2011年6月24日金曜日

オンライン署名 「土地収奪と軍事化のストップを!」 フィリピン・イサベラ州

フィリピンのNGO 5団体が、日本企業(伊藤忠および日揮)の進めるバイオエタノール事業に関し、フィリピン政府関係者に問題解決や事業の中止を求める要
請書へのオンライン署名を呼びかけています。

要請書は日本企業へもCcで届きます。ぜひ、日本の皆さまのご協力をお願いします。

→オンライン署名フォームはこちら(英文)
http://foodsov.org/html/petition13.php

→上記ページの和訳はこちら
(署名フォーム) http://FoEJapan.org/aid/land/isabela/20110623.html
(要請書) http://FoEJapan.org/aid/land/isabela/20110623_2.html

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(転送歓迎)

【呼びかけ団体】
食料主権に関する人民連合(PCFS)
アジア農民連合(APC)
フィリピン農民連合(KMP)
イボン財団・国際部
イサベラ州農民組織(DAGAMI)

【現地NGOの呼びかけ(和訳)】
オンライン署名にご協力ください!

「土地収奪と軍事化のストップを!」
フィリピン・イサベラ州の農民と先住民族への支援の呼びかけ

食料・健康に関する権利および農民・女性・先住民族の権利を擁護するすべての方々

環境、気候、社会および経済的正義を信じるすべての方々
農村地域社会での軍事化の終焉を求めるすべての方々 へ

フィリピンのイサベラ州サン・マリアノ町の農民や先住民族が、国際的な注意を喚起しています。同地で進められているバイオ燃料事業、つまり、11,000ヘクタールにおよぶサトウキビ単一栽培用の大農園と、(バイオエタノール)精製工場等のために、土地収奪という差し迫った状況、軍事化、そして、小規模な農地が破壊されようとしている現状があるためです。

彼らの取り組みを支援するため、オンライン署名にご協力ください。フィリピン政府関係者や(日本企業を含む)バイオ燃料事業者の経営者らに直接要請書を送ることができます。

→オンライン署名フォームはこちら(英文)
http://foodsov.org/html/petition13.php

→上記ページの和訳はこちら
(署名フォーム) http://FoEJapan.org/aid/land/isabela/20110623.html
(要請書) http://FoEJapan.org/aid/land/isabela/20110623_2.html

より詳しい情報は、最近、イサベラ州を訪れた国際NGO現地調査団の声明をご覧ください。

→声明はこちら(和訳)
http://www.foejapan.org/aid/land/isabela/pdf/20110606a.pdf
(英文)
http://www.foodsov.org
http://www.asianpeasant.org

イサベラ州の影響を受ける農民や先住民族に協力し、アクションを継続することにご関心がおありですか?

イサベラ州の住民は土地収奪、立ち退き、搾取、そして、人権侵害という差し迫った状況に直面し、正義を求める活動を継続しており、皆さんの貴重な支援を心待ちにしています。皆さんの支援は同地域のコミュニティーが以下を獲得するのに寄与します。

・人権、および、正当な土地権利要求の擁護
・立ち退きの中止
・農民や先住民族の生計改善
・真の農地改革の促進や先住民族の先祖代々の領域の認知
・地元の主要な食料生産や地元固有種の栽培を促進する政府補助金
・持続可能な農業慣行の促進
・農業労働者の賃金アップや労働環境の改善
・利用可能、かつ、目的に適った社会プログラムの喚起
・次世代のための真の環境保全の促進
・組織強化と能力向上の取り組み

最新情報、類似したアクションの呼びかけ、また、皆さんに何ができるか更なる情報を受け取りたい方は、以下にご連絡ください。

PCFS:  secretariat@foodsov.org
APC:  apcsecretariat@asianpeasant.org or apc_secretariat@yahoo.com
KMP:  kmp@kilusangmagbubukid.org
IBON Int'l:  troberts@ibon.org

(以上、現地NGOの呼びかけ)
※フィリピン・バイオエタノール事業のより詳細な情報についてはこちら
  http://FoEJapan.org/aid/land/isabela/index.html


【要請書と署名フォームの和訳】
(署名フォーム) http://FoEJapan.org/aid/land/isabela/20110623.html
(要請書) http://FoEJapan.org/aid/land/isabela/20110623_2.html


要請書の宛先:(以下のフィリピン政府関係者)

大統領 Benigno S. Aquino III氏
農業省 長官Proceso J. Alcala氏
農地改革省 長官Virgilio R. Delos Reyes氏
環境天然資源省 長官 Ramon Jesus P. Paje氏
下院 農業・食料委員会 委員長Mark Mendoza氏
下院 農地改革委員会 委員長Pryde Teves氏
下院 天然資源委員会 委員長Francisco Matugas氏
下院 人権委員会 委員長Rene Relampagos氏
上院 農業・食料委員会 委員長 Kiko Pangilinan氏
上院 農地改革委員会 委員長 Gregorio B. Honasan氏
上院 環境天然資源委員会 委員長 Juan Miguel F. Zubiri氏
上院 公正・人権委員会 委員長 Francis Escudero氏
国家先住民族委員会 委員長Roque Agton氏
イサベラ州知事 Faustino Dy III氏
イサベラ州サン・マリアノ町長 Edgar Go氏
ランド・バンク 社長 兼 CEO Gilda E. Pico氏

Cc: (以下の関係企業)
Green Future Innovations社 社長 R. P. Bantug氏
Green Future Innovations社 工場総責任者 L. Villa-Abrille氏
Ecofuel Land Development社 副社長(オペレーション担当) J. E. Tampo氏
伊藤忠商事株式会社 代表取締役社長 岡藤 正広 氏
日揮株式会社 代表取締役会長 兼CEO 竹内 敬介 氏


日本とフィリピンの企業連合体であるグリーン・フューチャー・イノベーション社(GFII)がイサベラ州サン・マリアノ町で進めるバイオエタノール事業が、同地域の農民・先住民族の土地権や生計手段、食料安全保障、食料自給、そして、環境にもたらす影響に関し、食料主権に関する人民連合(PCFS)、イボン財団・国際部、アジア農民連合(APC)、フィリピン農民連合(KMP)、および、イサベラ州農民組織(DAGAMI)が最近、国際NGO現地調査団を派遣しましたが、同NGO調査団の指摘している懸念事項に緊急に対応するよう、あなたがたの注意を喚起します。

エタノール精製工場や発電所、また、第一級農地や再生林地域に広がる11,000ヘクタールの(サトウキビ単一栽培の)大農園を伴う同バイオ燃料事業は、2012年3月までに操業を開始する予定です。これらの地域では、サン・マリアノ町や近隣の町において数千もの農民が、当地伝来種の米、トウモロコシ、また、野菜や様々な果物を収穫しており、主要な生計手段・収入源となっています。
 長期にわたる土地権や従来からの占有者/耕作者を政府が認めないため、多くの家族は、土地所有の証明書を持っていません。その代わり、政府当局は、土地に対する不当、かつ、支払い不可能な料金を支払うことを求めたり、その一連の流れで、(土地)差押えの通知を送ってきたりしています。このバイオエタノール事業が同地域に入ってきたことにより、これらのコミュニティーは、土地収奪や土地投機、また、土地権利取得における詐欺行為に対し、ますます脆弱な立場に置かれています。もし同事業がこのまま進められれば、最終的には、これらの地元住民の多くが、立ち退かざるを得ないのが現実です。

数千ヘクタールのサトウキビ単一栽培を伴う、バイオ燃料事業が進められれば、コミュニティーの食料生産能力は著しく減退し、同地域の文化的独自性でもある種の多様性も著しく減少します。また、パラナン森林地帯と同様にシエラ・マドレ自然公園を含む、森林地域や自然保護地域への更なる侵入を誘発します。


これまで多様な作物の栽培に利用されてきた土地や森林地域が転換されれば、著しい炭素排出や生物多様性の喪失につながり、同地域は土砂崩れや洪水に対し、より一層脆弱になっていくでしょう。

土地から追い出され、農業労働者になった農民は、法定最低賃金にまったく満たない賃金、安全装備もないままに有毒な肥料や殺虫剤を散布、職務上の深刻な負傷、医療保険や福利厚生への未加入等々を含む、労働権の深刻な侵害を体験しています。

同バイオ燃料事業への反対の声が強まっているサン・マリアノ町の居住地域で、軍人や軍隊のプレゼンスが高まっているのは、人権と国際人道法の尊重に関する包括協定(CAHRIHL)への明確な違反です。このような状況は、特に、バイオエタノール事業に反対している住民への人権侵害が報告されているケースに
ついては、早急に対処されなくてはなりません。

国際NGO現地調査団の調査結果に基づき、すべての関係政府機関に対し、以下を含む、早急な対応を求めます。

1.農民、農業労働者、また、先住民族の要求に耳を傾け、彼らの人権、また特に彼らを不当な土地権取得や土地収奪の脅威から解放した上で、土地耕作権や所有権を認知・尊重すること。こうした権利が認められるよう、サン・マリアノ町の影響住民は、真の農地改革の実施を求めています。

2.広範囲に及んでいる違法な土地権取得や土地収奪、また、同地域の生態保護地域への侵入について、早急に調査すること。また、そうした陰謀等に関係した者の起訴を促進するため、効果的なメカニズムを構築することで、正義を求めている影響を受けた農民・先住民族を支援すること。

3.バイオエタノール事業によって脅かされている先祖伝来の領域や伝統的な知識・統治体系といった先住民族の権利を認めること。また、国際および国内法に則り、FPIC(自由意思による事前の、情報を十分に提供された上での合意)という権利を認めること。

4.クリーン開発メカニズム(CDM)事業として承認しようとしていることも含め、イサベラ州におけるGFIIおよびEcofuelのバイオ燃料事業に対する国としての支援・支持をすべて撤回すること。また、食料の耕作のために小規模農家が利用してきた第一級農地を非食料の生産用に転換するようなイニシアチブは、他のどんなものであっても支援しないこと。

5.人権と国際人道法の尊重に関する包括協定(CAHRIHL)の規定に従い、サン・マリアノ町のすべてのコミュニティーから軍の駐屯地を撤去すること。バイオ燃料事業に反対しているコミュニティーのメンバーやその協力者らに対する嫌がらせなど、人権侵害を犯したすべての者が起訴されなくてはなりません。

すべての政府関係者が、これらの懸念を真摯に受け止め、自ら積極的かつ早急な対応を取っていくこと、そして、これらの問題事項があなたがたの保証とともに収束していくことを信じています。この問題に対するあなたがたの行動をしっかり見守っていきます。


SIGN THE PETITION:  (署名フォーム)
(*) Required Fields.  ( * マークのある欄は記入必須)
First Name*:  (名:アルファベットでご記入ください。)
Last Name*:  (姓:アルファベットでご記入ください。)
Country*:  select a country Japan (国名:選択肢の中から「Japan」をご
選択くだ
さい。)
E-mail*:  (メールアドレスをご記入ください。)
Organisation:  (所属団体:アルファベットでご記入ください。)

Sign Petition   (要請書に署名:クリックすると要請書が送付されます。)
 
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→オンライン署名フォームはこちら(英文)
http://foodsov.org/html/petition13.php

OXFAM 食料問題に関する報告書公表

報告書へのリンクはこちら
http://www.oxfam.org/en/grow/reports/growing-better-future

青西 以下転載

http://www.afpbb.com/article/economy/2803334/7285943
【6月1日 AFP】国際NGOオックスファム(Oxfam)は5月31日公表したレポート
「Growing a Better Future」で、世界の食糧供給システムの徹底的な見直し
が必要だと訴えた。オックスファムによると、人口増加や気候変動の影響によ
る収穫高の減少で、飢餓人口は今後数十年で数百万人増える見通しだという。

 オックスファムは、「食糧供給システムの崩壊」により、一部の主食となる
食糧の価格が2030年までに2倍超に上昇し、収入の80%程度を食費に充てる貧
困層が打撃を受けるとしている。現時点で飢餓人口は約9億人だが、「パーフ
ェクトストーム」(最悪の事態)が起きた場合には、さらに増える恐れがある
という。

 世界の人口は2050年までに現在の69億人から3分の1増加し、91億人に達する
とされている。成長著しい国々の経済発展を背景に、食糧需要は70%も増える
見通しだ。

 同時に、干ばつや洪水などの被害を受けて作物収穫量が減少するなど、気候
変動による影響が顕在化し始めると予想されている。オックスファムによると、
トウモロコシなど主食の価格はすでに過去最高の水準に達したが、今後20年で
価格はさらに2倍超、上昇する見通しだという。

 オックスファムはこうした事態の対応策として、水などのムダ遣いをなくす
ことや、持続可能な作物栽培の促進を挙げている。

 レポートは、オックスファムが45カ国で実施する食糧改革キャンペーンにあ
わせて作成されたもの。キャンペーンには、ブラジルのルイス・イナシオ・ル
ラ・ダシルバ(Luiz Inacio Lula da Silva)前大統領や南アフリカのノーベ
ル平和賞受賞者、デズモンド・ツツ(Desmond Tutu)氏、米女優スカーレット
・ヨハンソン(Scarlett Johansson)さんなど各界の大物が支援している。
(c)AFP/Richard Ingham
 
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2806472/7346558
 
【6月15日 AFP】国際NGOオックスファム(Oxfam)は14日、世界各地で食料価
格の高騰が人びとの食生活を変えているとする調査結果を発表した。

 オックスファムが4月から5月にかけ17か国の1万6421人を対象に行った調査
では、過去2年間に食生活が変わったとの回答が、回答者の半数を超える53%
に上った。このうち39%が食料価格の高騰を、その理由に挙げている。

 食生活が変化した割合が最も高かったのは76%のケニアで、2番目は南アフ
リカの69%だった。ケニアでは、食生活を変えたと答えた回答者の79%が食料
価格の高騰が原因と答えている。

 食生活の変化は欧米諸国でも見られた。米国では55%が2年前とは異なる食
料を食べていると答え、31%が食料の値上げを理由としている。

 結論として、食料問題では価格の上昇が人びとの最大の懸念事項であること
が分かった。回答者の66%が食料価格の高騰を、主な心配事の1つに挙げてい
る。

 オックスファムの調査から、中米グアテマラでは、もはや貧しい人びとは砂
糖を買うことができず、ケニアでは、ミルク、マーガリン、ジャムなどは全て、
庶民には手が届かないほど価格が上昇している実態が明らかになった。米、豆、
肉類も同じ傾向をたどっているという。

 こうした結果を踏まえ、一次産品市場を規制し、膨大な農地がバイオ燃料生
産に転用される状況を生み出した「誤ったバイオ燃料政策」を改革するよう、
オックスファムは主要20か国・地域(G20)首脳らに訴えた。(c)AFP 

2011年6月16日木曜日

6/17 現地報告!! 「フィ リピンにおけるバイオ燃料開発と土地収奪」 6/17 現地報告!! 「フィリピンにおけるバイオ燃料開発と土地収奪」関西サテライト開催

6/17 現地報告!! 「フィリピンにおけるバイオ燃料開発と土地収奪」について、今回も関西サテライト会場でのUstream上映会を行います。
 Ustreamの放送はどなたでも以下のURLでもご覧になれます。
 http://www.ustream.tv/channel/nogyo-tv

対外農業投資=農地収奪に関する勉強会のご案内
第2回 現地報告「フィリピンにおけるバイオ燃料開発と土地収奪」
関西サテライト開催

(1)内容:
 米、コーン、バナナ、野菜、果樹—— 地元の農民や先住民族が数十年にわたり耕してきた畑が、サトウキビ・プランテーションに転換されてしまうかもしれません。 フィリピンで最大のバイオエタノール製造事業を日本企業が実施するのに伴い、11,000haでのサトウキビ栽培が必要とされるためです。また、企業はこの事業を気候取引(クリーン開発メカニズム:CDM)にも使おうとしています。現地で何が起きているのか。6月上旬に行なった最新の調査報告も含め、現地の状況を報告します。ぜひご参加ください。
※関西会場では、Ustream中継を一緒に見て討議し、質問をtwitterなどで東京側に送りたいと思います。

(2)日時:6月17日(金曜日) 18時30分~20時30分
(3)場所:ほんやら洞 2階
 http://honyarado-kyoto.cool.ne.jp/
 ※参加者はワンオーダーお願いします。
(4)報告者:開発と権利のための行動センター 青西 靖夫
     FoE Japan委託研究員 波多江 秀枝
(5)主催:(仮)対外農業投資・農地収奪を考える会、FoE Japan
   関西連絡先:平賀緑 hiraga[at]midori.info ([at]を@に変更してください)
   ※当日参加もOKですが、事前にメールいただけると助かります。

2011年6月15日水曜日

フィリピンにおけるバイオ燃料プロジェクトが引き起こす社会紛争

   17の報告会で詳細はお話しさせて頂きますが、とりあえずの報告です。
青西

2010年4月、伊藤忠商事および日揮は、フィリピン共和国のルソン島北部イザベラ州でサトウキビを原料とするバイオエタノール(54,000kl/年)の製造・販売事業、およびサトウキビ残渣(バガス)を燃料とする火力発電(最大19MW)による電力販売事業を開始することを公表した。[1]
このプロジェクトはイサベラ州のサン・マリアーノ町を中心に計画されており、来年3月の操業開始を目指してプラントの建設が進められつつある。原材料となるサトウキビはサン・マリアーノ町の「遊休地」での借地契約を中心に、11000haでの生産を目指しているものである。
しかし現地ではこのプロジェクトに対する抗議行動が本格化し、2011年2月には現地の農民組織などが調査団を派遣し、抗議声明を発表するとともに、関係省庁との協議も開始されている。[3]
  更に、2011年5月30日より6月3日にかけて、食料主権に関する人民連合(PCFS)、イボン財団・国際部、アジア農民連合(APC)、フィリピン農民連合(KMP)、また、イサベラ州農民組織(DAGAMI)などは、国際NGO 現地調査団を派遣し、更に現地の状況を調査した。[3]
今回、この調査団に参加する機会を得たので、現地の状況について概要を報告する。
aero SM 
  <遊休地>
現地法人であるグリーン・フューチャー・イノベーション社(GFII)またその子会社でありサトウキビ供給を担うエコ・フュエル社は、このサン・マリアーノ町をプロジェクトサイトに選んだ理由を、「マージナル・ランド」の存在であると述べている。
しかしながら、この「遊休地」とは、山裾の丘陵地帯において、人々が生活し、自給用のトウモロコシやバナナ、あるいはキャッサバなどを生産している土地であった。時に野火や台風などによって一時的に耕作が放棄されているとしても、それは現在の世代、あるいは未来の世代の生計を安定させるための重要な手段である。
<土地紛争>
  プロジェクト予定地では、サトウキビ生産をきっかけに土地問題が各地で勃発している。サトウキビ生産のための借地契約が、耕作者に占有権を認めてきた慣習的土地利用のあり方と調和しないこと。現地のエコ・フュエル社が実施した土地測量調査が、土地の所属を巡る紛争を顕在化させるといった問題が起きている。また今後、サトウキビ生産のための借地契約が広がれば土地所有に関する手続きにアクセスできる人とできない人の間での社会的な格差の拡大も広がっていくものと思われる。

<不明瞭な土地所有権>
プロジェクト対象地は複雑な土地所有権のもとに置かれている。サン・マリアーノ町の面積の約半分は森林と定義された国有地である。このほかにこうした森林地域から分割され、国有の「可処分地」と定義されている土地が存在する。しかしその区分は不明瞭である。
更にサトウキビは「森林」地帯にも侵入し、国有地である「可処分地」においても借地契約が進められている。これまで土地利用者に利用権が与えられてきた、慣習的な土地利用のあり方が大きく揺さぶられているのである。更に借地契約が行われている、あるいは行われようとしている土地の所有権が定かでなく、今後問題が更に深刻化していく可能性がある。
またこの地域で2000年代前半に発生した土地分配及び登記を巡る詐欺事件の被害者を中心に、土地権を喪失するケースが多々起きており、大きな問題となっている。この問題を解決することなく、この地域で借地契約等を広げることは問題を深刻化する危険があるとともに、サトウキビ生産拡大の中で土地集中につながる危険性がある。
<気候変動対策としての貢献?>
このプロジェクトは直接的にはフィリピン政府の「バイオ燃料法」に基づく自動車燃料へのバイオ・エタノール混合政策による新しい市場を狙ったものであるが、伊藤忠はCDMによる炭素クレジット入手も目指している。CDMについては今のところ十分な情報は開示されていないが、このプロジェクトでは耕作地を排除した形でCDMの認可を狙っているようである。
しかしながら、経済産業省の報告書によるとバイオ燃料生産において二酸化炭素削減に実際に貢献しうるレベルは、ブラジルの既存農地におけるサトウキビ生産だけだと言われている。[4]
今回の地域のように、草地や時として林地からの転換、分散し、道路状況の悪い斜面に位置する耕作地からの搬出に関わる燃料消費、転換された農地の代償としての森林地への農業フロンティアの拡大などを考慮すれば、温暖化効果ガスの排出量削減につながることはあり得ないであろう。

終わりに
伊藤忠商事による今回のバイオ燃料プロジェクトは、土地利用と所有を巡る不安定な環境の中で進められている。現地の農民組織は事業の撤退を求めている。
それでも事業を進めるのであれば、地域社会に対する深いコミットメントが求められるであろう。それは森林政策、農地改革、土地登記というフィリピン政府によって長年置き去りにされてきた、非常に困難な課題に取り組む責任が求められるのである。
[1]フィリピンにおけるバイオエタノール製造・発電事業について (2010/4/8)
http://www.itochu.co.jp/ja/news/2010/100408.html
[2]サン・マリアノ町の農民および先住民族 大規模な土地収奪に強く反対
http://www.foejapan.org/aid/land/isabela/pdf/20110223.pdf
[3]イサベラ州サン・マリアノ町における国際NGO現地調査団声明(2011/6/6)
http://www.foejapan.org/aid/land/isabela/pdf/20110606a.pdf
[4]「バイオ燃料導入に係る持続可能性基準等に関する検討会」報告書について
http://www.meti.go.jp/press/20100305002/20100305002.html

2011年6月9日木曜日

6/17 現地報告!! 「フィ リピンにおけるバイオ燃料開発と土地収奪」

☆対外農業投資=農地収奪に関する勉強会 第2回のご案内

現地報告!! 「フィリピンにおけるバイオ燃料開発と土地収奪」

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米、コーン、バナナ、野菜、果樹―― 地元の農民や先住民族が数十年にわたり耕してきた畑が、サトウキビ・プランテーションに転換されてしまうかもしれません。 フィリピンで最大のバイオエタノール製造事業を日本企業が実施するのに伴い、11,000haでのサトウキビ栽培が必要とされるためです。

また、企業はこの事業を気候取引(クリーン開発メカニズム:CDM)にも使おうとしています。

現地で何が起きているのか。6月上旬に行なった最新の調査報告も含め、現地の状況を報告します。ぜひご参加ください。

調査地域の地図

San Mariano

【日 時】2011年6月17日(金) 18:30~20:30
【場 所】JICA地球ひろば セミナールーム401号室
     (〒150-0012 東京都渋谷区広尾4-2-24)
     http://www.jica.go.jp/hiroba/about/map.html
【報告者】開発と権利のための行動センター 青西 靖夫
   FoE Japan委託研究員 波多江 秀枝
【資料代】 500円
【申込み】 下記ウェブサイトの申込みフォームよりお申込みください。
      http://www.foejapan.org/aid/land/isabela/evt_110617.html


【主 催】(仮)対外農業投資・農地収奪を考える会、FoE Japan

【問合せ】◇(仮)対外農業投資・農地収奪を考える会(担当:近藤)
         TEL: 03-6807-6717 E-mail: mkykondo@ybb.ne.jp
  ◇FoE Japan (担当: 波多江)
         TEL: 03-6907-7217 E-mail: hatae@foejapan.org
【関連サイト】http://landgrab-japan.blogspot.com/
       http://www.foejapan.org/aid/land/isabela/index.html

 

なお今回も関西サテライト会場でのUstream上映会を行います。
 Ustreamの放送はどなたでも以下のURLでもご覧になれます。
http://www.ustream.tv/channel/nogyo-tv

 関西サテライト開催の案内は

http://landgrab-japan.blogspot.com/2011/06/617-617.html

2011年6月3日金曜日

本日の勉強会<対外農業投資の動向とその影響> は Ustream放送の予定です

 本日の勉強会<対外農業投資の動向とその影響> は Ustream放送の予定です
 以下のURLで、どなたでもご覧になれます。

 http://www.ustream.tv/channel/nogyo-tv