センター)
松平尚也(アジア農民交流センター)
[1] 三井物産の子会社であるマルチ・グレイン社が先住民族の土地略奪に加担
http://cade.cocolog-nifty.com/ao/2011/03/post-9179.html
元の記事は次のサイトなど
Soja pirata na Terra Indígena Maraiwatsede
http://pib.socioambiental.org/pt/noticias?id=99244
http://www.revistasina.com.br/portal/questao-indigena/item/117-soja-pirata-na-terra-ind%C3%ADgena-maraiwatsede
[2]ブラジル農業生産・穀物物流事業マルチグレイン社株式の追加取得基本合意(子会社化)
http://www.mitsui.com/jp/ja/release/2011/1193266_1822.html
[3] 食料安全保障のための海外投資促進に関する指針 より一部抜粋
http://www.mofa.go.jp/ICSFiles/afieldfile/2009/08/20/G0858_J.pdf
4 我が国の行動原則及びこれに関する国際的取組等
(1)行動原則
海外農業投資は、被投資国における農業の持続可能性を確保しつつ、投資側・被投資側の双方が裨益する形で実施することが重要である。この観点から、政府及び関係機関は、本指針に基づいて海外農業投資の促進策を講ずるに当たり、以下の行動原則との整合性を確認する。同時に、被投資国側にも投資環境の整備(収用の原則禁止や輸出規制の抑制等)や投資関連情報の提供などを求めていく。
① 被投資国の農業の持続可能性の確保
(例:投資側は、被投資国において、持続可能な農業生産を行う。)
② 透明性の確保
(例:投資側は、投資内容について、契約締結時等において、プレスリリース等により、開示する。)
③ 被投資国における法令の遵守
(例:投資側は、土地取引、契約等被投資国における投資活動において、被投資国の法令を遵守する。)
④ 被投資国の農業者や地域住民への適正な配慮
(例:(イ)投資側は、投資対象の農地の農民及び所有者に対し、その農地の取得及びリースに関し、適切な対価を提供する。(ロ)投資側は、現地における雇用について、適切な労働条件の下、農民等従業員の雇用を行う。)
⑤ 被投資国の環境への適切な配慮
(例:投資側は、投資に当たって、土壌荒廃、水源の枯渇等、被投資国の環境に著しい悪影響を与えてはならない。)
⑥ 被投資国における食料事情への配慮
(例:(イ)投資側は、被投資国における食料事情に悪影響を与えないように配慮する。(ロ)投資側は、被投資国の主食作物を栽培している農地を他の作物に転換することにより主食作物の生産量を著しく減少させるような投資は行ってはならない。)
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