日本政府、国際協力機構(JICA)などが関与してモザンビークにおいて進めつつある「プロサバンナ事業」に対してモザンビークの農民組織が声明文を発表。
このプロジェクトを農民のニーズを組み入れないトップダウンの政策の結果であり、大規模農業の展開が、農民の土地を奪い取る危険性があること、社会動乱を引き起こしかねないことなどを指摘している。
以下、声明文の日本語訳である。
União Nacional de Camponeses (UNAC)
プロサバンナ事業に関する声明
(日本語)
我々、ナンプーラ州農民支部、ザンベジア州農民支部、ニアサ州農民連盟、カーボデルガード州農民連盟の女性農民と男性農民、全国農民連盟(UNAC)の全メンバーは、2012年10月11日にナンプーラ市に集まり、プロサバンナ・プロジェクトに関する分析と議論を行った。
プロサバンナは、モザンビーク共和国、ブラジル連邦共和国、日本の三角事業であり、14百万ヘクタールにも及ぶニアサ、ナンプーラ、ザンベジア州の14ディストリクト(郡)を焦点とするナカラ回廊開発のための巨大農業開発事業である。
当該プロジェクトは、ブラジルのセラードにおいて日伯両政府によって実施された農業開発事業に触発されて行われたものである。セラード開発は、環境破壊や同地に暮らしていた先住民コミュニティの壊滅をもたらし、今日、セラードでは、大規模な産業としての農業やモノカルチャー栽培(主に大豆)が進んでいる。ナカラ回廊地域は、ブラジルのセラードと類似するという気候上のサバンナ性や農業生態学的な特徴、国際市場への物流の容易さにより(当該プロジェクト地として)選ばれた。
プロサバンナ・プロジェクトについて耳にするようになって以来、本事業関係者(モザンビーク、ブラジル、日本政府)による情報の不足、透明性の減少は顕著となっており、以上に言及した理解に至った。
我々男女の農民は、このような手法、プロセスのすべてにおける市民社会組織、特に農民組織らの排除や低い透明性に特徴づけられるモザンビークでのプロサバンナの立案と実施を非難する。プロサバンナに関する深い分析に基づき、我々農民は以下の結論に至った。
- プロサバンナは、ナカラ回廊の農民ら自身の基本的なニーズ、展望、そして懸念に関する配慮を欠くトップ・ダウン式の政策の結果である。
- 我々は、モノカルチャー(大豆、サトウキビ、綿など)の大規模農業プロジェクトのために主張される、農民の土地の収用やコミュニティの移転のいかなるイニシアチブも強く非難する。
- 我々は、アグリビジネスを目的とし、モザンビーク人農民らを被雇用者や農業労働者に変えるブラジル人農家の入植を非難する。
- 地域の実態として、土地は農民によって休耕技術の資源として使われており、土地の拡大は不可能となっているにもかかわらず、ナカラ回廊周辺の何百万という土地を要求するプロサバンナという事業に対して、我々は大きな懸念を認識する。
プロサバンナの立案と実施プロセスにおいて顕著になったやり方を考慮すると、我々農民は、次の影響が予想される点について警鐘を鳴らす。
- 土地の収用と移転のプロセスの結果、モザンビークで土地なしコミュニティが現れること。
- ナカラ回廊周辺およびそれ以外の地域における頻繁な社会的動乱の発生。
- 農村コミュニティの貧困化と自給自足の為の代替手段の減少。利権争いと汚職の増加。
- 化学肥料や農薬の超過的使用の結果としての土壌の疲弊と水資源の汚染。
- アグリビジネス事業のための森林伐採の結果としての生態系の不均衡。
モザンビークあるいはナカラ回廊地域に投資するのであれば、地元農民の農業や経済の発展のために適切な投資が行われるべきであり、我々はそれを要求する。我々、UNAC並びにVia Campesinaのメンバーは、それこそが、唯一尊厳があり意味のある雇用を生み出すことができる農業であり、農村人口流出を防ぎ、モザンビークの全国民のために質量ともに十分な食料を生産し、食料主権の達成の道に貢献すると認識している。
我々は、モザンビークにおける農業分野の開発のオルタナティブとして、食料主権に基づくアグロエコロジー的生産モデルと農民農業への強くかつ忠誠的なコミットメントを継続する。このモデルは、持続可能性のすべての側面に結びついており、実践において自然に寄り添ったものである。
農民の農業は、地域経済の主柱であり、農村における雇用を維持し、増加させるのに役立ち、都市や村落の生存を可能にする。協働が、自身の文化やアイデンティティを強めることを可能とする。このオルタナティブなモデルにおいて、開発政策は、社会的にも環境的にも持続可能であり、民衆の現実のニーズや課題に基づいて組み立てられなければならない。
農民は生命や自然、地球の守護者である。小農運動としてのUNACは、農民の基礎(土壌の尊敬と保全、適切で適正な技術の使用、参加型で相互関係に基づく農村開発)に基づいた生産モデルを提案する。
現在、国連は、FAOを通じて、世界の、特に開発途上国の八人に一人が飢えに苦しんでいると報告している。モザンビークもこれに含まれる。したがって、モザンビーク政府の優先順位は、国内消費のための小農生産による食料生産であるべきであり、社会の多様なセグメントを包摂し、内発的な潜在性を発展させることを試みるべきである。
UNAC 25年に及ぶ食料主権のための農民の闘い!
よりよい正義、豊かさ、連帯のある社会の形成のための農民(男性、女性、若者)を主人公とするための闘い
2012年10月11日ナンプーラ
下記原文(ポルトガル語)より和訳http://www.unac.org.mz/index.php/7-blog/39-pronunciamento-da-unac-sobre-o-programa-prosavana