2012年10月23日火曜日

日系企業出資のバイオエタノール事業に反対する農民らがサトウキビ切り倒す

 

10月16日付けの「まにら新聞」が次のような記事を掲載しています。

まにら新聞10月16日
 ルソン地方イサベラ州で伊藤忠商事と日揮が出資するサトウキビを原料とするバイオエタノール事業で、事業に反対する地元農民と農民団体50人が15日午後、サトウキビ畑に植えられているサトウキビ約100株を切り倒した。

 農民の要求は、サトウキビ畑の土地の所有権問題の解決。農民はもともと、農地でコメやトウモロコシを栽培し、生計に充てていた。しかし、比の民間企業「エコフューエル・ランド・デベロップメント社」が農民に無断で、サトウキビに転作したという。

 50人は、同州デルフィンアルバノ町の農地2500平方メートルで、刃渡り約30センチのボロ(長刀)を使い、サトウキビを1本ずつ切り倒した。この間、同社の現地責任者が農園に駆けつけ、土地問題の解決策を提示したが、農民側を止められなかった。

 エコフューエル社は、伊藤忠商事と日揮が出資する「グリーン・フューチャー・イノベーションズ社」の提携企業。

http://www.manila-shimbun.com/photo204473.html

(記事を読むためにはマニラ新聞にご登録ください)

 

付記: この撤去作業の後、10月20日(土)、ECOFUEL社本社のCSR/渉外担当トップが村を訪問し、ECOFUEL社がこれまで契約していた第三者(隣町の村長)が当該農地の所有権を持っていなかったことを認めたということです。ECOFUEL社は、FoEのWEBサイトの報告(今年2月)でも指摘していた偽の証明書のみで契約をしていたとのことです。http://www.foejapan.org/aid/land/isabela/20120213.html

フィリピンにおけるバイオ・エタノール事業について日本企業に公開質問状を提出

2012年10月16日

以下FoE Japan のサイトより転載

10月16日(火)、FoE Japanを含む日本のNGO・有志個人から伊藤忠商事株式会社(以下、伊藤忠商事)に対し、同社、および、日揮株式会社が出資して進めるフィリピンのバイオエタノール事業に関し、公開質問状を提出しました。 

フィリピンで最大規模のバイオエタノール製造が行なわれる同事業に関しては、原料であるサトウキビの農地11,000ヘクタール(東京ドーム2,353個分)の確保をめぐり、これまでにも、現地農民組織や国際NGOから、農地収奪や土地利用転換、労働搾取等の問題(>詳細)が指摘されてきました。
また、今年5月下旬に工場の操業が開始されてからは、周辺地域における悪臭、大気・水質汚染等の問題(>詳細)が報告されています。(工場の操業は8月上旬から停止中)
日本のNGOも今年2月に意見書を提出するなど、早急な問題の解決を日本企業に求めてきました(>詳細)が、伊藤忠商事からは「指摘事項の事実確認をしている」との回答ばかりで、意見書提出から半年以上経つ今も、事実確認の結果や対応に関する回答はありませんでした。
今回の公開質問状では、現地企業任せではなく、「自らが率先して現地の状況を把握し、問題解決のために適切に対処していくことが、企業の社会的責任(CSR)の取り方」であると指摘。今年12月と言われている本格的な工場の操業を前に、問題の解決が進まない現場の状況を憂慮し、日本企業のより積極的な関与を促すとともに、以下の点に関する現場での問題状況と対応について、4週間以内の回答を同社に求めています。

 

1.サトウキビ栽培地の確保をめぐる問題
2.サトウキビ栽培に従事する農業労働者の労働条件等の問題
3.工場の操業に伴う新たな問題
4.早期の問題把握と解決に向けた対応と現地住民との対話
公開質問状の本文はこちら(PDF)

プロサバンナ事業(日本援助)に関するモザンビーク農民連盟の声明

 

日本政府、国際協力機構(JICA)などが関与してモザンビークにおいて進めつつある「プロサバンナ事業」に対してモザンビークの農民組織が声明文を発表。

 このプロジェクトを農民のニーズを組み入れないトップダウンの政策の結果であり、大規模農業の展開が、農民の土地を奪い取る危険性があること、社会動乱を引き起こしかねないことなどを指摘している。

以下、声明文の日本語訳である。

União Nacional de Camponeses (UNAC)

プロサバンナ事業に関する声明

(日本語)

我々、ナンプーラ州農民支部、ザンベジア州農民支部、ニアサ州農民連盟、カーボデルガード州農民連盟の女性農民と男性農民、全国農民連盟(UNAC)の全メンバーは、2012年10月11日にナンプーラ市に集まり、プロサバンナ・プロジェクトに関する分析と議論を行った。

プロサバンナは、モザンビーク共和国、ブラジル連邦共和国、日本の三角事業であり、14百万ヘクタールにも及ぶニアサ、ナンプーラ、ザンベジア州の14ディストリクト(郡)を焦点とするナカラ回廊開発のための巨大農業開発事業である。

当該プロジェクトは、ブラジルのセラードにおいて日伯両政府によって実施された農業開発事業に触発されて行われたものである。セラード開発は、環境破壊や同地に暮らしていた先住民コミュニティの壊滅をもたらし、今日、セラードでは、大規模な産業としての農業やモノカルチャー栽培(主に大豆)が進んでいる。ナカラ回廊地域は、ブラジルのセラードと類似するという気候上のサバンナ性や農業生態学的な特徴、国際市場への物流の容易さにより(当該プロジェクト地として)選ばれた。

プロサバンナ・プロジェクトについて耳にするようになって以来、本事業関係者(モザンビーク、ブラジル、日本政府)による情報の不足、透明性の減少は顕著となっており、以上に言及した理解に至った。

我々男女の農民は、このような手法、プロセスのすべてにおける市民社会組織、特に農民組織らの排除や低い透明性に特徴づけられるモザンビークでのプロサバンナの立案と実施を非難する。プロサバンナに関する深い分析に基づき、我々農民は以下の結論に至った。

  • プロサバンナは、ナカラ回廊の農民ら自身の基本的なニーズ、展望、そして懸念に関する配慮を欠くトップ・ダウン式の政策の結果である。
  • 我々は、モノカルチャー(大豆、サトウキビ、綿など)の大規模農業プロジェクトのために主張される、農民の土地の収用やコミュニティの移転のいかなるイニシアチブも強く非難する。
  • 我々は、アグリビジネスを目的とし、モザンビーク人農民らを被雇用者や農業労働者に変えるブラジル人農家の入植を非難する。
  • 地域の実態として、土地は農民によって休耕技術の資源として使われており、土地の拡大は不可能となっているにもかかわらず、ナカラ回廊周辺の何百万という土地を要求するプロサバンナという事業に対して、我々は大きな懸念を認識する。

プロサバンナの立案と実施プロセスにおいて顕著になったやり方を考慮すると、我々農民は、次の影響が予想される点について警鐘を鳴らす。

  • 土地の収用と移転のプロセスの結果、モザンビークで土地なしコミュニティが現れること。
  • ナカラ回廊周辺およびそれ以外の地域における頻繁な社会的動乱の発生。
  • 農村コミュニティの貧困化と自給自足の為の代替手段の減少。利権争いと汚職の増加。
  • 化学肥料や農薬の超過的使用の結果としての土壌の疲弊と水資源の汚染。
  • アグリビジネス事業のための森林伐採の結果としての生態系の不均衡。

モザンビークあるいはナカラ回廊地域に投資するのであれば、地元農民の農業や経済の発展のために適切な投資が行われるべきであり、我々はそれを要求する。我々、UNAC並びにVia Campesinaのメンバーは、それこそが、唯一尊厳があり意味のある雇用を生み出すことができる農業であり、農村人口流出を防ぎ、モザンビークの全国民のために質量ともに十分な食料を生産し、食料主権の達成の道に貢献すると認識している。

我々は、モザンビークにおける農業分野の開発のオルタナティブとして、食料主権に基づくアグロエコロジー的生産モデルと農民農業への強くかつ忠誠的なコミットメントを継続する。このモデルは、持続可能性のすべての側面に結びついており、実践において自然に寄り添ったものである。

農民の農業は、地域経済の主柱であり、農村における雇用を維持し、増加させるのに役立ち、都市や村落の生存を可能にする。協働が、自身の文化やアイデンティティを強めることを可能とする。このオルタナティブなモデルにおいて、開発政策は、社会的にも環境的にも持続可能であり、民衆の現実のニーズや課題に基づいて組み立てられなければならない。

農民は生命や自然、地球の守護者である。小農運動としてのUNACは、農民の基礎(土壌の尊敬と保全、適切で適正な技術の使用、参加型で相互関係に基づく農村開発)に基づいた生産モデルを提案する。

現在、国連は、FAOを通じて、世界の、特に開発途上国の八人に一人が飢えに苦しんでいると報告している。モザンビークもこれに含まれる。したがって、モザンビーク政府の優先順位は、国内消費のための小農生産による食料生産であるべきであり、社会の多様なセグメントを包摂し、内発的な潜在性を発展させることを試みるべきである。

UNAC 25年に及ぶ食料主権のための農民の闘い!

よりよい正義、豊かさ、連帯のある社会の形成のための農民(男性、女性、若者)を主人公とするための闘い

2012年10月11日ナンプーラ

下記原文(ポルトガル語)より和訳http://www.unac.org.mz/index.php/7-blog/39-pronunciamento-da-unac-sobre-o-programa-prosavana

2012年10月16日火曜日

ランドラッシュに関する記事掲載中

 

財団法人 地球・人間環境フォーラムのニュースレターである「グローバルネット」に隔月でランドラッシュに関する記事が掲載されています。

詳細は下記サイトから。

http://www.gef.or.jp/activity/publication/globalnet/index.html

ランドラッシュ~世界の農地はいま
世界各地でランドラッシュと呼ばれる大規模な国際的土地取引が起こっている。土地取引により、もともと経済的な基盤の弱い小農民や現地住民をさらなる貧困へ追いやるケースも出てきており、大きな問題をはらむ動きとなっている。世界の環境、土地、水、食糧問題を考える上で、ランドラッシュの動きは、今後私たち市民が考えるべき大切なテーマとなっていえるだろう。しかし日本ではまだまだ情報が少ないのが現状だ。この連載では、日本でランドラッシュの問題に取り組むNGOのメンバーであるAMネット代表理事 松平尚也氏と開発と権利のための行動センターの青西靖夫氏が、その概況や事例を紹介しその課題や解決に向けた動きを探る。(2012年4月開始。偶数月連載)

ランドラッシュに関するシンポジウム 講演録

 

財団法人地球・人間環境フォーラムのサイトに2012年1月に開催されたシンポジウム 「海外農地投資(ランドラッシュ)の現状とバイオマスの持続可能な利用~日本は今後、どう対応すべきか~」の講演録がPDFにて掲載されています。

詳細は下記リンクよりご確認ください。

http://www.gef.or.jp/activity/economy/stn/biomass_landrush2012.html

フィリピンバイオエタノールプロジェクトを巡る問題

 

FoE のサイトにフィリピンのイサベラ州におけるバイオエタノール製造・発電事業の報告がアップされています(2012年7月)

現地報告(1)では工場の操業開始に伴う工場排水や大気汚染に関する住民の声。

現地報告(2)ではサトウキビ調達現場、特に土地所有権を巡る不正の存在とその不正の告発を行うコストがすべて農民にかかってくる現実、また農業労働者の雇用条件などの問題が指摘されています。

詳細はこちらでお読みください。http://www.foejapan.org/aid/land/isabela/2012July.html

開発と権利のための行動センター 青西