2011年9月26日月曜日

モザンビーク:土地収奪につながるJICAプロジェクト

現在日本政府はブラジル-モザンビーク-日本との三角協力という形で、モザンビークにおける農業開発プロジェクトの実施を計画している。[1]
「モザンビーク国日伯モザンビーク三角協力による熱帯サバンナ農業開発協力プログラム準備調査 最終報告書」(2010.3 JICA)によると、この地域での「農業開発は、農家の大多数を占める小規模農家の支援と付加価値の高い農業の展開を通じた地域農業の振興を目指して、『アグロインダストリーを起点とした地域農業開発の推進』」を提案する」としている。また「村落レベルの開発モデル構築プロジェクト」の終了時期を2014年と予定している。
しかしながらブラジルからの投資拡大を狙うモザンビーク政府、また投資先の拡大を狙うブラジル企業の動きは、このようなプロジェクトを上回るスピードで動き、地域農民の土地が奪われる危険性が高まっている。既にブラジル側の要請とモザンビーク政府の賛同を受けて、「商業規模(commercial scale)の農業生産投資をも可能にすべく」、想定外であった640万hがプロジェクトの対象に加えられている。日本からの円借款や技術協力を利用しつつ、ブラジルを中心とした投資が促進され、農民が土地が奪われていく危険がある。
8月14日の"Folha de S. Paulo"紙の記事は、モザンビークのパチェコ農業大臣の話しとして、「ブラジルのセラードにおける開発を再現したい」、「北部4州において、6百万ヘクタールの土地を、ヘクタール当たり9ユーロで50年にわたるコンセッションで提供できる」と伝えている。更にこの記事では、ブラジルの生産者や投資家側がモザンビークへの進出に前向きであるこという。グロッソ・綿花生産者協会のアウグスティン氏は「モザンビークは、アフリカの中心にあるマット・グロッソであり、ただで土地が手に入り、環境面での条件も多くはなく、更に中国への船賃も安くすむ」と歓迎の意向を示しているという。今日、マット・グロッソでは、伐採・開墾への許可を得ることはほとんど不可能だという。[2]
その後、農業大臣は土地のコンセッションについて記事は歪曲されていると打ち消しに躍起になっているようであるが、土地のコンセッションが農業大臣の権限の元にはないという点についての説明に留まり、将来的なコンセッションの可能性を何ら否定するものとはなっていない。[3]
そもそも、三角協力の一環として開催された「モザンビークにおけるアグリビジネスへの投資機会」というセミナーにおいて、モザンビークの農業大臣が、マット・グロッソの生産者に対して積極的に投資を求め、無償で土地を提供すると話していたようである。[4]
  更に在ブラジルモザンビーク大使館のWEBサイトには、この11月にブラジルからアフリカ諸国への投資ミッションが派遣され、アンゴラ、南アフリカ、モザンビークを訪問することが記載されている。このミッションの主要分野の一つには、農業関連企業の国際化も含まれている。[5]
またAgência de Notícias Brasil-Árabe (ANBA) の記事によると、パラグアイなど南米周辺国に向けて投資を進めてきたブラジルの農業生産者は、南米での土地入手が難しくなり、現在アフリカに目を向けているとのことである。既にAçúcar Guarani社はモザンビークに進出し、エタノール向けサトウキビを生産し、スーダンに進出しているGrupo Pinessoもモザンビークへの進出を検討しているという。[6]
このようなブラジルからアフリカへの移民、投資の動きは数年前から非常に活発なようであり、「ブラジルはアフリカでのプレゼンスを増し、土地を購入している-このようなブラジルのアグリビジネス関連企業のアンゴラやモザンビーク、モ-リタニア、スーダンなどへの移動はこれまで見たことがないものである」という記事も見られる。[7]
  このような記事からわかることは、既にブラジルからアフリカに向けての農業投資の動きは活発であること、そうした中で、日本政府はブラジルからモザンビークへの農業投資促進に向けて協力しているのである。また円借款での道路建設も既に調印済みである。

JICAの報告書、「モザンビーク国日伯モザンビーク三角協力による熱帯サバンナ農業開発協力プログラム準備調査 最終報告書」(2010.3 JICA)を改めて見直すと600万ヘクタールの土地が狙われている理由が明らかになる。
報告書の8.1の結論部分に次のように記載されている。<ブラジル側(Embrapa)は、本プログラムの対象地域を・・・「中小規模農家増収支援」に加え「商業規模(commercial scale)の農業生産投資をも可能にすべく、上記2)の対象地域(640万ha)を含めることが重要であると考えている.この新たな提案は、その後モザンビーク国農業省からも支持された。」
プロジェクトの中には、「ナカラ回廊周辺地域総合農業開発計画」を策定するというのも含まれているが、その計画策定前に、「セラードに類似し、機械化農業に適した地域」として640万ヘクタールが組み込まれたのである。こうしてこのプロジェクトは、民間投資によるモザンビークにおける大規模な機械化農業振興のためのプロジェクトとなった。このプロジェクト主催のシンポジウムで農業大臣が600万ヘクタールに言及したのは理由があるのだ。
日本側がどのように考えようと、ブラジルとモザンビークでは大規模な機械化農業による市場向け生産を目指しているのである。そしてこのプロジェクトの計画の枠内では、この動きに対して歯止めをかける仕組みはなく、「村落開発のモデル」を作っているうちに、村落が消え去る危険性すらある。

開発と権利のための行動センター
青西靖夫
[1]モザンビークにおけるJICAプロジェクト関連情報はこのサイト
http://landgrab-japan.blogspot.com/2011/09/blog-post.html
報告書へのリンクもこのサイトに入れてある。
[2] Moçambique oferece área de três Sergipes à soja brasileira(2011.8.14)
http://www1.folha.uol.com.br/mercado/959518-mocambique-oferece-area-de-tres-sergipes-a-soja-brasileira.shtml
José Pacheco diz que a concessão de 6 milhões de hectares a brasileiros é uma má interpretação(2011.9.9)
http://www.canalmoz.co.mz/hoje/20264-jose-pacheco-diz-que-a-concessao-de-6-milhoes-de-hectares-a-brasileiros-e-uma-ma-interpretacao.html
[3] Pacheco diz que não foi ao Brasil negociar terras
http://opais.sapo.mz/index.php/politica/63-politica/16451-pacheco-diz-que-nao-foi-ao-brasil-negociar-terras.html
及び[2]の2つめの記事
[4]Ministro José Pacheco convida produtores brasileiros a investir na produção de algodão em Moçambique (在ブラジルモザンビーク大使館のWEBサイトに転載されている記事)
http://www.mozambique.org.br/index.php?option=com_content&task=view&id=564&Itemid=9
[5]Missão Empresarial do Brasil para Angola, Moçambique e África do Sul
http://www.mozambique.org.br/index.php?option=com_content&task=view&id=586&Itemid=9
[6]Lavoura estrangeira(2011.9.15)
http://www.anba.com.br/noticia_especiais.kmf?cod=12406689
[7] Brasil amplía presencia en Africa y compra terrenos para cultivos(20106/29)
http://diario.latercera.com/2010/06/29/01/contenido/8_31094_9.shtml
Brasil invade África con sus productos(2010.6.23)
http://www.abeceb.com.ar/noticia/135175/brasil-invade-africa-con-sus-productos.html

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