2012年11月17日土曜日

イサベラ州のケースについて-回答書を読んでのコメント

 この回答に関し、開発と権利のための行動センターの青西から、土地問題だけに関してのコメントを記載します。

質問1)サトウキビ栽培地の確保をめぐる問題について

(1) 当該農地の実際の耕作者の合意を得ぬまま、第三者が土地所有権の不当な取得・主張4を基に、ECOFUEL 社とサトウキビ栽培を目的とした契約を締結し、耕作者が同地での生計手段を喪失した/脅かされたケース5に関する事実確認の結果、および、その結果に基づく対応。(他続く)

 

 この質問に関して伊藤忠商事では、契約当事者であるECOFUEL社を介さずに第三者弁護士を通じて状況の確認を行ったとのことである。

 ここで4つのケースの確認作業が行われているが、うち3件で土地に関する係争が確認されている。2件において「法的所有者」がECOFUEL社と契約を行ったものの、耕作者は異なっており、もう一件では法的所有権者が確定できずにいる。

確認すべきこととして次の3点があげられる

1) 「法的所有権者」と耕作者が異なるケースが明らかに存在しており、こうしたケースが多々ある可能性が高いということ。この場合に一概に「法的所有権者」が正当な所有権を有するとは言えず、「法的所有権者」の土地証書が偽造されているケースあるいはその他の理由で正当性を有さないース、農地改革プロセスでの手続き中のケース、耕作者がその土地の占有権を有するものの法的手続きを行っていないケ-ス、あるいは耕作者の有する慣習法的な占有権が法的には認められていないケースなどが想定されうること。

2) 耕作者の権利は、その生存権の保証、伝統的生業形態を継続する権利という観点からも積極的に保証されるべきこと。

3) 今回の確認作業は弁護士に依頼しているが、高額な経費発生の可能性あり、耕作権が脅かされている小農民には現実的にはアクセスできないシステムであること。こうした問題に対して誰が経費を負担すべきなのかが明確となっていない。

以上の点を確認した上で、土地所有権に係わる書類等を有するものとの契約作業自体が、地域内の社会的紛争を引き起こすこととなることを改めて訴えたい。慣習的な土地利用が行われてきたところで、適切な仲介・紛争処理制度抜きに、近代法的な土地取引が進められると、それは土地紛争に直結する危険性が高いのである。

これに関連する質問4の(1)「 地域社会の農民・先住民族・労働者の苦情を適切に受け付けることができ、迅速に解決を図るための対応(苦情処理メカニズムの確立等の対応の検討・実施状況)」には明確な回答を頂いていない。

「種々の苦情に対しましては、その都度誠心誠意説明をさせて頂き、お陰様で地元の皆様にはご理解を頂き、本事業推進にご支援を得つつあると確信しております。」という回答であり、これではいつまでたっても現地の支援団体、日本のNGOなどが苦情を拾い上げ、圧力をかけることが必要となってしまう。

 

 ここであらためて日本政府が推進する「責任ある農業投資原則」を振り返ってみたい。

 この原則では土地について次のように定めている。

① 土地及び資源に関する権利: 既存の土地及び天然資源に関する権利は認識・尊重されるべき。

 問題となるのはやはりこの「既存の」の定義であろう。フィリピンの事例で見るように「法的所有権者」と耕作者が異なり、「法的所有権者」が土地所有証書などを偽造しているケースも存在する。「法的所有権者」を守ることが「土地及び資源に関する権利」を守ることになるとは言えないのである。

 土地に生計を依拠する耕作者の権利が優先的に尊重されるべきことが明記される必要がある。

 そして、「正当な土地及び天然資源に関する権利を認識・尊重」するためには、精緻な調査とそれに基づいて計画され、誠実に運営される仕組み・制度が必要とされる。これは土地を求めて「ラッシュ」しているような企業には絶対にできない作業である。イサベラ州のプロジェクトを見ても、土地に関する権利を認識・尊重するという作業がいかに複雑なものかわかるであろう。

開発と権利のための行動センター

青西靖夫

2012年11月16日金曜日

伊藤忠商事からの回答-フィリピンイサバル州の事業について

 

フィリピン・イサベラ州バイオエタノール製造・発電供給事業に関する公開質問状への回答から

 今回の質問状に関して、伊藤忠商事株式会社には誠意ある対応をして頂き、11月16日に伊藤忠商事株式会社とFoE他公開質問状の提出団体との会合を持つとともに、質問状に関して文書にて回答を頂きました。

 文書全文はpdfにて掲載します。こちら>>>

2012年11月13日火曜日

フィリピン:転作に反発 日系企業のバイオエタノール事業で、一部農民がサトウキビへの転作に反発(転載)

 

まにら新聞(11月5日付け)の記事を、許可を得た上で転載します。

まにら新聞11月5日
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転作に反発
日系企業のバイオエタノール事業で、一部農民がサトウキビへの転作に反発
 http://www.manila-shimbun.com/photo204756.html
転作の進んだサトウキビ畑(手前)と水田(奥)=10月16日、ルソン地方イサベラ州サンマリアノ町で写す

  ルソン地方イサベラ州で、伊藤忠商事と日揮が出資するサトウキビを原料とする国内最大のバイオエタノール事業。地元農民の知らないうちに、コメやトウモロコシ畑から、サトウキビ畑に転作されるケースがあり、一部農民から反発が起きている。

 こうした事情について、エタノール工場にサトウキビを供給する地元企業「エコフューエル・ランド・ディベロップメント」の担当者は「問題は把握している。これまでに、契約後に問題が発覚した農地約200ヘクタールを放棄した」と述べた。今後も、問題の所在がはっきりした農地は放棄する意向だ。一方で「我々は、土地の所有を示す文書に基づいて契約した。農民が土地の所有を示す文書を持ってこないので、解決が進まない。我々も被害者だ」とも主張した。

 事業を推進する合弁企業「グリーン・フューチャー・イノベーションズ」の徳田慎一チェアマンは「イサベラ州の土地2万5千ヘクタールで、タバコの栽培をしているフィリピン人の事業パートナーから、ここなら大丈夫、と説明を受けた。土地問題があるとは知らなかった」と述べた。

 イノベーションズ社が、同州サンマリアノ町の工場で、年間5万4千キロリットルのバイオエタノールを生産。エコフューエル社が、工場から半径約30キロの地域で、1万1千ヘクタールの土地を農家から借り上げ、サトウキビを栽培して、工場に供給する計画だった。

 イサベラ州の農家は、自作農として、主にコメとトウモロコシを栽培してきた。しかし、地元有力者が、農地の所有を示す文書を用意し、エコフューエル社と賃貸契約を結んでしまった。多くの農家は、農地改革法に基づき、農地を分配されていたが、農地の所有を示す文書を取得していなかった。

 工場から約30キロ離れた同州デルフィンアルバノ町で、トウモロコシを栽培してきた男性、サムラ・ラミルさん(43)は「知らない間にサトウキビを植えられた」と憤る。自身の農地13ヘクタールのうち、3ヘクタールがサトウキビ畑に変わったという。損失は1回の収穫当たり、豊作なら12万ペソ、凶作でも3万ペソになる。

 サトウキビ畑への転換で農地1・5ヘクタールを失ったという農家の女性、メルリーナ・ヘルナンデスさん(43)によると、同町の土地問題は、エタノール事業が始まる前からあった。コメを作付けしていたヘルナンデスさんの農地は、2007年ごろ、中国企業と地元有力者が賃貸契約し、トウモロコシ畑に転換されてしまったという。ヘルナンデスさんは「昔のようにコメを植えたい。元の農地に戻してほしい」と訴えた。

 エコフューエル社によると、農家から借り上げ予定の1万1千ヘクタールのうち、10月末までに8千ヘクタールを確保した。契約農家は約3千人という。

(以上)

2012年11月7日水曜日

11/15 モザンビークでのJICA熱帯サバンナ農業開発プログラム

□■□■転送歓迎━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
明治学院大学国際平和研究所(PRIME) 「平和学を考える」
AJF・JVC・HFW・明治学院大学国際平和研究所(PRIME)共催
連続公開セミナー「食べものの危機を考える」2012年度 第5回

モザンビークでのJICA熱帯サバンナ農業開発プログラム
市民社会との勉強会

講師:独立行政法人国際協力機構(JICA)
      アフリカ部アフリカ第三課 坂口幸太さん
コメンテイター:
   舩田クラーセンさやかさん(東京外国語大学大学院 教員)
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 モザンビーク北部のナカラ回廊地域では、2011年4月より、地域の
小規模農家と農業開発に参入する投資家が共存するモデルを目指す
「日本・ブラジル・モザンビーク三角協力による熱帯サバンナ農業開発
プログラム(ProSAVANA-JBM)」が、独立行政法人国際協力機構
(JICA)により実施されています。
 JICAによると、ProSAVANA-JBMは、広大な熱帯サバンナ地帯を
有していたブラジルで、1970年代から日本との協力で約20年にわたっ
て農業開発協力事業に取り組んだ知見や農業技術を活用し、世界の
食料問題の解決に貢献することを目的としています。
 今回のセミナーでは、本事業を担当する坂口幸太さんをお招きし、
プログラムの詳細についてお話しいただきます。その上で、現地で
長年にわたって活動や調査研究を行ってきた舩田クラーセンさやか
さん(東京外国語大学大学院 教員)にコメンテイターをお願いして
います。
 質疑応答の時間には、参加者と活発な議論を行いますので、皆さま
ふるってご参加ください。

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【講師プロフィール】
●独立行政法人国際協力機構(JICA)アフリカ部アフリカ第三課
 坂口幸太さん

2003年東京外国語大学ポルトガル語学部卒業。同年JICA入団。
中南米部南米課、国際協力総合研修所、ブラジル事務所を経て現在
アフリカ部アフリカ三課(南部アフリカ所掌)でモザンビーク国担当及び
JBPP(日本ブラジルパートナーシッププログラム)対アフリカ協力担当。

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┃開催概要
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【日時】2012年11月15日(木)18:30~20:30(開場18:15)
【会場】明治学院大学白金校舎 本館1252教室
    アクセス http://www.meijigakuin.ac.jp/access/shirokane/
    (JR品川駅・目黒駅よりバスで約10分、東京メトロ白金高輪駅、
    白金台駅、高輪台駅より各徒歩約7分)
【参加費】無料
【申込み】明治学院大学国際平和研究所 担当:田中  
          E-MAIL:prime@prime.meijigakuin.ac.jp
          TEL:03-5421-5652

【11/20 波多江秀枝さんのフィリピン現地報告会(京都)】

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【11/20 波多江秀枝さんのフィリピン現地報告会(京都)】
日本が関わる環境破壊
鉱山、ダム、バイオ燃料の開発現場で
―この半年の動き―
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イベント掲載サイト
http://d.hatena.ne.jp/odanetkansai/20121106/1352193534

●日時:2012年11月20日(火)午後6時30分~
●場所:キャンパスプラザ京都 第4演習室
       (ビックカメラ前、JR京都駅ビル駐車場西側)
●報告者:波多江秀枝さん  (国際環境NGO FoEジャパン 委託研究員)
 フィリピンで日本の資本や援助によって進められている様々な開発事業。その開発によって地元の住民が抱えてきた問題は、なかなか解決に至らないまま、新たな問題が浮上しているケースもあります。
 フィリピンを拠点に開発の現場での調査を続けておられる波多江秀枝さんをお招きし、4つの事業について、この半年の現場の動きと日本側の対応を、写真や映像を交えながら、ダイジェストで報告していただきます。
 みなさまの参加をお待ちしています。
●参加費:500円
●共催:関西フィリピン人権情報アクションセンター
    フィリピンの子どもたちの未来のための運動(CFFC)

  ●問合せ先:フィリピンの子どもたちの未来のための運動(CFFC)
 京都府宇治市広野町西裏99-14 パール第1ビル3階
 Tel 0774-48-1100 Fax 0774-44-3102 (藤原)
 http://www.geocities.jp/fujiwara_toshihide/index.html
 もしくは メール fujiwara_toshihide@yahoo.co.jp
<ニッケル鉱山・製錬>
 住友金属鉱山等が出資。国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)が支援。住民・NGOが指摘する事業地周辺の水質汚染を事業者や政府機関は認めるか?
( http://www.foejapan.org/aid/jbic02/rt/activity.html )
<サンロケ多目的ダム>
 丸紅、関西電力が出資。JBICが融資。事業開始から14年経つ今も補償が未完了? ダム上流の鉱山事故でダム貯水池への影響は?
( http://www.foejapan.org/aid/jbic02/sr/activity.html )
<イサベラ州バイオエタノール>
 伊藤忠商事・日揮が出資。農地収奪等の問題が未解決のまま工場の操業開始?違法操業による大気・水質汚染の実態は?
( http://www.foejapan.org/aid/land/isabela/activity.html )
<ボホール灌漑ダム>
 国際協力機構(JICA)の援助で建設された灌漑ダム。ダム完工から15年経った今年、やっと敷設されたコンクリート水路に灌漑用水は届くのか?
( http://www.foejapan.org/aid/jbic02/bohol/activity.html )