2011年8月31日水曜日

フィリピン:混迷を深めるバイオ燃料プロジェクト

  現地報道及び現地政府発表によると、8月24日未明、30名程度の新人民軍が、イサベラ州、サン・マリアーノのデル・ピラール村(Del Pilar)のアミサン集落(Amisan)のサトウキビ農地を襲撃し、現地法人のエコ・フュエル社の所有するトラクターを一台焼き払ったとのことである。[1]
 エコ・フュエル社は、伊藤忠商事や日揮が投資して、現在建設が進められているバイオ燃料精製プラント(GFII社)に原材料であるサトウキビを供給する役割を担っており、このエコ・フュエル社が借地してサトウキビを生産している農地で事件が発生したものと思われる。
 この事件に対しイサベラ州知事は、この事件を非難するととも「対話を求めている」との声明を発表した。[2]
 
 既にこの地域ではサトウキビを原料とするバイオ燃料プロジェクトが動き出して以来、もともと不透明であった土地所有権を巡って地域内での社会対立が深化しており、今回の事件で地域の状況は更に混迷を深めることとなった。[3]

  これまで現地NGOなどは、バイオ燃料プロジェクトの撤退とともに、地域の軍の駐屯地撤退や人権尊重を求めてきているが、今回の事件が、軍による人権侵害の口実となることがないように注視していく必要がある。またいかなる形であろうと暴力的な介入を拒否するとともに、サン・マリアーノにおける社会紛争の平和的な解決を求めていくことが必要であろう。

 青西
  
 
[1]NPA rebels raid bioethanol plantation, burn tractor in Isabela
http://www.tribuneonline.org/nation/20110825nat4.html
[2]Governor Dy wants dialogue, not war with rebels
 http://www.pia.gov.ph/?m=7&r=r02&id=51340
[3]フィリピンにおけるバイオ燃料プロジェクトが引き起こす社会紛争
http://landgrab-japan.blogspot.com/2011/06/blog-post.html

*現地NGOによる報告書
NOT ONE IDLE HECTARE:
Agrofuel Development Sparks Intensified Land Grabbing in Isabela, Philippines

http://foodsov.org/resources/08222011IFFM_Report_Final.pdf

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