国際協力機構(JICA)よりの回答です。
回答から簡単に整理します。
-現時点での計画書は「日伯モザンビーク三角協力による熱帯サバンナ農業開発協力プログラム準備調査報告書」の別添資料にある三カ国MOUのみである。
MOUは了解覚書(りょうかいおぼえがき、Memorandum of Understandingの略)の意味で、現時点では英文の文書しか公開されていないということとなる。
-2012年2月より「ナカラ回廊農業開発マスタープラン策定プロジェクト」が開始され、その中で開発計画が定められる。また既に開始されている農業研究プロジェクト、農業開発マスタープラン策定事業を実施する中で、大中小農業の共存を通じた地域の農業開発の在り方を検討していく
-公的資金、民間資金による土地取得は、現時点では予定されていないが、対象地域は国有地であり、モザンビーク政府が定めた土地利用制度に基づき、将来モザンビーク以外の国からの民間資本による農地利用の可能性があるものと考える。
この回答から読み取れるものは、大規模農業の支援を含めたプロジェクトが実施され、またモザンビーク政府の方針のもと、対象地域である「国有地」における民間資金等による土地取得に基づく大規模農業が行われる可能性を含んだプロジェクトであるということである。
また、この「準備調査報告書」は、次のように記している。
「ブラジル側(EMBRAPA)は独自の調査結果をも踏まえて、ナカラ回廊地域の農業開発について、調査の最終段階で以下の提言をした。」
「『準備調査』は、国道13 号線沿いに、ナンプーラ州並びにニアサ州およびザンベジア州の一部を調査対象地域とした。しかしながら、この地域には、①大規模農業を展開する農地はない」
「EMBRAPA(注:ブラジルの研究機関) の研究者チームは、ニアサ州およびナンプーラ州のナカラ回廊の北西には約640 万ha にもおよぶブラジルのセラード類似土壌の存在を確認した。これらセラード類似土壌は、上記1)の調査対象地域の約12%程度しか占めていない
(残る88%は、本調査の対象地域とした国道13号線沿いの12 郡外に分布する)。
つまり、ブラジル側の「大規模農業を展開する農地」という意向のもと、JICAは「準備調査」段階では想定してもいなかった地域を、「急遽」プロジェクト地域に含めることとし、かつその土地は「国有地」であるので、民間資本による(大規模)土地取得が起こりえることを許容しつつ、その土地における大規模農業の展開をも支援していこうとしているのである。
どのような土地であるのか、当方が質問した「対象となる土地の現在の権利状況、利用状況」についても、「国有地である」との一面的かつ断片的な情報のみを有するだけであるにもかかわらず、プロジェクト対象地域に組み込み、大規模機械化農業を推進しようとしているのである。
アフリカにおいては、複雑な利用慣行と権利関係のもとにあることが多々指摘されている「国有地」であるにも関わらず、JICAは、モザンビーク政府の方針に従うことで、責任を回避できると考えているのであろうか。(文責 青西靖夫)
当案件についての関連情報はこちら
http://landgrab-japan.blogspot.com/2011/09/blog-post.html
以下、回答書
別途 pdf文書を添付する。pdf文書がオリジナルである。
http://cade.cocolog-nifty.com/ao/JICAmozambique.pdf
2011年12月27日
No! to Land Grab, Japan御中
独立行政法人国際協力機構アフリカ部
「日伯モザンビーク三角協力による熱帯サバンナ農業開発協力プログラム」に関する御質問への回答について
平素より当機構へのご支援を頂きまして誠に有難うございます。さて、2011年12月10日付でお寄せいただいたご質問に対し、別紙のとおり回答いたしますところ、ご確認頂ければ幸いです。
以上
(別紙)
2011.12.27
JICAアフリカ部
No!toLandGrab,Japanからの質問への回答
1. 最終合意された計画書について
公開されているサイトなどでは最終調査報告書を含め経過的な資料については提供されていますが、成案となった計画書を提供いただくことは可能でしょうか。
(回答)現時点で計画書と呼びうるものは、「日伯モザンビーク三角協力による熱帯サバンナ農業開発協力プログラム準備調査報告書」別添資料の三カ国MOUのみです。2012年に開始するナカラ回廊農業開発マスタープラン策定プロジェクトの結果を受け、開発計画が策定されていくことになります。
2. 計画の進捗状況と計画の終了時期について
(1) 本計画は概ね2010年~2014年期の第1段階、2015年から始まる第2段階がありますが、現在の進捗状況を概括的に教えていただけますか。
(回答)2011年5月より「ナカラ回廊農業研究・技術移転能力向上プロジェクト」を実施中です。また、2012年2月より「ナカラ回廊農業開発マスタープラン策定プロジェクト」が開始予定となっております。第2段階に関しては現時点では具体的な構想は議論されておりません。
(2) また、公開された資料では第2段階の終了時期が曖昧ですが計画の終了時期をいつに設定されていますか。
(回答)現時点では特に明確な終了時期を想定しておりません。事業の進捗状況等を見極めながら三カ国で決定していく事項と考えております。
3. 投資に際しての地域住民・農業者、環境への配慮などについて
この点については、日本政府の「行動原則」においても掲げられています。また、モザンビークにおける多くの事例はこの点での不充分さが海外報道でも指摘されています。
(1) どのように実施されたのでしょうか、あるいはされる予定でしょうか。
(回答)現時点では当機構の事業に関連する投資は行われておりません。
(2) 地域利害関係者への配慮に関して、手法・同一地域での開催頻度・関係者の参集状況・反応について教えていただけますか。
(回答)これまで「ナカラ回廊農業研究・技術移転能力向上プロジェクト」に関連する調査実施時には、リシンガ(ニアッサ州)、ナンプラ(ナンプラ州)周辺において社会調査を実施し、また地域住民団体代表者の参加を得たワークショップ(1回、約30名が参加)を行い、三カ国協働で事業計画を作成しております。これら一連の活動はモザンビーク政府関係者からは好意的に受け入れられております。
環境配慮について、その実効性を担保する法的・行政的な措置などはあるのでしょうか。また適切なものをお考えでしょうか。その理由・根拠は如何なるものでしょうか。
(回答)JICAが定めた環境配慮ガイドラインのみならず、モザンビーク国環境活動調整省が環境法に基づき環境影響評価を行います。
4. 「地域農業開発計画」と「商業的規模の農地への投資」について
2010年3月の調査報告書によれば、本計画は「環境保全に配慮した持続可能な農業開発の実現」を目指したものと考えますが、その中に①付加価値の高い輸出志向型を含むアグロインダストリーを起点とした地域農業開発計画の推進、②640万haの商業的規模での農地への投資と大規模農業生産という性格の異なる2つの計画が含まれていると理解します。
(回答)既述した農業研究プロジェクト、農業開発マスタープラン策定事業を実施する中で、大中小農業の共存を通じた地域の農業開発の在り方を検討していくこととしており、その結果はモザンビーク政府により活用されることとなります。
(2) 前者①の計画と②の計画の対象地域の重なりはあるのでしょうか。
(回答)①②の共存を目指しており、対象地域に重なりが出てくる可能性はございます。
(3) 対象地域の重なりの有無に限らず、既存の耕地が570万haほどであるのに対してブラジル型の大規模農業投資の対象が640万haに及ぶことは、当初の計画の狙いである中小規模農家を対象とする地域農業開発計画をも頓挫させる懸念を持たざるを得ません。また大規模企業的経営と農民的経営の競合により自給的農業、家族経営農業の脱落が必至と考えます。
この点について如何お考えでしょうか。
(回答)本事業は大中小規模農業の共存を目指すものであり、中小規模農家を対象とする地域農業開発計画を頓挫させないための開発モデルを策定することが事業の目的の一つです。今後もこのモデルづくりに資する事業をモザンビーク政府と協働で実施してまいります。
5. 本計画においてモザンビーク以外の国からの公的あるいは民間資本による農地取得(利用あるいは占有)は予定されていますか?
(1) 権利取得が有り得る場合、対象となる土地の現在の権利状況、利用状況はどのようになっているでしょうか?
(回答)現時点では予定されておりません。同地域は国有地であり、モザンビーク政府が定めた土地利用制度に基づき、将来モザンビーク以外の国からの民間資本による農地利用の可能性があるものと考えます。
最後に本事業の計画及び当機構の取組イメージに関しましては、JICA-NET教材「アフリカ熱帯サバンナ農業開発協力事業~ブラジルの成功事例をアフリカへ~(URL:http://jica-net.jica.go.jp/dspace/handle/10410/705)」にて紹介していますので、貴協会の会員の皆様にも広くご参照頂ければ幸いです。
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