このデータは2006年以降の、それぞれの国に対する海外農業投資を集約したものであり、そのほとんどはFarmlandgrabのサイトに報告されたものに依拠しているとのことである。
GRAIN releases data set with over 400 global land grabs(2012/2/23)
http://www.grain.org/article/entries/4479-grain-releases-data-set-with-over-400-global-land-grabs
(数字の記載ミスがあったのでいくつか修正しました。)
この中でモザンビークに焦点を当てて概要を報告する。
1)耕作面積
まず海外農業投資に目を向ける前に、モザンビークの耕作地面積を把握してみたい。
JICAの報告書によると「農耕可能地については約3,600 万ha と報告されているが、実際の耕作地面積はこのうちの16%に相当する570 万ha である」とのことである。
FAOのデータベースでは(2009)、農業用地が約4930万ha、耕作地が約505万ヘクタール、林地が約3923万ヘクタールとされている。(農業用地と林地で総土地面積の7863万haを上回る)
USAIDのサイトは耕作地は380万~530万ヘクタールであろうと見なしている。
つまり土地利用を明確に把握するデータは存在していないというのが実態であるのだが、とりあえず500万ヘクタールを耕作地として考えてみる。
2)GRAINのデータ
GRAINのデータベースによると2006年以降のモザンビークにおける農業投資案件として25件、1,583,149ヘクタールがリストアップされている。現在の耕作面積の30%である。これらがどのような土地で進められているかはわからない。
またこのうちの120万ヘクタールはエタノール生産向けと思われる。
3)JICA-ブラジル-モザンビークプロジェクト
このプロジェクトの準備調査が対象としたナンプーラ州についてJICA報告書は「ナンプーラ州における農地面積は約459 万haと推計され、そのうちの約31%に相当する145万haが耕作地として利用されている」と記載し、一戸あたりの平均所有面積は1ha、またナンプーラ州では70万の農家が存在するとされている。
GRAINのデータベースにある農業投資の総面積は、150万世帯が影響を受ける可能性も秘める規模なのである。
では、果たして、JICAが調査も行わずに、プロジェクト対象地域に含めた、日本の農地面積より広大な、640万ヘクタールは一体どのような土地なのだろうか。少なくともJICAの報告書には明確に示されていないのでわからない。その面積は現在のモザンビーク全体の耕作地よりも大きく、モザンビークの「農業用地(可耕地を意味するのであろう)」の20%近い。このような膨大な面積が「機械化農業に適している」と記載された外交文書に、JICAは調査もせずに調印しているのである!
4)GRAINのデータから把握できるもう一つの問題
今回の三角協力のブラジル側カウンターパートであるEMBRAPAについて、既にブラジルの鉱業開発企業とのジョイント・ベンチャ-でモザンビークに投資することが報告されている。3万ヘクタールのオイル・パーム生産を行うとのことである。
モザンビークにおける収益事業にコミットしているEMBRAPAが、公的事業として行われるJICAの国際協力事業に、ブラジル政府側のカウンターパートとして組み込まれていることは問題ではないだろうか。
またGRAINのデータにあるように膨大な海外農業投資がすすみつつあり、今後様々な問題が発生することが予見される時代に、上記のような投資計画にもコミットしているブラジルのEMBRAPAと組んで、海外農業投資、大規模農業開発のために税金を投入することの是非が強く問われる。
放っておいても民間企業が進めるであろう事業の片棒を担ぐのではなく、小農民の権利と生活を守るためにこそ、私たちの税金が利用されるべきなのである。
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